“税金で買った本”をめぐる悲喜こもごもの人間模様 ヤンキーが図書館で働く漫画が書籍化(1/3 ページ)
図書館勤務経験のある原作者にお話を聞きました。
ヤンキー少年が個性的な仲間と図書館で働くお仕事漫画『税金で買った本』(原作:ずいの 作画:系山冏)の単行本化が決定しました。12月20日に発売されます(講談社、726円)。(※初掲載時21日発売としておりましたが正しくは20日です。お詫びして訂正いたします)
ヤンキーの石平くんが、子どもの頃図書館から借りて紛失した本を10年越しに弁償したことをきっかけに、図書館に通うようになり、さらにはアルバイトするようになるお話。図書館で働く人、図書館にやってくる人の、本をめぐる人間模様を描いています。
困った利用者やほろっとくるお話、ためになる知識などエピソードはさまざま。原作者が図書館勤務経験者だけあって、本の弁償や修繕、寄贈など、図書館の仕事の裏側も垣間見られます。
悪質な利用者になめられまいと鍛えまくってムキムキになりすぎ、本への愛から暴走しがちな元貧弱文学青年の白井くん。そんな彼のストッパー役で、一見おとなしそうだけど実は芯が強くしたたかさもある早瀬丸さん。図書館で個性的な面々と働く中で、石平くんが“本を通じて知らないことを知る楽しさ”にはまっていく姿が描かれています。
同作はヤンマガWebで連載が始まり、本誌争奪杯で1位を獲得してヤンマガ本誌への移籍が決定(12月13日発売号から。移籍後もヤンマガWeb掲載は継続)。編集部では、原作者のずいのさんにお話を聞きました。
―― 『税金で買った本』はどのような経緯で誕生したのでしょうか
ずいのさん 「連載を意識した漫画を描いてみましょう」とヤングマガジンの担当様にご提案いただいて考えたお話です。継続して描けそうなテーマを話し合った末、働いた経験がありそれなりに詳しいので、図書館の弁償の話はどうかとお話した記憶があります。弁償以外の図書館全般の話も描いてみてはとご提案いただき今のような漫画になりました。
―― ヤンキーと図書館の組み合わせという発想はどこから? 登場人物にモデルはいますか
ずいのさん 最初は、図書館に絶対来なさそうな人が来たら面白いかな!? としか考えてませんでした。その後、ヤンキーと図書館について真剣に考えてみると「貧困」でつながってるな……と気づきその後のお話を展開しました。ヤンキーと呼ばれる人々の背景の1つに貧困があり、公共図書館の役目のひとつが貧困による格差の解消なので。
登場人物に明確なモデルはいませんが、早瀬丸のような雰囲気の方は図書館に何人かいらしたので参考にしたかもしれません。白井のような筋肉隆々図書館員は見たことがありません。いればいいのに。
―― 図書館の仕事をしていてしんどいと思ったこと、逆にやっていてよかったと思ったことは
ずいのさん しんどいと思ったことが多すぎるので全部漫画にしてお伝えできればと思います。よかったことは自分が今まで興味のなかった分野の本を知る機会に恵まれたことです。
―― 図書館の魅力とは?
ずいのさん どんな人でも無料で自由に情報を得られることです! 当たり前なのですが、貴重なことだと思います。
―― 作品を通じて伝えたいことを聞かせてください
ずいのさん 親や学校などから「失敗しない方法」はよく教わるのに「失敗したあとどうすればいいか」は詳しく教わる機会が少なく、失敗したらもうダメ! と思ってる人が多い印象があります。
図書の弁償は、汚したり失くしたり失敗したあとやり直す方法なので、「世の中、失敗しても意外となんとかできることもある」ことはお伝えしたいです。
あと、図書館の本にセロハンテープを貼らないでほしいことなどです。
「『知る』のってすごいですよ。知ったことは殴られても盗られないからいつでも弱い者の味方だ」(第9話から)という白井くんの言葉。「知らないこと知るのが楽しくてしょーがねーし?」(第14話から)という石平くんの言葉。作中では特に「知る」ことの大切さや楽しさが描かれています。本がくれる「知」の力、それに誰でも触れられる図書館という場所についてあらためて考えたくなる作品です。
次のページからは、『税金で買った本』2冊目(第2話)「恩讐の彼方に」を出張掲載。図書館に通い始めた石平くんが、バイトを始めるきっかけになった出来事を描いたお話です。
- 石平くんが紛失した本を弁償した、1冊目「わくわく☆しりたい どうぶつのなぞ」の紹介記事はこちら:「税金で買った本だぞ。返せよ」――図書館で借りた本をなくしたヤンキーが10年越しに弁償する漫画に反響
(C)ずいの/系山冏
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