ドイツで伸びる日本のマンガ売り上げ 書店大手がマンガ専門店、マンガ風似顔絵イベントには長蛇の列が

» 2023年03月04日 11時30分 公開
[Katahoねとらぼ]

 ドイツのショッピングモールでこのほど、マンガ風の似顔絵を描いてもらえるイベントが開催され好評を博していました。いわゆる「巣ごもり需要」で海外でも日本のマンガが売上を伸ばしているという報道は、何度か目にしたことがあるのではないでしょうか。一方で、その後の展開はあまり知られていないのかもしれません。

ショッピングモール内に設置された似顔絵ブース

 筆者が訪れたのは、2月18日にフランクフルトの隣町オッフェンバッハのショッピングモール「KOMM」で開催されたイベントです。モール内には、ドイツの書店チェーン大手のThalia(タリア)の店舗があり、似顔絵イベントはどうやらタリアが主催しているようでした。しかも、料金はなんと無料ということもあり、開始前から長蛇の列ができていました。

来場者は女性と子ども連れが多かったです

 当日、ドイツ初の女性マンガ家として知られるクリスティーナ・プラカさんやYaya-Chanさんなど5人のマンガ家・イラストレーターが参加しました。プラカさんは筆者も過去にインタビュー(関連記事)したことがありますが、自身が開設したマンガ教室の公式アカウントで似顔絵の作成風景を公開しています。

タリアのマンガ専門店の様子

 会場の向かいにはタリアの店舗があり、隣には2022年にオープンしたマンガ専門店がありました。店内は、あらためて見るとこれだけのマンガ作品がドイツで出版されているのかと驚くほどの規模です。大まかなジャンルごとに分かれて陳列されており、店員の「推し」ポイントが細かく書かれたおすすめコーナーや、プラカさんの原稿が展示されていたりと工夫を凝らした店内でした。

「ファンタジー」コーナー。現地出版社によるドイツ語版です
店員による「推し」ポイントが記入されたポップ
クリスティーナ・プラカさんの原稿展示コーナー
ライトノベル『転生したらスライムだった件』もドイツ語に翻訳されています
縦型マンガWebtoonを紙で出版するドイツの出版社Papertoonsのコーナー

マンガの売上が「爆発的に」増加

 今回の似顔絵イベントを主催したタリア、オッフェンバッハ店のケースティン・フェーディッシュさんによると、タリアでは近年、マンガの売上が「爆発的に」伸びています。部分的には2倍、3倍に跳ね上がりました。こうした事情を受けて2022年7月に誕生したのが上記のマンガ専門店です。年末までのポップアップ店として開店しましたが、好調につき現在期間を延長しており、常設化する考えとのこと。

 こうした中、タリアでは書店としてマンガの販売以外でも何か提供したいと思い、イベントを計画しました。似顔絵イベントだけでなく、2022年はマンガのワークショップも実施しました。

 「イベントはショッピングモールからの支援もあり、来場者は無料で絵を描いてもらえますが、アーティストには謝礼が支払われています。このようなイベントは2022年も実施しましたが、今年は他の町でも予定しています。今後もさまざまな可能性を試してみたいと考えています」(フェーディッシュさん)

マンガ販売からマンガ文化の普及へ

 ショッピングモールが協力し地元のマンガ家やイラストレーターに参加してもらい、地域のマンガ読者が集まる会場というのは、言ってみればマンガ文化を広める「場」とでも呼べるのかもしれません。

 オッフェンバッハでの取り組みはまだテスト段階ですが、タリアはドイツを中心に展開する書店チェーンでドイツだけでも344店舗存在(記事執筆時点)します。もし、チェーン全体で実施されれば、大きな規模になる可能性があります。

 また、アーティストに謝礼がきちんと支払われる仕組みに、今後も継続しそうな持続性を感じました。こういった取り組みが今後拡大するのか、気になるところです。

会場となったショッピングモール「KOMM」の外観
エントランスに設置された看板。絵はYaya-Chanさんによるもの
ショッピングモールのすぐ近で見かけた木組みの家。ドイツらしさを感じさせます

著者紹介

Kataho:ドイツ、フランクフルト在住のアニメ・ボカロ好き。日本文化を通じたドイツと日本の交流に興味があり、ドイツ各地の日本イベントに参加(Twitter:@sakaikataho


オススメ記事

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2504/25/news022.jpg 足の悪い母のため、庭に作った小道→100均アイテムで雰囲気ガラリ 天才アイデアに「すごい!」「真似します」
  2. /nl/articles/2504/26/news046.jpg 身長が足りず、東京ディズニーシーのアトラクションに乗れなかった少女→17年後……「やばい泣いちゃう」キャストの“神対応”に反響
  3. /nl/articles/2504/26/news011.jpg 余りがちな“紙袋”→2カ所切り込みを入れるだけで…… 「天才」「めっちゃ良い!」目からウロコの活用法が140万再生【海外】
  4. /nl/articles/2504/25/news168.jpg 「こんな事態記憶にない」 小柳ルミ子、低調だった“NHK生歌唱”の原因とは…… 舞台裏で信じがたい“声帯トラブル”に「悔しくって悔しくって」「言い訳も出来ず」
  5. /nl/articles/2504/17/news162.jpg 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  6. /nl/articles/2504/26/news017.jpg 雨の中、ガクガク震えて泣く生後2週間の子猫→3年後、“驚きの姿”に「何この格好」「え、人ですよね?w」
  7. /nl/articles/2504/26/news040.jpg テレビで“ミスド特集”を見た妻、ドーナツを買ってくると…… 夫も驚きの“まさかの光景”に「すごい」「そんなことあるんだw」
  8. /nl/articles/2504/26/news054.jpg 「絶対にこれがいい!」 わが子が“即決”した裁縫セットにママは「本当に……?」 ひときわ異彩を放つデザインに反響続々
  9. /nl/articles/2504/25/news018.jpg “恋”をした46歳男性→思い切ってイメチェンしたら…… 「これが俺?」まさかの仕上がりに仰天「美容師さん最強」
  10. /nl/articles/2504/24/news021.jpg ママ「昔は可愛かった」→娘は疑っていたが…… 1171万再生された当時の姿に「女優レベルやん」「元モデルは強すぎる」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  2. 【大阪万博】皇后さま、帽子から靴までブルーとピンク 天皇陛下のネクタイと“連日おそろいコーデ”
  3. 飲み終えた“コーヒーかす”→捨てずに石と混ぜると、1カ月後…… 「感動」目からウロコの裏ワザに「やってみよう」
  4. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  5. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  6. 「ウソだ…」「言葉が出ない」 幼少期から絵を描き続けた少年→15年後…… 大人になって描いた絵が100万再生【海外】
  7. 湘南の砂浜に打ちあがった“超危険生物”を飼育したら…… 貴重な姿に「初めて見ました」「かっこいい」と大反響→2年後の現在について話を聞いた
  8. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」話題になった飼い主に聞いた
  9. 万博「ミャクミャク」記念500円硬貨、金融機関での「品切れ」&高額転売相次ぐ…… 5倍以上の金額で出品される事態に
  10. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「争奪戦すごそう」 品切れや転売の懸念も「1個でいいから欲しい」「たくさん作って」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  3. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  4. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  5. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  6. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  7. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  8. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  9. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  10. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】