漫画村問題、クラウドフレアを漫画家が訴えた裁判で逆転勝訴 足掛け4年、「少しでもいい前例になってくれたら」
一審の東京地裁から一転、Cloudflare社に対し情報開示を求める判決が下されました。
現役漫画家が米Cloudflare社に対し「漫画村」の運営者情報開示を求めて訴えていた裁判(控訴審)で、知的財産高等裁判所は2月21日、一審の東京地裁から一転(関連記事)、Cloudflare社に対し情報開示を求める判決を下しました。前回の判決から約2年、訴訟開始から数えると実に4年越しの“逆転勝訴”となります。
原告は著書に『人生リセット留学。』や、ドラマ化もされた『Walkin' Butterfly』などを持つ漫画家のたまきちひろさん。たまきさんは2018年、自身の作品が漫画村に違法にアップロードされていたことを受け、漫画村にサーバを提供していた米Cloudflare社に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、漫画村運営に関与した発信者の情報を開示するよう提訴。しかし裁判当時、既に漫画村運営者については特定されていたこともあり、東京地裁はこれ以上の開示の必要はないとしてたまきさんの請求を棄却していました。
しかしたまきさん側は、「運営者の特定=発信者の特定ではない」としてこれを控訴(漫画村は複数人で運営されていたとされており、運営者が必ずしも直接違法アップロードを行っていた本人とは限らない)。また、一審では漫画村の事件で逮捕された4人のうち“1人を除外した3人”について「これらの者に対して、損害賠償請求をすることが可能な状態にあるものというべき」と認定されていましたが、名前を出さずにただ“3人”としか記載されておらず、これでは結局誰が発信者(侵害者)と裁判所が認定しているのか不明だった(=侵害者に損害賠償を求めることができない)ことも控訴理由となりました。
こうした経緯を踏まえ、二審ではたまきさん側の主張が認められ、あらためて発信者の氏名と住所が開示されることに。裁判を担当した中島博之弁護士(東京フレックス法律事務所)は、今回の裁判の意義について「Cloudflare社に対し、東京地裁が管轄であると認められたこと、海外企業であったとしても情報開示の手続が日本でできると証明できたことは大きかったと思います。また、プロバイダ責任制限法の改正法施行で、半年以上かかることもある海外への送達期間が短くなるなど、被害者がより迅速に情報開示を行えるようにする制度改正が予定されています。この背景には、海外企業に日本の法律を使って真面目に発信者情報開示請求訴訟を提起すると何年もかかるという今回の訴訟の件なども参考になっているのではと思いますので、制度改正に関する立法事実を提供できたことにも意味があったと思います」とコメントしました。
併せて、原告のたまきさんにも今の気持ちを聞きました。
―― 請求が認められ、今はどんなお気持ちですか。
たまきさん:海外の企業を相手取っての裁判ということで、前例もなく、ほぼ負け戦のつもりで臨んだのですが、こういう結果を勝ち取れたのはひとえに、(裁判を担当した)中島弁護士の情熱と信念、オタクとしてのプライドのおかげです。今回の訴訟費用も実は中島弁護士が負担してくださっていて、私は何もしていないのですが、今回の裁判が漫画業界にとって少しでもいい前例になってくれたらと思います。
―― 漫画村の事件に対し、どのように考えていますか。
たまきさん:インターネットが出てきてから、それにどう対応するか、これまでは漫画家も出版社も対応が足りなかったと思っています。漫画村の事件をきっかけに、今後は何をどう強化すればいいかより真剣に考えるようになりましたし、一つのきっかけになったと考えておきます。
―― 自身の漫画が発売されたその日にアップロードされていたのを知ったときはどんな気持ちでしたか。
たまきさん:なんというか、言葉もありませんでした。中には海賊版サイトで作品を読んで、「ファンになりました」とか「面白かったです」とか言ってくれた人もいたのですが、どういう気持ちだったのか……。応援していますと言って海賊版を読む、矛盾していますよね。漫画家って仕事だと思われていないというか、「好きなことをしてるんだからいいでしょ」と思われている部分があるなと感じます。
―― 訴訟開始から4年、当時と今とで海賊版サイトを取り巻く環境は変わったと思いますか。
たまきさん:海賊版サイトがなくなったわけではありませんし、状況が変わったかといわれると正直まだ実感はありません。いたちごっこですよね。少しずつでも対策事例を積み重ねることで変わっていけばいいなと感じます。
昨日の人気記事
関連記事
漫画村運営者情報の開示請求が棄却になったのはなぜ? Cloudflare訴訟の地裁判決を解説
なぜ東京地裁は「原告の請求を棄却する」との判断を下したのか。東京地裁、Cloudflareに対する漫画村運営者情報の開示請求を棄却 米国企業ながら裁判の管轄は東京地裁と明らかに
運営者全員が逮捕されたことにより、運営者の特定が終わっているため。刑事摘発に意義がある―― 集英社が海賊版サイト「漫画BANK」との闘いの裏側を告白
漫画BANKでタダ読みされた総額は2082億円相当(約9億9370万アクセス)。「ファスト映画」投稿者らに全国初の有罪判決 公判では被告らのタワーマンション移住検討も明らかに
主犯格には懲役2年(執行猶予3年)と200万円の罰金が言い渡されました。2時間の映画を10分で紹介 「ファスト映画」累計被害額は950億円超、業界が法的措置へ
確認されているチャンネルだけで、累計再生回数は4億7700万回超とも。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
すみれ、息子を見つめる“お宮参り”2ショットに反響 「お母さんですね〜」「着物が似合いますね」
この写真の中に1人の自衛隊員が隠れています 自衛隊が出したクイズが難問すぎる……「答え見ても分からない」と人気
上司「在宅勤務中にサボっているのでは?」 → 社員のログをあさったら“未申告残業”ばかり出てきた話が示唆に富む
親子そろって最高すぎる! 本木雅弘&長男UTA、“腕時計”輝く新ビジュアルで洗練されたスタイル披露
つるの剛士、47歳誕生日に妻から最高の“サプライズ” 「完全にパパ酩酊」「妻は天使なのか女神なのか聖母なのか…」
イタズラが見つかった柴犬、しょんぼりしてると思いきや…… まさかの真相に「大声で笑ったw」「反省姿がツボです」の声
野良猫親子を保護→怒られるのを承知で子猫を抱っこしたら…… 親猫のまさかの反応に「信頼しているんでしょうね」の声
だいたひかる、4カ月長男の動画にファンから難病指摘 医師「その病気の可能性は99%ありえないです」
「アクシデントではなく」SHELLY、事実婚パートナーとの間に第3子妊娠 前夫も「よかったじゃん!」と祝福
川島なお美さんの7回忌を夫・鎧塚俊彦さんが報告 コロナ禍で“粛々とした”供養になるも墓前はゴージャスに変身
先週の総合アクセスTOP10
- 誰にもバレずに20年 別荘を解体中にバスルームから“とんでもないモノ”が見つかる 「わけがわからない」と困惑
- 「チコちゃん」マナー講師が炎上で、エガちゃんの株が上がってしまう 「エンタメの見本」「エガちゃんはやっぱり偉大」
- 「だめだお腹痛い」「大爆笑しました」 榎並大二郎アナ、加藤綾子に贈った“ガチャピン人形”が悲惨な姿になってしまう
- ジャガー横田、愛車・BMWが高速手前でエンスト 九死に一生も原因不明の故障に「新車でまだ一年半なのに…」
- 「志摩スペイン村」微塵も人がいないのに突如トレンド入り 「にじさんじ」周央サンゴの“正直すぎるレポ”で話題に
- キンコン西野、“勝手に出された婚姻届”にまさかの展開 証人欄にはお世話になっている「森田一義って名前が」
- 「ゆっくり茶番劇」商標取得者の所属コミュニティーが声明 商標権の完全放棄を要求
- 中村江里子、174センチの長女&181センチの中学生長男に驚く声 「足ながっ!!」「モデルになれそう」
- 「志摩スペイン村」がトレンド入り→公式ホテルの予約が急増とさらなる展開へ 広報「すごいことが起こっているぞと思った」
- 華原朋美、デザイン手掛けた黒ミニドレスを披露 「本当に痩せて綺麗になって」「全てが可愛すぎました」と反響
先月の総合アクセスTOP10
- 「普通ではなかった」 坂上忍、「バイキング」卒業翌日に“生放送”の重圧語る 都内自宅取り壊しの決断も明かす
- どうやって着てるんだ! 冨永愛、背中丸見えな“人魚風衣装”に「誰にも真似できない」と反響
- 柴犬が1年ぶりの再会に待ちきれず…… 帰省したお姉ちゃんを見つけてよろこびを爆発させる姿に涙が出る
- 「カムカム」最終回目前、怒涛の展開に視聴者からのツッコミ殺到 「突然のどエラい告白で放送事故」
- 「お綺麗すぎてぶち抜かれた」 フワちゃんが2時間メイクで雰囲気一変、シックな黒ドレスでのモデル姿に称賛の声
- この画像の中に猫が隠れています 見つかるとスッキリなクイズに「わからん」「手こずった」
- 「きもい」「仕事減ったな」水谷隼、誹謗中傷DMへ怒り 「後で泣き喚いても一切同情しないから」
- だいたひかる、虐待の疑いで通報される 警察の訪問受け「アンチが多い事もお伝えしておきました」
- 里田まい、入学準備中の長男に「違う、そうじゃない」 父・田中将大選手そっちのけの推し愛が暴走
- 息子が、大親友ハスキーの「あそんで」を無視した結果…… 激おこワンコとのわちゃわちゃなやりとりに21万いいね