シリーズ異例の「プリキュアと共に戦う男の子」登場 デリシャスパーティプリキュアで描かれる新しい“プリキュア男子像”:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
男の子が戦いに参加する理由
そんなプリキュアシリーズにおいて、ついに「プリキュアと同じ目線で戦う男の子」が登場したのです。
一部では「男の子の力を借りるのは女の子の自立を妨げるのでは?」みたいな捉え方も見られますが、もちろんそんなことはありません。
プリキュアはプリキュアの意思で戦う決断をし、拓海くんも彼自身の意思で戦うことを決意しているのです。個々が個々の意思で行動することは、「女の子の自立」を妨げるものではありませんよね。依存ではなく共存です。
「女の子だけで解決しないといけない」という自縄自縛
今回「男の子」が一緒に戦うことになったのは、時代に合わせた意味もあるのかもしれません。
プリキュアは「女の子の自立」を描くために、ずっと「女の子だけのチーム」が描かれてきました。いつのときも女の子だけのチームで敵を倒してきたのです。
しかしそのことが、時代を重ねるにつれ、逆に「女の子に起きるあらゆる問題は女の子だけの力で解決しないといけない」という自縄自縛へとつながってきているのもまた事実なのかもしれません。
女の子の世界において何か問題が起きたとき、手を差し伸べてくれる男子の存在は女の子にとっても否定するべきものではなく、必要であれば男の子の力を借り一緒に行動することだって「女の子の自立」につながっていくのではないのでしょうか。
東京大学の准教授、熊谷晋一郎氏は、「自立」とは何でも1人で解決しようとすることではなく「依存先を増やしていくこと」とも語っています。
「女の子」は「男の子」の力を借りても良いし、逆に「男の子」だって「女の子」の力を借りても良い。さらに「デリシャスパーティプリキュア」ではそこにノンバイナリー的なキャラクター、ローズマリーさんを加えることにより、性差に関係なく協力しあう関係性が強調し描かれているのです。
プリキュアの父、鷲尾天氏の言葉
2021年に東京都中野区が主催した「男女共同参画週刊」の講演に登壇したプリキュアの父、鷲尾氏(東映アニメーション 執行役員 エグゼクティブ・プロデューサー)は「アニメーションと多様性」と題した講演の中で、「プリキュアはもともと“助けてくれる王子様を設定しない”というところから始まった。しかし実は男の子もたくさん見てくれていて、人気が出てシリーズを重ねるにつれ表現方法も変遷し、その時代にあったモチーフを設定し、今大事に思うこと、そして自分を大切にするということを伝えている」と語っています。
プリキュアは時代に合わせて表現方法も変遷し続けているのです。
例えば「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)では「シスターフッド的な個の連携でつながる女の子」が描かれ、「ヒーリングっどプリキュア」(2021年)では「女の子は女神ではない」といった価値観のプリキュア像も描かれました。
ただ、その根底にある不変なものとして男の子も女の子も関係なく「自分を大切にすること」がある、としているのです。
女の子が喜んでくれるなら、プリキュアも変わっていく
また、鷲尾氏は過去のインタビューでも「プリキュアは女の子が喜んでくれさえすれば、変身しなくったって、男の子が仲間になっても良い」とも語っています。
「女の子たちに熱狂してもらえるなら、変身しなくてもいいし、アクションをしなくてもいい。男の子が仲間に加わってもいいとまで思っています。女の子たちがちゃんと喜んでくれる作品になっているなら、「プリキュア」も変わっていってもいいと思うんです。
講談社『ふたりはプリキュア Max Heart プリキュアコレクション』(上北ふたご著)鷲尾天独占インタビューより
プリキュアは「女の子たちが熱狂してくれる作品」であることが一番重要であり、そのためには表現は変わっていっても良い、としているのです。
「男の子と一緒に戦うシリーズもある」「シスターフッド的な個の連携を描くシリーズもある」「家族みたいな関係が描かれるシリーズもある」……。
そんなたくさんの「女の子の選択」が描かれ続け、子どもたちが喜んでくれることがプリキュアシリーズの強みであり、真の意味での子どもたちにとっても多様性がある世界だと思うのです。
昨今、プリキュアでは「ポリコレ的な表現」が話題になりがちですが、描かれているのはあくまで「自分を大切にすること」。そして何より一番大事にされているのは「子どもたちのエンターテインメントであり続けること」なのです。
「デリシャスパーティプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
関連記事
- ようやく会えるぞキュアヤムヤム 「デリシャスパーティプリキュア」1カ月の放送延期がもたらす商業的な影響とは?
まずは放送再開に向けて動いてくれた全ての関係者さまに感謝したいと思います。 - 「おいしそうにご飯を食べる」「敵と一緒にごちそうさま」 デリシャスパーティプリキュアが子育て世代にも支持される理由
デリシャスパーティプリキュアで描かれる「ごはん」は本当においしそうなのです。 - プリキュアが歌い出した日 Perfumeの振付師MIKIKO先生が手掛けた「ドキドキ!プリキュアEDダンス」の衝撃
個人的には「ハピネスチャージプリキュア!」の前期ED「プリキュア・メモリ」も大好きなエンディングです。 - 人魚のローラが「キュアラメール」に変身 「トロピカル〜ジュ!プリキュア」で描かれた“足を得る”選択について
人魚姫の物語は足を得てからが本番なのです。 - 「ヒープリは不遇だったと言わせるつもりはない」と語る悠木碧の思いに、僕たちができること
あらためて「ヒーリングっど プリキュア」は製作者に愛されている作品だと思いました。 - 「なんだあの動きは?」「板岡錦だ!」 プリキュアがカッコよく動く、アニメーター板岡錦の世界
板岡錦さん、初の作画監督、おめでとうございます。 - 全ての原画をたった1人で 「キラキラ☆プリキュアアラモード」第36話を支えた青山充という伝説
あきらさんが頭なでなでされる姿、かわいかったです!! - 14歳の娘と、8年ぶりにプリキュア映画を見に行ったお話
2018年のプリキュア映画は、女子中学生をも劇場に呼び戻す力がありました。 - プリキュア映画と「応援」の話 120%の力を引き出す「プリキュアがんばれー」
「映画プリキュアミラクルリープ」は5月16日公開になりました! 楽しみです! - 「応援なんて誰にでもできる」という正論に、プリキュアはどう立ち向かったのか? 「HUGっと!プリキュア」開始3カ月を振り返る
まだ4分の1が終わっただけなのにこの密度。2018年のプリキュアはとにかくすごいぞ。 - 主人公がピンク髪でマスコットいて悠木碧……! シリーズ第17弾「ヒーリングっどプリキュア」が2020年2月スタート
あのピンクの髪の魔法少女が今度はプリキュアに。【訂正】 - 星の次はハートだ! 「ヒーリングっど プリキュア」、ヒーリングアニマルと力を合わせ地球をお手当て!
「スタプリ」終了間近を惜しむ声も。 - 娘に「実はわたし、プリキュアなの」と言われたとき 親はどう振る舞うべきか?
スタプリ第40話、「わたしは2年3組、羽衣ララルン!」もう本当に神回でした!(本編シリアスなときに、こんな内容で申し訳ない)。 - 願いと祝福、新時代のプリキュア映画は子どもたちに何を伝えたのか? 「映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて」を見て
映画スタプリ、2日間で3回見に行くほどには最高の映画でした。心が温かくなります。 - 2世代を取り込む「ハートキャッチ」の強さ 「NHK全プリキュア大投票」を初動のデータから予測
NHK全プリキュア大投票は「ランキング」を語るのではなく、「愛」を語るのです。 - 「善悪はグラデーションで描く」 スター☆トゥインクルプリキュアが切り開く“新しいプリキュア観”
スター☆トゥインクルプリキュア、新しいエンディングが最高にカッコイイのでおすすめですよ。 - 新プリキュア「キュアコスモ」に見る、追加プリキュアの“商業上の重要性”について
ネコ耳、ネコシッポ、ネコポーズ、舌をペロっと出す変身。子どもにも大人にも人気出そう! - 的確な描写に「弓道警察」も納得? 「スター☆トゥインクルプリキュア」の弓道描写がスゴかった
個人的には「弓道警察」は人の心が生み出した形而上の存在だと思っています。 - 平成のプリキュアは、いかに“2度の危機”から復活したのか マクロ視点から振り返る
平成最後のプリキュア記事、気合入れて書いたら1万字を越えちゃいました。 - プリキュアも場合によっては“侵略者”となる 価値観の衝突を描いた「スター☆トゥインクルプリキュア」第8話がアツイ
「スター☆トゥインクルプリキュア」宇宙進出、本格始動です! - 「オヨ〜」が口癖 宇宙人プリキュア“キュアミルキー”は2本の触覚かわいい 「スター☆トゥインクルプリキュア」2月を振り返る
「HUGっと!プリキュア」の最終回にも少し触れています。 - 全人類がプリキュアになった日 「HUGっと!プリキュア」が示した「こうでなければならない」からの脱却
この記事は最終回1話前の第48話の時点で書いています。 - プリキュアはあと100年続く 「HUGっと!」から「スター☆トゥインクル」へ、1年の振り返りと“2018年の奇跡”
2018年のプリキュアの出来事を振り返りました。 - 平成の特異点「ハートキャッチプリキュア!」 “キュアマリン”が今も愛され続けている理由
NHK全プリキュア大投票は「熱量」が可視化されたすてきなイベントでした! - 歴代プリキュア55人+αが勢ぞろい HUGプリ第37話「奇跡のBパート」で何が起きたのか
僕はその日、確かに「奇跡」を見たのです。 - プリキュアって今、何人いるの? 気になったので調べてみた結果
「プリキュアは何人いるのか?」問題は永遠に答えの出ない超難問なのです。 - 「女の子同士が手をつなぐ」ことから始まったプリキュアが「男の子同士が手をつなぐ」までに至ったことに祝福を
「ふたりはプリキュア」から15年。当たり前のことが当たり前になる世の中に。 - 3分に及ぶ「出産シーン」 「HUGっと!プリキュア」が子どもたちに伝えたかった“母の強さ”と”父の責任”
いつだって子どもに誇れる大人でありたいですよね。 - もう一度、新しいステージに 一発屋芸人を声優に起用する「HUGっと!プリキュア」が描く“再生の物語”
ダイガンさん、生きていて本当に良かった……。元クライアス社の3人が本当に楽しそうで何よりです。 - 「子どもを持つことだけが、女性の幸せではない」を描いていく「HUGっと!プリキュア」のすごさ
キュアマシェリとキュアアムール……今年のプリキュアは何もかもが……すごい……尊い……。 - “13の数字”から見るプリキュア通算700回 一番多い色は? アルバムは何作つくられた?
「HUGっと!プリキュア」第15、16話がすごすぎて、思考が追い付かない……。 - 「映画プリキュアスーパースターズ!」 僕が思う“ただ1つ”の残念な点と、それでもこの映画が最高な理由【ネタバレあり】
2018年のプリキュアの勢い、本当にすごいことになっている。 - 悪の組織も「稟議」を通す時代 「HUGっと!プリキュア」のクライアス社が社会人をザワつかせる
「HUGっと!プリキュア」、育児の丁寧な描写が光ります。 - 2018年「HUGっと!プリキュア」が神アニメになる5つの理由
「HUGっと!プリキュア」今から楽しみです。 - 「キラキラ☆プリキュアアラモード」が大成功を収めた5つの理由
この時期はプリキュアロスと新しいプリキュアへの期待で複雑な気持ちになります。 - プリキュアは、平均15分50秒でラスボスを倒す
あと1回でキラキラ☆プリキュアアラモードが終わるなんて悲しい……。 - 「妖精ペコリン」が「キュアペコリン」に 妖精がプリキュアになれる確率は何%なのか調べてみた
じゃあもう、リオ君もビブリーちゃんもプリキュアってことでいいじゃん。 - 脚本家・坪田文は、なぜキュアマカロンの「弱さ」を描いたのか?
琴爪ゆかりさん、キラキラ☆プリキュアアラモードで「最も成長した」キャラですよね。 - 自分に合ったプリキュアの見つけ方 2017年の「最も再生数が多かったプリキュア第1話」から考える
ここまで大差がつくとは思いませんでした。 - 娘を、プリキュアにするために就くべき職業5選
サラリーマンにも希望はあります。 - 歴代プリキュアの「決め技バンク」で一番長い技って? 実際にストップウォッチで測ってみた
ストップウォッチ片手に本当に測定しました。 - これは福音である 「プリキュア男子」という多様性についての考察
「プリキュア論」をどうしても書きたかったので、いつもと文の雰囲気が違います! - 「闇堕ち」の対義語は「光堕ち」? プリキュアで使われている謎の言葉
「光堕ち」という言葉がいつから使われだしたのか、調べてみました。 - 「映画ハピネスチャージプリキュア!」の興行収入はなぜ半減した? 2014年の出来事から考える
映画キラキラ☆プリキュアアラモードが絶好調の今だからこそ、語るべきことがある。 - 今までのプリキュア映画とは540度違う? 「映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリっと!想い出のミルフィーユ!」レビュー
映画キラキラ☆プリキュアアラモード。とにかくね、ものすごい映画でした。 - プリキュア映画歴12年の筆者が教える、大人のプリキュア映画鑑賞法
第37話は映画との連動回。ビブリーちゃんのツンデレっぷりがかわいかったです。 - プリキュアが「手をつなぐ」意味とは?
プリアラ第35話レビュー。「2人はどうして友達なの?」への回答はあおいちゃんらしいものでした。 - プリキュア恒例の入れ替わり回は「自分らしく生きる」ことの意味を問う
猫になっても全く動じないゆかりさん、さすがです。 - ニチアサ改編でプリキュア人口が増える? 「さあ、プリキュアを始めよう」
「プリキュアの数字ブログ」の管理人・kasumiが、毎週プリキュアの魅力をお届けします。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「プロ野球チップス」で誤字 伊藤大海投手を「176m」と記載してカルビー謝罪
-
「ママ友襲来10分前」→さぁ、どうする……? 大爆笑の“あるある”再現が400万再生突破「腹ちぎれました」「バナナ食べんでもええやん」
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに手をスリスリされた瞬間…… 愛と幸せあふれる空間に笑顔になる「これぞ天使だ」
-
「大型魚の餌に!!」 熱帯魚店の“思わず目を疑うPOP”に恐怖 「サメでも飼うの?」
-
漂う違法感 東京に戻る息子へ持たせた“大量のブツ”に「九州人あるある」「帰省からの帰りいつもこれ」の声
-
【追記】クルマのヘッドライトを「魔法の水」で磨いてみたら…… SNSで話題「ダイソーのアルカリ電解水」の効果に「今日やってみます」「参考になりました」の声
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」