氷菓でおなじみのフタバ食品は、なぜ「駅弁」を作っていたのか?黒磯「九尾すし」(950円)(1/3 ページ)

氷菓「サクレ レモン」でおなじみフタバ食品は「駅弁」「駅そば」も手掛けていた ってへぇぇ〜!

» 2022年12月10日 12時00分 公開
[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送

 「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介。

黒磯「九尾すし」(950円) 黒磯「九尾すし」(950円)
E5系新幹線電車「はやぶさ」、東北新幹線・那須塩原〜新白河間 フタバ食品株式会社本社(栃木県宇都宮市) 見当邦雄初代社長の像とともにフタバ食品・月江さん 黒磯駅 黒磯駅のE231系直流電車と719系交流電車(2002年撮影) 九尾すし 九尾すし 九尾すし E531系電車・普通列車、東北本線・高久〜黒田原間

 鉄道開業150年に合わせ、さまざまな角度から日本の鉄道文化が掘り下げられています。その草創期から鉄道文化の一翼を担ってきた「駅弁」ですが、近年は昔からの駅弁が、どんどん数を減らしています。そこで今回は鉄道開業150年に合わせて「あの名物駅弁はいま」と題し、懐かしの駅弁にまつわるエピソードを、関係者の方に伺っていきます。第1弾は、栃木県・黒磯駅の「九尾すし」「九尾釜めし」に注目します。

E5系新幹線電車「はやぶさ」、東北新幹線・那須塩原〜新白河間 E5系新幹線電車「はやぶさ」、東北新幹線・那須塩原〜新白河間

鉄道開業150年・あの名物駅弁はいま(第1弾・黒磯駅「フタバ食品」前編)

 東北新幹線「はやぶさ」が、関東から東北へ向かって時速320kmで駆け抜けていきます。いま、東京〜仙台間は約1時間半で結ばれていますが、新幹線開業前の在来線特急は、上野〜仙台間を4時間15分で運行していました。また、急行列車や客車列車の多くは、電化方式が変わる栃木県北部の東北本線黒磯駅で長時間停車。それゆえ黒磯駅では駅弁文化が大きく栄えました。

フタバ食品株式会社本社(栃木県宇都宮市) フタバ食品株式会社本社(栃木県宇都宮市)

 黒磯駅・那須塩原駅で、平成17(2005)年まで駅弁を手掛けていたのが、栃木県宇都宮市に本社を置くフタバ食品株式会社です。フタバ食品といえば、おなじみの「サクレ レモン」に代表される氷菓(アイスクリーム)の会社というイメージが強いもの。フタバ食品はなぜ、駅弁をはじめとした鉄道構内営業を手掛けていたのでしょうか。今回は、フタバ食品フードサービス部の月江誠(つきえ・まこと)さんにお話を伺いました。

見当邦雄初代社長の像とともにフタバ食品・月江さん 見当邦雄初代社長の像とともにフタバ食品・月江さん

戦時中の鉄道省とのつながりが生んだ、鉄道構内営業

フタバ食品と聞くと、私も小さいころからたくさんアイス(氷菓)をいただいてきましたが、会社設立の経緯を教えていただけますか?

月江:弊社は昭和20(1945)年設立の栃木食糧品工業(栃食)と双葉食品興業の合併でできた会社です。鉄道構内営業は、栃食のほうと関係がありました。創業者の父は、大正13(1924)年から食料品をはじめとしたさまざまな事業を手掛けていました。そのなかで戦時中、陸軍や中島飛行機、鉄道(国鉄)物資部の指定工場として、食料品の製造・販売をしていたんです。戦後はそのつながりを活かして、栃食を設立するに至りました。

当時はどんなものを作っていましたか?

月江:栃食では最初、地元で獲れる小麦を使ったパン作りから入り、戦前からのご縁で鉄道弘済会食品工場としてアイスキャンデーを製造する冷菓工場を設置したことが、いまの看板商品「サクレ レモン」のような氷菓を作るきっかけとなりました。アイスキャンデーは、宇都宮駅に納めた他、白河、栃木、高崎にも工場を作って各駅の売店にも納めていました。昭和26(1951)年には、乳製品も扱うことができる工場となりました。

黒磯駅 黒磯駅

駅そばでの実績が認められて、黒磯駅弁参入!

「駅弁」に携わるようになったきっかけを教えてください。

月江:その前史として「駅そば」の存在があります。昭和29(1954)年1月、鉄道弘済会の高崎営業所が「駅そば」を営業するに当たって、粉の工場を持っていた弊社で、そばの納入を行うことになりました。これは戦後、宇都宮周辺が高崎鉄道管理局の管内となったことが影響しています。この実績が認められて昭和32(1957)年9月15日、高鉄局の認可を受けて、東北本線・黒磯駅向けの駅弁を製造・販売するようになりました。

栃食は宇都宮に拠点を置いていたのに、なぜ黒磯駅だったんですか?

月江:もともと、黒磯駅では、駅前の「たばこ屋旅館」さんが駅弁を手掛けていました。しかし、廃業されてしまったため、高崎鉄道管理局から駅そばで繋がりのあった弊社にお声がけいただいて、地元の名士であった郄木弁当さん(現在は営業終了)と一緒に黒磯駅弁に参入することになりました。2社となった背景は、当時の衛生状態を鑑みて、駅弁(食)の安全のため、バックアップ体制を取る必要があったのではないかと思われます。

黒磯駅のE231系直流電車と719系交流電車(2002年撮影) 黒磯駅のE231系直流電車と719系交流電車(2002年撮影)

黒磯駅が「直流・交流」切り替えの駅となり、駅弁屋さんは大繁盛!

当時の黒磯は、駅弁がよく売れたでしょうね?

月江:東北本線の電化が進んで、黒磯駅は直流電化と交流電化の境界駅となりました。このため、(当時主流だった)客車列車を牽引する機関車の交換が発生することになって、列車は長く停まるようになり、弊社も24時間営業、立ち売りで駅弁を販売していたと言います。20年ほど前までは社内にも立ち売り経験者がおりました。昭和36(1961)年には、黒磯駅前に栃食九尾センターをオープンさせて、生産体制を拡充させました。

最初の駅弁は?

月江:「九尾すし」ですね。弊社社長が那須の九尾伝説にあやかってネーミングをしたと言います。九尾の狐ですから寿司は必然的に「いなり寿司」となりました。私も小さいころに、「九尾すし」をいただいた記憶があって、(半分の)曲げわっぱのような扇形の経木の折に入っていました。真ん中は狐の鼻に見える押寿司でした。初日の売り上げも記録に残っていて、69個を製造し66個が売れたそうです。他に幕の内や味噌汁を販売していました。

九尾すし 九尾すし

 那須連山と九尾の狐が描かれた「九尾すし」(950円)の掛け紙。「九尾の狐」伝説は、平安時代末期に九尾の狐が美女に化け、鳥羽上皇を殺害しようとしたところ、陰陽師に見破られ、退治されて石(殺生石)になったと言います。江戸時代に、俳人・松尾芭蕉も奥の細道の旅の途中で立ち寄ったと云われ、掛け紙には、弟子の麻布が詠んだとされる「飛ぶものは 雲ばかりなり 石の上」の句が記されています。

       1|2|3 次のページへ

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/16/news082.jpg 「なんだろ」 大谷翔平の背中に“違和感”覚える人続出 → 明かされた“納得の正体”に「そういう事だったんか」
  2. /nl/articles/2503/16/news031.jpg 「楽園???」 サイゼリヤで大豪遊 → “会計1人2000円以下”で収まった食事内容に思わず仰天 「庶民の味方」「ほぼ無料」
  3. /nl/articles/2503/14/news019.jpg ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  4. /nl/articles/2503/16/news052.jpg 「もっと早く知りたかった」 ユニクロ“3990円パンツ”が売り切れ続出の大反響 「一生これで良い」「最高の着心地」
  5. /nl/articles/2503/16/news080.jpg 夫は箱根駅伝、妻は大学女子駅伝優勝の“最強ランナー夫婦” 引っ越しの手伝いをきっかけに急接近→現在は夫婦でランニングスクールを運営
  6. /nl/articles/2503/08/news018.jpg 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  7. /nl/articles/2503/11/news017.jpg 着古したマフラーとセーター、切らずに手縫いするだけで…… 春も大活躍のリメイクに「アイデアに脱帽」「素晴らしい」
  8. /nl/articles/2503/11/news009.jpg 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  9. /nl/articles/2503/15/news044.jpg コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  10. /nl/articles/2503/15/news057.jpg 「足の疲れ具合が全然違います」 ディズニー行くときおすすめの“神アイテム”が話題沸騰 「試してみたい」と2390万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  3. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  4. 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  5. そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  6. 「ウソやろ」 松屋の“530円丼”、衝撃的なビジュアルにネット騒然 「コレで良いんだよ丼」「開き直り感がすごい」
  7. ダイソーのセルフレジが「身に覚えのない商品」を認識→“まさかの正体”に大仰天 「そんなことあるんですね」
  8. 余ってるクリアファイル、半分折ってカットするだけで…… 目からウロコな便利グッズに「天才すぎる!」「素晴らしいアイデア」
  9. 「マジで天才」 無印良品から新発売の“350円文房具”に絶賛の声相次ぐ 「便利すぎる!」「これはいい」
  10. 「スト6」の公式世界大会で福島県のチームに所属する「翔」が優勝 賞金100万ドル獲得
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に