シリーズ異例の「プリキュアと共に戦う男の子」登場 デリシャスパーティプリキュアで描かれる新しい“プリキュア男子像”サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

» 2022年06月23日 18時00分 公開
[kasumiねとらぼ]
前のページへ 1|2       

男の子が戦いに参加する理由

 そんなプリキュアシリーズにおいて、ついに「プリキュアと同じ目線で戦う男の子」が登場したのです。

 一部では「男の子の力を借りるのは女の子の自立を妨げるのでは?」みたいな捉え方も見られますが、もちろんそんなことはありません。

 プリキュアはプリキュアの意思で戦う決断をし、拓海くんも彼自身の意思で戦うことを決意しているのです。個々が個々の意思で行動することは、「女の子の自立」を妨げるものではありませんよね。依存ではなく共存です。

デリシャスパーティプリキュア ブラックペッパーはプリキュアの男の子キャラでは珍しく「ぬいぐるみ」も発売されるほどの力の入れようです(写真は著者所有のもの)

「女の子だけで解決しないといけない」という自縄自縛

 今回「男の子」が一緒に戦うことになったのは、時代に合わせた意味もあるのかもしれません。

 プリキュアは「女の子の自立」を描くために、ずっと「女の子だけのチーム」が描かれてきました。いつのときも女の子だけのチームで敵を倒してきたのです。

 しかしそのことが、時代を重ねるにつれ、逆に「女の子に起きるあらゆる問題は女の子だけの力で解決しないといけない」という自縄自縛へとつながってきているのもまた事実なのかもしれません。

デリシャスパーティプリキュア プリキュアは女の子の力で戦ってきた

 女の子の世界において何か問題が起きたとき、手を差し伸べてくれる男子の存在は女の子にとっても否定するべきものではなく、必要であれば男の子の力を借り一緒に行動することだって「女の子の自立」につながっていくのではないのでしょうか。

 東京大学の准教授、熊谷晋一郎氏は、「自立」とは何でも1人で解決しようとすることではなく「依存先を増やしていくこと」とも語っています。

デリシャスパーティプリキュア デパプリではCDジャケットでも性差を越えた6人が主要キャラとして描かれています(出典:Amazon.co.jp

 「女の子」は「男の子」の力を借りても良いし、逆に「男の子」だって「女の子」の力を借りても良い。さらに「デリシャスパーティプリキュア」ではそこにノンバイナリー的なキャラクター、ローズマリーさんを加えることにより、性差に関係なく協力しあう関係性が強調し描かれているのです。

プリキュアの父、鷲尾天氏の言葉

 2021年に東京都中野区が主催した「男女共同参画週刊」の講演に登壇したプリキュアの父、鷲尾氏(東映アニメーション 執行役員 エグゼクティブ・プロデューサー)は「アニメーションと多様性」と題した講演の中で、「プリキュアはもともと“助けてくれる王子様を設定しない”というところから始まった。しかし実は男の子もたくさん見てくれていて、人気が出てシリーズを重ねるにつれ表現方法も変遷し、その時代にあったモチーフを設定し、今大事に思うこと、そして自分を大切にするということを伝えている」と語っています。

 プリキュアは時代に合わせて表現方法も変遷し続けているのです。

 例えば「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)では「シスターフッド的な個の連携でつながる女の子」が描かれ、「ヒーリングっどプリキュア」(2021年)では「女の子は女神ではない」といった価値観のプリキュア像も描かれました。

 ただ、その根底にある不変なものとして男の子も女の子も関係なく「自分を大切にすること」がある、としているのです。

デリシャスパーティプリキュア プリキュアの根底にあるのは性差に関係なく「自分を大切にすること」

女の子が喜んでくれるなら、プリキュアも変わっていく

 また、鷲尾氏は過去のインタビューでも「プリキュアは女の子が喜んでくれさえすれば、変身しなくったって、男の子が仲間になっても良い」とも語っています。

「女の子たちに熱狂してもらえるなら、変身しなくてもいいし、アクションをしなくてもいい。男の子が仲間に加わってもいいとまで思っています。女の子たちがちゃんと喜んでくれる作品になっているなら、「プリキュア」も変わっていってもいいと思うんです。
講談社『ふたりはプリキュア Max Heart プリキュアコレクション』(上北ふたご著)鷲尾天独占インタビューより

 プリキュアは「女の子たちが熱狂してくれる作品」であることが一番重要であり、そのためには表現は変わっていっても良い、としているのです。

デリシャスパーティプリキュア プリキュアシリーズが一番大事にしていることは「自分を大切にすること」

 「男の子と一緒に戦うシリーズもある」「シスターフッド的な個の連携を描くシリーズもある」「家族みたいな関係が描かれるシリーズもある」……。

 そんなたくさんの「女の子の選択」が描かれ続け、子どもたちが喜んでくれることがプリキュアシリーズの強みであり、真の意味での子どもたちにとっても多様性がある世界だと思うのです。

 昨今、プリキュアでは「ポリコレ的な表現」が話題になりがちですが、描かれているのはあくまで「自分を大切にすること」。そして何より一番大事にされているのは「子どもたちのエンターテインメントであり続けること」なのです。

「デリシャスパーティプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション

関連キーワード

プリキュア | アニメ | 東映


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」