無料なのに難関校に続々合格――足立区が運営する受験対策塾が話題 担当者に“誕生の背景”を聞いた(3/4 ページ)
“信頼と期待”を背負って たくましく成長する子どもたち
はばたき塾は2012年、複数の企業から事業提案を受けて委託先を決定するプロポーザル(企画競争入札)により、早稲田アカデミーを受託業者として始動。その2年後の2014年のプロポーザルではエデュケーショナルネットワーク(Z会グループ)が選定され、2015年から現在まで同社が受託事業者となっている。
「はばたき塾は受験生のみが対象ですから、講師の皆さんもかなり熱量を込めて指導されています。民間の塾ですと1年生の頃から通ったり、受験の年には週に2〜3回通ったりしますが、はばたきは“中3の1年間”と助走期間もなく、その上授業は週1回です。相当な気合が必要になってきます」
それほど高いモチベ―ションが求められるということは、きっとクラスも熱気に満ちているのだろう。そう思い、田巻さんに授業の雰囲気について尋ねると、「時々講義の様子を見に行くと、淡々と勉強に取り組んでいるように見えるんですよ」と意外な回答が返ってきた。しかし、はばたき塾の受講生アンケートを読むと、そこには熱い思いがずらりと書き連ねられている。
「講師の先生から『夏休みなんか、受験生はみんな10時間とか勉強やってるよね。それが普通なんだよね』みたいなことを言われて、最初は多分『え……』とか感じていると思うんです。でも、後でアンケートを書かせると、『やっぱりつらかったけど、先生の言う通り頑張ってよかった』とか『後輩にもこの仕組みは絶対に残してほしい』とか、そういうことを書いてくれるんですよね」
はばたき塾は2012年の開校から、今年で11年目となる。「卒業していった生徒の中には、面白い子がいるんですよ」と言って田巻さんは続けた。
「大学生になったから、自分もはばたきの講師をやりたいといって、エデュケーショナルネットワークさんの門をたたいた子がいるんです。今では運営スタッフとして、はばたき塾を頼もしく支えてくれています」
かつて“信頼と期待”を背負って羽ばたいていった生徒が、数年の時を経て運営する側となって戻ってくる。こうした巡り合わせが、新たな関係を生み、未来を紡いでいく。はばたき塾は、そんな成長の循環を生みながら、生徒たちの学びを支援し続けているのである。
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