日本にあるのは30カ所ほど ダムに付いた“の”の字型の水路「ループ魚道」を追い続ける人に魅力を聞いた(1/2 ページ)

見ていると引き込まれる不思議な構造。

» 2022年08月31日 20時30分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 全国各地のダムや堤防の脇に設けられていることがある、珍しいらせん状の水路――これを「ループ魚道」と呼んで追い続けている人の活動が興味深いと注目を集めています。水路が「“の”の字」を描いていたり、塔のように積み上がっていたり、全国で撮影された不思議な風景が見ていて引き込まれる……。

 そもそも魚道とは、ダムや堤防など魚の遡行(そこう)が妨げられる場所において、魚の進行を助けるため水路状に設けられる工作物。なかにはスペースなどの都合から、部品をらせん状に積み上げて作られるケースがあります。

 それを「ループ魚道」と呼び、愛好しているのがラス&ロード(@RasandRoad)さん。趣味のツーリングで全国を巡り、各地で撮った珍しい景色を、ブログ「Ras and Road」に記録しています。

 特に好きな風景は、ループ状の橋やトンネル、円形の歩道橋やラウンドアバウト(環状交差点)などで、特設ページ「のの字な道」を設けて特集するほど。ループ魚道もその一環で追い続けており、これまで25件を訪ねて記録しています

 ループ魚道の多くは塔の形ですが、土地の事情により、水路が階段状であったり、ループ部分が地下に設けられていたりといったケースも。周囲の美しい風景も相まって、どれも目を引きつける魅力があります。

 編集部はラス&ロードさんを取材し、ループ魚道の魅力などについて話を聞きました。

―― ループ魚道に出会ったきっかけを教えてください

ラス&ロード 九州にバイクでツーリングに出かけ、林道の入口を確認したとき、怪しい建造物が目に留まりました。戦時中の高射砲塔が保存されているのかと思いましたが、近寄ったところ魚道であることに驚きました。思い返すと、ほかの土地でつづら折りのような魚道は見たことがあったので、ループの魚道があってもおかしくないと妙に納得したものです。

 そして、もともとループ橋には深く興味を持っていて、全国のループ橋やループトンネルを巡っておりましたので、その水路版ということでコレクションに加えることにしたのです。

―― ループ魚道は全国にどれほどあるのでしょうか

ラス&ロード その九州のループ魚道を見ていたとき、地元のかたと会話する機会があり、全国に5カ所あると聞いたのですが、帰宅後に詳細を調べてみるともっとたくさんあることが判明しまして。さまざまな情報源をたどって設置場所の机上調査を行い、国内に30カ所以上あると確認できました。

 確認できている33カ所のうち、現在までに25カ所訪問しましたが、残り8カ所中、北海道の林道沿いにある6カ所はクマの生息地域であったり、イタドリが背丈以上に茂っていたりとアクセスが難しく、計画を慎重に考えているところです。残り2カ所は長野県と岐阜県にあって、こちらは落葉していて写真を撮りやすい春先に行きたいと考えています。

―― ループ魚道の魅力とは?

ラス&ロード なんと言ってもレアな構造でしょう。ただ、ループ魚道は外観こそ興味を引く形状ながら、機能的にはいまひとつだったようで、2000年ごろを境に新規設置はありません。底に積もる砂泥や流木の除去など、常時メンテナンスが必要な構造であるにもかかわらず、開口部が小さくて人の手を入れにくく、放置された結果魚が遡上(そじょう)しなくなるという悪循環を抱えているのです。

 こうした問題から、ループ魚道の撤去が話題になっている地域があると聞き、なくなる前に記録に残しておきたいと思うようになりました。魚道の多くは砂防堰堤や治山ダムに付帯設置されます。砂防堰堤などは短期的には土石流など土砂災害の防止に効果がありますが、中長期的には砂浜がやせたり、逆に河川を削る作用があったりと、バランスがとても難しい事業のようです。

画像提供:ラス&ロード(@RasandRoad)さん

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」