“税金で買った本”をめぐる悲喜こもごもの人間模様 ヤンキーが図書館で働く漫画が書籍化(1/3 ページ)

図書館勤務経験のある原作者にお話を聞きました。

» 2021年12月13日 20時00分 公開
[Tomoねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 ヤンキー少年が個性的な仲間と図書館で働くお仕事漫画『税金で買った本』(原作:ずいの 作画:系山冏)の単行本化が決定しました。12月20日に発売されます(講談社、726円)。(※初掲載時21日発売としておりましたが正しくは20日です。お詫びして訂正いたします)

“税金で買った本”をめぐるあれやこれやが描かれる漫画(第1話から)

 ヤンキーの石平くんが、子どもの頃図書館から借りて紛失した本を10年越しに弁償したことをきっかけに、図書館に通うようになり、さらにはアルバイトするようになるお話。図書館で働く人、図書館にやってくる人の、本をめぐる人間模様を描いています。

 困った利用者やほろっとくるお話、ためになる知識などエピソードはさまざま。原作者が図書館勤務経験者だけあって、本の弁償や修繕、寄贈など、図書館の仕事の裏側も垣間見られます。

図書の修繕などお仕事の裏側も(第2話から)

 悪質な利用者になめられまいと鍛えまくってムキムキになりすぎ、本への愛から暴走しがちな元貧弱文学青年の白井くん。そんな彼のストッパー役で、一見おとなしそうだけど実は芯が強くしたたかさもある早瀬丸さん。図書館で個性的な面々と働く中で、石平くんが“本を通じて知らないことを知る楽しさ”にはまっていく姿が描かれています。

本への愛情から暴走しがちな白井くんと歯止め役の早瀬丸さん(第1話から)
最初は突っ張っていた石平くん(第2話から)。後に「図書館でお勉強すんのが好きなんだよ!」と言うまでに

 同作はヤンマガWebで連載が始まり、本誌争奪杯で1位を獲得してヤンマガ本誌への移籍が決定(12月13日発売号から。移籍後もヤンマガWeb掲載は継続)。編集部では、原作者のずいのさんにお話を聞きました。

―― 『税金で買った本』はどのような経緯で誕生したのでしょうか

ずいのさん 「連載を意識した漫画を描いてみましょう」とヤングマガジンの担当様にご提案いただいて考えたお話です。継続して描けそうなテーマを話し合った末、働いた経験がありそれなりに詳しいので、図書館の弁償の話はどうかとお話した記憶があります。弁償以外の図書館全般の話も描いてみてはとご提案いただき今のような漫画になりました。

―― ヤンキーと図書館の組み合わせという発想はどこから? 登場人物にモデルはいますか

ずいのさん 最初は、図書館に絶対来なさそうな人が来たら面白いかな!? としか考えてませんでした。その後、ヤンキーと図書館について真剣に考えてみると「貧困」でつながってるな……と気づきその後のお話を展開しました。ヤンキーと呼ばれる人々の背景の1つに貧困があり、公共図書館の役目のひとつが貧困による格差の解消なので。

 登場人物に明確なモデルはいませんが、早瀬丸のような雰囲気の方は図書館に何人かいらしたので参考にしたかもしれません。白井のような筋肉隆々図書館員は見たことがありません。いればいいのに。

―― 図書館の仕事をしていてしんどいと思ったこと、逆にやっていてよかったと思ったことは

ずいのさん しんどいと思ったことが多すぎるので全部漫画にしてお伝えできればと思います。よかったことは自分が今まで興味のなかった分野の本を知る機会に恵まれたことです。

―― 図書館の魅力とは?

ずいのさん どんな人でも無料で自由に情報を得られることです! 当たり前なのですが、貴重なことだと思います。

誰でも無料で情報を得られる――白井くんの「図書館って弱い人間のためにあると思ってんですよ」というセリフにもそれが現れている(第9話から)

―― 作品を通じて伝えたいことを聞かせてください

ずいのさん 親や学校などから「失敗しない方法」はよく教わるのに「失敗したあとどうすればいいか」は詳しく教わる機会が少なく、失敗したらもうダメ! と思ってる人が多い印象があります。

 図書の弁償は、汚したり失くしたり失敗したあとやり直す方法なので、「世の中、失敗しても意外となんとかできることもある」ことはお伝えしたいです。

 あと、図書館の本にセロハンテープを貼らないでほしいことなどです。


 「『知る』のってすごいですよ。知ったことは殴られても盗られないからいつでも弱い者の味方だ」(第9話から)という白井くんの言葉。「知らないこと知るのが楽しくてしょーがねーし?」(第14話から)という石平くんの言葉。作中では特に「知る」ことの大切さや楽しさが描かれています。本がくれる「知」の力、それに誰でも触れられる図書館という場所についてあらためて考えたくなる作品です。

 次のページからは、『税金で買った本』2冊目(第2話)「恩讐の彼方に」を出張掲載。図書館に通い始めた石平くんが、バイトを始めるきっかけになった出来事を描いたお話です。

(C)ずいの/系山冏

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた