小名浜美食ホテルは、なぜ「駅弁屋さん」になったのか?:いわき「カジキソースカツ丼」(1000円)(1/3 ページ)
駅弁は「ご当地感が全て」の存在。しかし福島・いわきには、ある理由でオリジナルの駅弁がない「空白の10年」がありました。そこで……。
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介。
全国の駅弁屋さんの多くは国鉄時代、さらには鉄道草創期から営業する百年企業です。そのなかにあって最も“若い”と言っても過言ではない駅弁屋さんが、福島県の常磐線で、平成27(2015)年から、いわき駅の駅弁を手掛けている「小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)」です。どうして、小名浜美食ホテルは、創業10年弱で、駅弁参入のきっかけを掴んだのでしょうか?
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第38弾・小名浜美食ホテル編(第4回/全6回)
いわき駅を発車した品川行の特急「ひたち」が、いわき湯本の温泉街に入ってきました。湯本駅はいわき湯本温泉の玄関口。「ひたち」の発着ホームには、温泉旅を楽しもうと、大きな荷物を持った旅行者の姿が目立ちます。上野〜湯本間は、2時間ちょっとの旅。駅弁をいただいたり、静かに軽く一杯やりつつ移動するには、ちょうどいい所要時間です。
いわき湯本温泉は、奈良時代の開湯とも云われており、1300年以上の歴史を誇ります。それぞれの温泉宿や足湯などに注がれているお湯の源泉は、58.0℃、ph8.0、成分総計1844mg/kgの含硫黄−ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉。駅から温泉街をそぞろ歩けば、フワッと硫黄系の湯の香が漂い、心癒されます。温泉街の食事処が充実しているので、食事が料金に含まれないB&Bタイプの宿でも、お得に温泉旅を満喫できます。
湯本駅のNEWDAYSでも販売され、温泉帰りの皆さんの「旅のお供」となっているのが、小名浜美食ホテル(株式会社アクアマリンパークウェアハウス)の駅弁です。鈴木泰弘社長は、「小名浜港の再開発と東日本大震災、この2つがなかったら、駅弁屋にはなっていない」と話します。百年企業がひしめく駅弁の業界に、創業10年にも満たない企業が、参入した背景には何があったのでしょうか。
震災復興で生まれたいわき新名物「カジキメンチ」が導いた、駅弁への道!
―小名浜港で「小名浜美食ホテル」をやっていた「株式会社アクアマリンパークウェアハウス」は、なぜ「駅弁屋さん」になったんですか?
鈴木:東日本大震災で被災してから、いわき中央卸売市場や広告代理店と一緒に「いわきの新名物」を作ることになりました。いわきで待っていても仕方ないので、外へ打って出て売れる名物を通じて地域とつなごうというわけです。いわき市では長年「サンシャインいわきビルフィッシュトーナメント」というカジキ釣りの大会が行われていました。これに注目して大会スタッフも加わり、「カジキメンチ」を開発して、弊社が物産展へ売りに行ったんです。
―そこから「駅弁」には、どうつながっていったんですか?
鈴木:この取り組みにJR東日本水戸支社・いわき運輸区の皆さんが注目して下さいました。いわき駅では駅前の住吉屋さんが駅弁を製造していたのですが、残念ながら、平成17(2005)年に廃業されてしまいました。その後、約10年にわたっていわき駅・オリジナルの駅弁がない状況が続いていたんです。そこで、いわき運輸区の皆さんが何とか駅弁を復活させたいと、弊社に「駅弁を作りませんか?」と、話を持って来て下さったんです。
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