なぜ令和に「ABBA」なのか、2000年代生まれのZ世代に聞いてみた 40年ぶり新作で記録塗り替え&初グラミーの快挙(1/2 ページ)
メンバー全員70歳を過ぎて再始動。
スウェーデン発のポップ・グループ「ABBA」が2021年11月にリリースした9枚目のスタジオアルバム「Voyage」。初週に全世界で120万枚超を売り上げ、約半世紀の活動で初めてグラミー賞にノミネートされる大ヒットとなっています。
「ABBA」はアグネタ・フェルツクグ、ビョルン・ウルヴァース、ベニー・アンダーソン、フリーダことアンニ=フリッド・リングスタッドの4人から成るスウェーデン出身のポップ・グループ。主にビョルンとベニーが曲を作り、アグネタとフリーダがボーカルを務めるスタイルで、また活動期間中はアグネタとビョルン、フリーダとベニーがそれぞれ結婚していたことも有名です。1970年代に「マンマ・ミーア」「ダンシング・クイーン」といった楽曲で人気を博しましたが、1982年から長らく活動休止しており、事実上の解散状態にありました。
40年の沈黙を破る新作は、18カ国のチャートで初登場1位を記録。1972年の活動開始から約半世紀となる2021年、世界中でアルバムセールスとチャートの記録を塗り替えました。さらに第64回グラミー賞ではジャスティン・ビーバーやビリー・アイリッシュら若いアーティストと並んで最優秀レコード部門にノミネート。意外にもこれがグループ史上初のグラミー候補として賞レースの注目株となっています(※授賞式は2022年1月現在、現地時間4月3日への延期が発表)。
最初で最後の来日公演から40年、なぜ年号が昭和から平成を挟んで令和となったいまABBAがアツいのか。どうしてABBAは40年の空白を経ての復活で、最盛期を上回る功績を残せたのか。その理由を探るべく、日本からABBAを愛し続けるファンに、新作の魅力やABBAへの思いを聞いてみました。
親のおかげで、学校でーー出会いはあちこちにあった、若い世代から集まる支持
今回協力いただいた5人のファンのうち、3人が2000年以降に生まれた10代のファン。SNSを介して募った背景があるにせよ、ともすればABBA最盛期には親すら生まれていない世代ですが、いずれの答えも各人がABBAというグループや音楽と一緒に歩いてきたこれまでを感じさせるものでした。
21世紀生まれのZ世代が出会いのきっかけとして上げたのは、親や祖父母、イベント、テレビと多岐にわたりますが、いずれもABBAの影響を受けた“大人”の存在がありました。世代間をまたいで魅力が伝わってきたことを感じさせます。10代のファン自身も「ABBAの音楽に背中を押されて海外への進学を決めた」「担任に止められながらも、全校放送でABBAの楽曲を流したのが思い出」「親の行きつけの店で、外国人スタッフとデュエットをした」とABBAの輪を広げてきたエピソードを聞かせてくれました。
一方で50代の女性ファン、タヘリ真弓さんはかつてのABBAを知る世代。しかし「来日ツアー当時はまだ11歳だったため参加できず、ずっと引きずってきた」と悔しい経験もしました。その思いがモチベーションとなり、空白期間を含めてここまでABBAを愛し続けてきたといいます。父親から贈られたレコードが出会いとなり、過去20年は海をわたってメンバーを追いかけてきたというほど。海外ファンとも触れ合う中で「ファン同士の交流がとても盛んでした」といずれの時代にもABBAには根強い支持があったと振り返っています。
ちなみに30代の記者は、2001年に放送された野島伸司さん脚本、深田恭子さん、滝沢秀明さん(現ジャニーズ社長)主演ドラマ「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」(TBS系)の主題歌を通じてABBAを知った世代。同作は最高視聴率18.4%と高い数値を記録しており、当時ドラマの放送に合わせて発売されたベスト盤「S.O.S.〜ベスト・オブ・アバ」はオリコン最高位3位の成績を残しています。
また1999年には全編ABBAの楽曲のみで構成されたミュージカル「マンマ・ミーア!」が英ロンドンを皮切りに全世界で公演を開始。2008年と2018年に映画化され、オールドファンを喜ばせる一方で新規ファンも開拓し、時代ごとにABBAに“はまる”きっかけは幾つもありました。
ともに10代の女性ファンSarahさんといちごじゃむさんは、リアルタイムでの活躍は知らないからこそ新作リリースの知らせを耳にしたときは「世界一大好きなABBAをリアルに推せる日がくるなんて奇跡」「私が生まれた時には既にABBAは活動をしていなかったのでまさか」と心が震えたとコメント。往年のファンだけでなく、初めてリアルタイムで“推せる”状況に接したファンの興奮が、70年代を超える躍進の原動力になったことが創造できます。
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