「殺処分を依頼して、笑顔で帰る飼い主がいる――」 高齢・病気の犬猫保護団体「フィリックス・アニマ」が支える命の現場(3/3 ページ)
奇跡を起こしたエリザベスちゃんと美雨ちゃん
――特に印象に残っている猫ちゃんはいますか?
藤森さん:エリザベスちゃんと美雨ちゃんのコンビです。エリザベスちゃんは保健所で働いていたときに、生後半年で交通事故にあって「前足だけで徘徊してる猫がいる」と連絡があった猫ちゃんでした。捕獲しましたが、骨盤も負傷していて排せつも自分でできず、保健所に「歩けない子は生きていけないから、殺処分」と言われました。そこを「そんなことは理由にならない」とうちで引き取ったんです。
そして半年後、保健所に「ノルウェージャンフォレストキャット」の美雨ちゃんが持ち込まれ、うちで引き取りました。美雨ちゃんは先住猫に首をかまれたらしく、首の神経をやられて前足・後ろ足ともにマヒしていました。飼い主さんは「こういう子はお金もかかるし、面倒みるのが大変なので」と言ってました。
うちで2匹一緒に暮らすようになったら、エリザベスちゃんが美雨ちゃんの首のまわりをなめてマッサージしてくれたり、排せつの面倒を見てくれたりするようになったんです。そのおかげで、美雨ちゃんは今後ろ足だけで階段をあがるまでに回復しました。獣医師さんも「本当に奇跡だね」と言ってくれてます。
――血がつながっていなくても、家族のように暮らしているんですね。
藤森さん:毛色によって体臭が違うのでは、という説があるらしくて。不思議なんですが、うちでも同じ毛色でまとまる傾向がありますね。茶トラは茶トラでまとまるし、キジトラはキジトラでまとまる。割とそうやって部屋分けしています。あとは親子でまとめることも多いです。
保健所は殺処分が前提。“安楽死”なんて死はない
――Twitterでも仲良く寄り添っている猫ちゃんたちが印象的でした。最後に読者や、動物の飼い主に対するメッセージがあれば教えてください。
藤森さん:最後まで動物の所有権を放棄せず、命がおわるまでみとってほしいです。「かわいいから」で飼い始めて、途中で「引っ越さなきゃいけない」「面倒を見れない」と色々な理由をつけて所有権放棄をする人が多いんです。
保健所って、譲渡する場ではないんですよ。「殺処分」が前提であることを、皆さんに忘れないでほしいです。もちろん保健所も譲渡事業を始めていますが、「保健所に連れて行けば誰かもらい手を探してくれる」という安易な考えの人が多いように感じます。あくまでも「殺処分前提の場所」だということを忘れないでほしいです。
もしも、どうしても自分が飼えなくなったら、責任を持って代わりの飼い主を探す努力をしてほしいです。保健所に「猫がほしい」と年配の方が来るケースが多いんですが、「自分に何かあっても子どもたちが面倒みるから」というんですけど、いざ何かあったら、子どもは「親の猫だから知らない」「自分にはアレルギーがあるから」と保健所に持ち込む方も多いです。その場しのぎで「自分に何かあっても大丈夫」という人が多い。「自分に万が一あったときに、代わりに飼ってくれる人がいるか」を本気で考えて、見つからなければ飼わないでほしいです。
心から言いたいのは、「安楽死」なんて死はないということです。みんな苦しんで死んでいきます。私はずっと殺処分される姿を見てきたので……。保健所に連れてきた飼い主さんたちは見ないで帰ってしまいますからね。そのことを心にとどめてほしいと思います。
(了)
私たちが普段譲渡会などで目にする保護犬・猫たちは、多くが健康で若い個体。そうじゃないと、里親が見つからない――。そんな現実が保護犬・猫たちを取り巻いています。少々乱暴ですが、人間にそのまま置き換えた場合「病気や歳をとっている人、体を自由に動かせない人は命を奪われていい」となるのでしょうか。
そんなカテゴリーからはみ出してしまった犬猫たちを保護し、一生をともに暮らしている人がいる。藤森さんのように、懸命に命を守っている人がいることを忘れてはなりません。フィリックス・アニマは「Amazonほしい物リスト」を公開中。医療費に充てる寄付金の支援をTwitter(@felix_anima_)で呼びかけています。
取材協力・画像提供:フィリックス・アニマ(@felix_anima_)さん
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