松岡禎丞×戸松遥が語る、『SAO』への感謝 「劇場版 SAO -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」インタビュー(1/2 ページ)
2022年でテレビアニメの放送開始から10周年。
「ソードアート・オンライン」シリーズの最新作「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」が2022年10月22日に上映されます。当初は9月10日公開予定となっていましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による制作遅延が影響し、公開日を延期していました。
同作は、川原礫さんが描く小説『ソードアート・オンライン』(以下、SAO)シリーズの派生作品である『ソードアート・オンライン プログレッシブ』(通称、SAOP)を原作とした物語。「浮遊城アインクラッド」の攻略に焦点を当てた、テレビシリーズ第1期の前日譚となるストーリーです。
前作となる2021年公開の「星なき夜のアリア」は、アスナの視点から《アインクラッド》編を描くリブート・シリーズの第1弾として公開され、公開から2日間で動員数22万5221人、興行収入3億4934万215円を記録。親友のアスナを「SAO」の世界に誘うことになるオリジナルキャラクターの少女・ミトも登場し、原作からさらに深みを持たせた物語が展開されました。
第2弾となる今作は、アインクラッド第5層が舞台。《SAO》の魅力の一つであるド派手なアクションはもちろん、ダンジョンや巨大迷路の攻略、ギャグに恋愛、そして井澤詩織さん演じる情報屋・アルゴの登場など、前作のシリアスな展開とは打って変わった、良い意味で《SAO》らしい内容になっているようです。
ねとらぼエンタでは、キリト役の松岡禎丞さんとアスナ役の戸松遥さんにインタビュー。気になる物語の情報を二人の口から語ってもらった他、2022年でアニメ放送開始から10周年を迎えた《SAO》に関わる中で経験したうれしいエピソードについても話してもらいました。
―― 前作から1年ぶりの新作です。「星なき夜のアリア」は、キリトとアスナがまだまだ他人同士だったころの物語であり、アスナとミトの見る人の神経がすり減らされるようなやりとりもあって、常に緊張感が漂う作品となっていました。お二人から見て、今作の「冥き夕闇のスケルツォ」はどんな物語になっていますか?
松岡 前作と違って和気あいあいとした描写が多く、これまで通りの雰囲気に戻ってきたという感じがしました。やっぱり(河野亜矢子)監督は、起承転結の作り方がとても上手だなと感じます。前作の「星なき夜のアリア」は重い話ばかりだったのですが、今回はそれだけではなくて、喜怒哀楽という感情の流れがすごくうまく描かれています。映画を見た方に「良かった」と思っていただけるような内容になっていると思います。
戸松 「星なき夜のアリア」よりも“ひりつき度”が、だいぶマイルドになってよかったなと(笑)。「星なき夜のアリア」は《SAO》の物語の原点から始まる話で、アスナも初心者からのスタートでした。でも「冥き夕闇のスケルツォ」は、皆さんが知っているアスナにかなり近い状態から始まるので、そういう意味では、なじみのある《SAO》の空気感なんじゃないかと思います。
まだまだ第5層なので、アスナとキリトの恋に進展はないんですけど、他人同士という感じだった前回に比べると、今回はもう少し夫婦(めおと)感の片鱗(へんりん)が見られる会話もあったりします。登場人物もアスナ、キリト、ミトのほぼ3人だったのが、敵も含めて関わる人が増えてくるので、そういう意味でも世界観が広がっているんじゃないかな。
―― 前作では、ミトという映画オリジナルキャラクターが加わったことで話が広がりましたね。
松岡 僕は前作でミトと会話をしていないので言えることはあまりないのですが、今作のあるシーンでは、ミトとキリトが少し接触するシーンがあります。前作ではアスナを起点にして、ミトはこういうことを思っていたのではないかということが臆測で語られていたんですけど、今作ではミトとアスナの関係性が垣間見られて、その上でキリトがミトに物申すみたいなシーンもあったりします。もうちょっと物の言い方を変えられたら良かったのにと思ったりしますけど、それが当時のキリトですから仕方ないですね。
戸松 アスナにとってミトは、唯一もともと友達で後からプレイヤーとして出会う特別な存在。キリトですら最初はただのプレイヤー同士ですからね。前作のアスナとミトのやりとりは私も胸が痛かったですけど、どちらの気持ちも分かるんです。たぶん出会ったのがミトだったからこそ、アスナがあれだけ強くなれた、そう感じられるお話になっていたと思います。今作の収録では、2人の特別な関係性をあらためて感じましたし、やっと腑に落ちた感じがしました。
―― 前作は約10年ぶりに《アインクラッド》編のキリトやアスナを演じるということで、かなりの苦労があったことと思います。今作の収録はいかがでしたか?
松岡 声優あるあるかもしれないのですが、どんなアニメも一番緊張するのは第1話なんですよね。なぜかというと、オーディションをやっていたとしても、実際にみんなで掛け合いをして、すり合わせていかないと制作陣が意図するバランスにならないから。
いかに10年間演じていようが、すり合わせたときにどうなるか分からないというのが「星なき夜のアリア」でした。一方、今回の「冥き夕闇のスケルツォ」は地続き的にやらせていただいているという意味で考えたら、そのまま演じられたのであまり苦労しませんでした。
戸松 ありがたいことに「星なき夜のアリア」の取材が長い期間続いたので、あまり間を開けずに「冥き夕闇のスケルツォ」のアフレコに入れました。そのおかげで、私も熱量がずっと続いた状態のまま、しかも続きの物語ということもあり、そのままアフレコに臨めたのが本当にありがたかったです。
それと、アスナも「星なき夜のアリア」のときは感情の浮き沈みがすごかったんですけど、今回は情緒がすごく安定しているので、そういう意味では安心して見られる、よく知ってる《SAO》の世界観になっていると思います。もちろん、だからといって何のドラマもないわけじゃなく、要所要所でピンチになったりとか、特にアスナがはぐれてしまったことで危険な目に遭ったりだとか、最後の最後まで気が抜けない展開になっています。でも、前回よりは孤独じゃないので。
キリトとも、まだ恋愛関係ではないけど「この人だったらちょっと信頼できるかもしれない」と感じていたり。あと、アルゴが登場することで、それぞれがそれぞれの役割を全うしていて、戦場で共闘したりとか、ボス戦もみんなでチームを組んだりとか、そういう孤独じゃない感じが今回はあります。
―― 前回とはだいぶ雰囲気が違う物語になっているんですね。
戸松 アルゴと一緒にお風呂に入って会話するシーンもありますし、キリトと一緒に遺物探しに出掛けたりと、ちょっとしたクエストみたいなものも描かれています。そういうシーンを見ると、アスナも少しは余裕が出てきたのかなと感じますね。
―― 《SAO》は2022年でテレビアニメの放送開始から10周年を迎えました。長年にわたり1人のキャラクターを演じ続けるのは声優冥利に尽きることだと思いますが、《SAO》に関わる中で経験したうれしかったエピソードを教えてください。
戸松 10年間も同じ役を演じられる、こんなにありがたいことはなかなかないと思います。同じ役、同じ作品に10年間も関わり続けられているということが、自分の役者人生の中で本当に誇れることです。それが続けられたのは、本当にたくさんの方のお力のおかげだし、何より《SAO》を好きでいてくださる人がたくさんいらっしゃるからなので、ありがとうございますという感謝の気持ちでいっぱいです。
海外での人気もすごくて、海外の方とお仕事する機会があると、いつも《SAO》を挙げてくださるんです。アスナを見て私のことを知ったという人や、放送開始時に小学生だった人から「SAOで育ちました」と言っていただいたり。やっぱり10年の年月ってすごいと感じます。
松岡 《SAO》に関わり始めたころは、現場もまだ不慣れですし、どう立ち回ったらいいか分からなかったんですけど、《SAO》を通して制作の裏側を知れたことが一番大きかったです。
スタッフさんが裏で何をやっているのか、どれだけ多くの人にどれだけ支えていただいているのかというのが、目で見て耳で聞いて、すごく実感できたんです。
第1期のときには、第1話をA-1 Picturesさんの会社で皆で見たこともあります。そこで思ったことを全部聞いてみたら、僕の不安を払拭(ふっしょく)してくれる答えが返ってきて。今でもそのことが声優としての原動力の礎になっているので、いろんな意味で自分を役者として押し上げていただいた作品だと思っています。
掲載写真まとめ
(C)2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
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