漫画村問題、クラウドフレアを漫画家が訴えた裁判で逆転勝訴 足掛け4年、「少しでもいい前例になってくれたら」

一審の東京地裁から一転、Cloudflare社に対し情報開示を求める判決が下されました。

» 2022年02月22日 17時00分 公開
[ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 現役漫画家が米Cloudflare社に対し「漫画村」の運営者情報開示を求めて訴えていた裁判(控訴審)で、知的財産高等裁判所は2月21日、一審の東京地裁から一転(関連記事)、Cloudflare社に対し情報開示を求める判決を下しました。前回の判決から約2年、訴訟開始から数えると実に4年越しの“逆転勝訴”となります。

Cloudflare訴訟 逆転勝訴 イラスト提供:たまきちひろさん

 

 原告は著書に『人生リセット留学。』や、ドラマ化もされた『Walkin' Butterfly』などを持つ漫画家のたまきちひろさん。たまきさんは2018年、自身の作品が漫画村に違法にアップロードされていたことを受け、漫画村にサーバを提供していた米Cloudflare社に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、漫画村運営に関与した発信者の情報を開示するよう提訴。しかし裁判当時、既に漫画村運営者については特定されていたこともあり、東京地裁はこれ以上の開示の必要はないとしてたまきさんの請求を棄却していました。

Cloudflare訴訟 逆転勝訴 たまきちひろさん

 

 しかしたまきさん側は、「運営者の特定=発信者の特定ではない」としてこれを控訴(漫画村は複数人で運営されていたとされており、運営者が必ずしも直接違法アップロードを行っていた本人とは限らない)。また、一審では漫画村の事件で逮捕された4人のうち“1人を除外した3人”について「これらの者に対して、損害賠償請求をすることが可能な状態にあるものというべき」と認定されていましたが、名前を出さずにただ“3人”としか記載されておらず、これでは結局誰が発信者(侵害者)と裁判所が認定しているのか不明だった(=侵害者に損害賠償を求めることができない)ことも控訴理由となりました。

 こうした経緯を踏まえ、二審ではたまきさん側の主張が認められ、あらためて発信者の氏名と住所が開示されることに。裁判を担当した中島博之弁護士(東京フレックス法律事務所)は、今回の裁判の意義について「Cloudflare社に対し、東京地裁が管轄であると認められたこと、海外企業であったとしても情報開示の手続が日本でできると証明できたことは大きかったと思います。また、プロバイダ責任制限法の改正法施行で、半年以上かかることもある海外への送達期間が短くなるなど、被害者がより迅速に情報開示を行えるようにする制度改正が予定されています。この背景には、海外企業に日本の法律を使って真面目に発信者情報開示請求訴訟を提起すると何年もかかるという今回の訴訟の件なども参考になっているのではと思いますので、制度改正に関する立法事実を提供できたことにも意味があったと思います」とコメントしました。

 併せて、原告のたまきさんにも今の気持ちを聞きました。

―― 請求が認められ、今はどんなお気持ちですか。

たまきさん:海外の企業を相手取っての裁判ということで、前例もなく、ほぼ負け戦のつもりで臨んだのですが、こういう結果を勝ち取れたのはひとえに、(裁判を担当した)中島弁護士の情熱と信念、オタクとしてのプライドのおかげです。今回の訴訟費用も実は中島弁護士が負担してくださっていて、私は何もしていないのですが、今回の裁判が漫画業界にとって少しでもいい前例になってくれたらと思います。

―― 漫画村の事件に対し、どのように考えていますか。

たまきさん:インターネットが出てきてから、それにどう対応するか、これまでは漫画家も出版社も対応が足りなかったと思っています。漫画村の事件をきっかけに、今後は何をどう強化すればいいかより真剣に考えるようになりましたし、一つのきっかけになったと考えておきます。

―― 自身の漫画が発売されたその日にアップロードされていたのを知ったときはどんな気持ちでしたか。

たまきさん:なんというか、言葉もありませんでした。中には海賊版サイトで作品を読んで、「ファンになりました」とか「面白かったです」とか言ってくれた人もいたのですが、どういう気持ちだったのか……。応援していますと言って海賊版を読む、矛盾していますよね。漫画家って仕事だと思われていないというか、「好きなことをしてるんだからいいでしょ」と思われている部分があるなと感じます。

―― 訴訟開始から4年、当時と今とで海賊版サイトを取り巻く環境は変わったと思いますか。

たまきさん:海賊版サイトがなくなったわけではありませんし、状況が変わったかといわれると正直まだ実感はありません。いたちごっこですよね。少しずつでも対策事例を積み重ねることで変わっていけばいいなと感じます。

 

 

昨日の人気記事

 

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/08/news009.jpg スーパーで買ったリンゴの種に“粉”を振りかけ育てると…… まさかの結果に「どうして!?」「すごーい!」「やってみます」
  2. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  3. /nl/articles/2405/08/news006.jpg 娘が抱える小型犬の目を疑うデカさに「サモエドかと思った…」「固定資産税かかりそう」 意外な正体がSNSで話題
  4. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  5. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  6. /nl/articles/2405/08/news014.jpg 1歳弟の歩行練習に付き合う柴犬、アンパンマンカーに乗って…… 「待ってましたー!!」「もうプロ級ですね」“師匠”なたたずまいに爆笑の620万再生
  7. /nl/articles/2403/13/news017.jpg 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」
  8. /nl/articles/2405/07/news153.jpg 注意書きや警告に添えると……? 天才的発想の“一発逆転キーホルダー”が10万いいねの大反響 「やめーやww」「好きすぎる」
  9. /nl/articles/2405/08/news018.jpg 2歳兄、4カ月の妹の周りをおもちゃで埋め尽くしたあと…… 妹をとことん楽しませる行動に「優しいおにいちゃん」「癒されてほっこり」
  10. /nl/articles/2405/08/news102.jpg 敷島製パン「超熟」に小動物混入、食パン10万4000個回収 「深くお詫び申し上げます」
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評