二束三文で買った“ワシの像”が3千カラットの人工ルビー(時価総額1千万円)だった!? 京セラと持ち主を取材(1/2 ページ)

果たしてホンモノなのか……!?

» 2022年04月04日 21時15分 公開
[Kikkaねとらぼ]

 フリマサイトにて二束三文で手に入れた“ワシの像”が、2008年当時世界最大級と呼ばれた“3000カラットの人工ルビー”製だった可能性があると、大きな話題を呼んでいます。当時人工ルビーの製造を手掛けた京セラ社と持ち主を取材しました。

 このワシ像を手に入れたのは、鉱物収集を趣味に持つ木の実(@konomi17)さん。「某所で鳥の置物として二束三文で売られてたモノ 特に印も何もなかったけど調べていったら2008年のとある新聞記事に行きついて目が点になっている」とツイートしたところ、3000件以上拡散し、大きな話題を呼んでいます。ツイートに添付された新聞記事には、京セラ社が世界最大の人工ルビーのワシ像を作ったと書かれていました

ルビー 鷲像 京セラ フリマ 話題のワシ像(画像提供:木の実さん)
ルビー 鷲像 京セラ フリマ 付属していた鑑別書(画像提供:木の実さん)

 木の実さんによると、ワシ像の大きさは全長が約13センチ、直径が5.5センチで全体は赤色。「ソーティング」と呼ばれる「中央宝石研究所」の簡易鑑定書も付属しており、「613.8グラム 合成ルビー」といった情報が記載されています。

 木の実さんがこの情報をもとに調べたところ、2008年に京セラ社(京都市伏見区)が約3千カラットの人工ルビーの製造に成功し、高さ約12センチ、約5センチのワシの像を制作した――という記事を発見。木の実さんは「何故か添付されてた数年前にとられたソーティングがダメ押ししてくるのだけど、正直誰か嘘だと言って欲しい この鷲ちゃん、世界に何体いるの…?」とつづりました。

ルビー 鷲像 京セラ フリマ 木の実さんが所有するワシ像の全体写真(画像提供:木の実さん)
ルビー 鷲像 京セラ フリマ 全長が約13センチ、直径が5.5センチ(画像提供:木の実さん)

持ち主を取材

 ねとらぼ編集部はこのワシの像について調査すべく、持ち主の木の実さんを取材しました。

――ワシ像を発見したきっかけを教えてください。

木の実自分のアカウントを見ていただいてもわかる通りいわゆる鉱物収集オタクでして、その日なんとなく「合成ルビー」で検索して偶然発見しました。

――出品された方はどういう方でしたか。

木の実匿名配送を利用したので正直こちらからではわからないです。ただ他の出品物から見るに石には興味のない一般の方だとは思います。

――価値があるものかもしれない、と気づいたのはどのタイミングでしたか。

木の実購入ボタンを押したときは気付いてませんでした。

 彫刻(カービング)されたものはあまり集めたことがなかったので知識がなく、とりあえず海外製だと思って「ruby carving」等で検索してみたのですが該当がなく(そもそも最初はワシではなく鷹だと思っていました)。出てくるわけないだろうと思いつつも日本語で検索したところ、(京セラの人工ルビー鷲について取り上げた)あるブログの記事に行き当たりまして………。

 商品が届いてから自宅のジェムテスターでガラスではないことを確かめて、念のため新聞記事が本当に存在するかも図書館で調べて確認した後、あのツイートをしたという流れです。あまりのことにうれしさより困惑の方が強かったですね。

――もし本当に京セラ製である場合、ワシさんをどうしたいですか。

木の実皆さんの反応を見る限り1000万円の文字がすごく先走っているようですが、現実的な話をするなら合成石ですし多分そこまでの価値はないかと……。

 ただこれだけ大きな合成ルビーの彫像なんてあまり作られないかと思いますし私には分不相応なので、望まれるならしかるべきところに行ってほしいです。若輩者の戯言ですが、私は単にワシちゃんが再び世に出るために一時の仮宿として選ばれただけだと思っています。


京セラ社を取材

 続いて取材したのは京セラ社。Twitterでワシ像が話題になっていることを伝えると、2007年〜2008年に報道関係者に配布されたという「宝飾応用事業」の関連資料を探し出してくれました。

ルビー 鷲像 京セラ フリマ 京セラ社の資料に載っていたワシ像の画像(提供:京セラ)

 資料によると、京セラのワシ像は約3000カラットの合成ルビーからなり、円柱の直径は5センチ、高さは12センチ、想定価格は1000万円。

 再結晶宝石をはじめ、ブライダルリングやアクセサリーなど、長年宝飾事業を展開している京セラが、長く培ってきた再結晶宝石の結晶育成技術によって育成した高品質な再結晶ルビーの原石を、高い技術を持つ海外のクラフトマンが彫刻したものと紹介されており、“世界最大級のルビー製ワシ像”だと記されています。

 2007年12月にアラブ所長国連邦のドバイで開催された宝飾展示会「ドバイ国際コンベンション」で世界初披露されたほか、京セラ社が主催する宝飾用品展示販売会 「彩美展 2008」でもお披露目されたことがあるそうです。

 資料に掲載されている京セラ社のワシ像と、木の実さんが手に入れたワシ像はかなりよく似ており、サイズもほぼ同じですが、制作が2007年前後ということもあり、京セラ社内で当時ワシ像の制作に携わった人や関係者を見つけることはできませんでした。

 また木の実さんのワシ像の写真は確認しているものの、実物の成分等を分析しなければ、ワシ像が京セラ製なのかどうかの判別は付かないとのことでした。


中央宝石研究所を取材

 最後に取材をしたのは、ワシ像に付属していた「ソーティング」に社名があった中央宝石研究所。「VN」から始まるナンバーの記載があったことから「613.8グラムの合成ルビーを鑑定した履歴が残っていた」とのこと。

ルビー 鷲像 京セラ フリマ ワシ像に添付していた鑑別所(画像提供:木の実さん)

 さらに当時鑑別を手掛けた大阪支店にも確認してもらったところ「鳥の彫刻のような形の合成ルビーを鑑定している」とのことで、木の実さんが手に入れたものが、合成ルビー製である可能性がグッと高まりました。

ワシ像をついに鑑別

 しかしながら、宝飾関係では製品と鑑定書がすり替わっていたといったこともままあるようなので、以上の結果を木の実さんに伝え、正確な鑑別を行うためには、現時点であらためて木の実さんが持つワシ像を専門機関にて調べてもらう必要があると伝えました。

 すると、木の実さんから「日本宝石科学協会さんで鑑別してきた」との連絡があり、鑑別書の写真を送ってもらうことができました。

ルビー 鷲像 京セラ フリマ 合成ルビーだったワシ像!(画像提供:木の実さん)

 そこにはあのワシ像の写真とともに「合成ルビーと認む」の文字が。

 木の実さんに「見事本物の合成ルビーだったのですね! すごいです!」と連絡したところ、「偽物と呼ばれやすい合成石だからこそ本物の合成ルビーという表現はなかなか不思議な感じがします」とコメントを寄せてくれました。

 結局京セラ製か否かについては現時点で不明ですが、フリマアプリでの買い物から始まった奇跡のようなお話でした。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」