18歳で自死した高専の学生を描いた実話漫画が波紋 教師のハラスメントが原因か 遺族は「隠蔽がひどい」と批判(1/3 ページ)

遺族に話を聞きました。

» 2022年08月22日 10時00分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

 「今から2年前、1人の学生が自ら命を絶ちました」――。2020年に国立東京工業高等専門学校(東京高専)で起きた自死事件の背景を描いたノンフィクション漫画が、社会に波紋を投げかけました。作者は漫画家の榎屋克優さん(@enokiyamanga)です。

 なぜ、事件当時まだ18歳だった野村陽向さんは命を絶たなければいけなかったのでしょうか? ねとらぼ編集部では、陽向さんの父・正行(@mnomura17)さんに話を聞きました。すると、陽向さんに危害を加えた学生主事補のX先生のみならず、東京高専をはじめ高専側にも問題があることが浮かび上がってきました。

東京高専の自死事件

「学生会の暴走だ」「ただでは済まない」など教師が暴言

 陽向さんは2018年、東京高専に入学しました。1年生のころから学生会に参加し、2年生で学生会長に就任しています。

 ところが、2020年にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が感染拡大し、事態が一変しました。学生会の学生たちが文化祭「くぬぎだ祭」の開催可否を慎重に検討していたにも関わらず、X先生が強引に開催しようとして、「(中止意見は)学生会の暴走だ」「ただでは済まない」など脅しとも取れる発言を繰り返したのです。

東京高専の自死事件
東京高専の自死事件

 陽向さんが学生会の活動への影響を懸念して謝罪を要求したところ、X先生は書類を提出すれば応じると回答しました。後日、陽向さんが「ハラスメント申告書」を作成して提出したところ、X先生は慌ててすぐに学生会に謝罪しています。しかし、それでもなお、X先生からの「俺のキャリアに傷がついた」など、アカハラ(アカデミックハラスメント)とも取れる発言は止まりませんでした。

 2020年9月、学生会の活動で使用するために購入した物品について、陽向さんが監査を受けるようになってから、ますます事態は悪化していきます。昼夜問わず監査のメールが届き、陽向さんは夜の10時半からリモート面談を受けることもありました。関係者の証言によると、X先生が会計監査をしていた学生たちに指示を出していたというのです。次第に陽向さんの心はむしばまれていきます。

東京高専の自死事件
東京高専の自死事件
東京高専の自死事件

 2020年10月5日の午前1時から2時、陽向さんは自ら命を絶ちました。試験の1週間前になっても続く、厳しい審査に徐々に追い詰められてしまったのです。葬式に集まったのは10代の子どもが約半数で、多くが同級生や友達だったといいます。

 その後、陽向さんの自死について、独立行政法人国立高等専門学校機構(高等機関)が第三者委員会を設置しましたが、自死から約2年が経過した現在でも報告書は提出されていません。

東京高専の自死事件
東京高専の自死事件

 陽向さんの自死からもう少しで2年が経過しようとしている今、父・正行さんはどのような心境なのでしょうか。正行さんは「長い2年間だった。なぜ陽向が死を選ばなければならなかったのか、ずっと考えながら調査してきました」と語ります。

作品提供:榎屋克優さん、協力・写真提供:野村正行さん

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2505/13/news020.jpg 小5のときに描いた絵→4年後…… 「ねぇ何があったん?」「鳥肌立った」中3になって描いた絵が160万再生
  2. /nl/articles/2505/15/news047.jpg コンビニコーヒー「Sください」と言ったのに…… “店員のミス”を指摘もまさかの赤っ恥に「これは絶対に間違える」「私もやった」
  3. /nl/articles/2505/13/news104.jpg 「娘の目が大きいのは赤ちゃんだから」と思っていたママ、成長すると…… 驚きの姿に「ディズニープリンセスだ」【海外】
  4. /nl/articles/2505/15/news034.jpg ショウガを土に埋めて水やりすると……「すごすぎる!!」 想像もつかなかった、とんでもない状態に37万再生
  5. /nl/articles/2505/13/news195.jpg ママ「保育料の口座にお金入れて」→よく見ると……  パパ絶叫のやり取りに「スゴー!」「振り込め詐欺かとww」
  6. /nl/articles/2505/15/news024.jpg 高校生息子にリクエストされたお弁当を作ったら…… 驚きの出来上がりに「えっこれ全部息子さんの分?」「うらやましい」 話題になった投稿者に聞いた
  7. /nl/articles/2505/13/news015.jpg ジブリパークで「シータだ、かわいい!」と言われまくった9歳娘→思わず納得の見た目に「久々ときめいた」「完璧」
  8. /nl/articles/2505/15/news144.jpg 7歳だった“乃木坂46ファン”が7年後……“白石麻衣とのエモすぎる会話”に「すごい話だ……」「受け継がれるアイドル」と感動広がる
  9. /nl/articles/2505/13/news058.jpg 猫の“今にも抜けそうな毛束”を引っ張ったら……「思ってた抜け方と違う」 420万再生の光景に「ふぉぉぉ!」「マジで全然違った」
  10. /nl/articles/2505/14/news015.jpg スーパーで買ったアサリの殻を開けたら…… もぞもぞ動く“寄生者”が「初めて見た」と話題 あれから生き物はどうなった?
先週の総合アクセスTOP10
  1. 急性骨髄性白血病で闘病中だったVTuber、死去 「復帰を目指して闘病」 専門学校の講師としても活動
  2. 万博の“着物ショー”に天皇陛下だけ許される「装束」登場で物議…… 「深くお詫び」主催者謝罪
  3. 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」 投稿者に話を聞いた
  4. 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/8)−(1/8)」を計算せよ!【算数クイズ】
  5. 「女の子みたいな顔だね」と言われ続けた男の子、20歳になったら→「神がかってる」姿に驚がく 「人体の不思議」「オーラが凄い」
  6. 使わなくなったカラーボックス→“ずぼらシンママ”が簡単DIYしたら…… 天才的な仕上がりに「かしこーい!!」「これ作ってみよう」
  7. クリスマスに出会ったギャルとギャル男が21年後…… 誰も予想できない現在に「素直に凄い」「人に歴史あり」と称賛の声
  8. カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収
  9. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「待ってました!」 人気作の登場に混乱の懸念も「すぐ売り切れそう」「初週ヤバいぞ」
  10. お隣さんから丸見えの土地→巨大ウッドフェンスを7日かけてDIYしたら…… 雰囲気ガラリで「すごい大作ですね」「ワクワクした」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  2. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  3. 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  4. 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  5. 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
  6. 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
  7. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  8. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  9. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  10. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」