「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は子どもも見られるマッドマックスだった(1/3 ページ)
ピーチ姫が強いことにも必然性がある。
「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が4月28日より公開されている。本作は言わずと知れたゲームキャラクター・マリオを主人公に迎えたアニメーション映画。全世界での興行収入が1000億円の大台を突破するなど、すでに歴史的な超大ヒットを遂げている。
結論を申し上げれば、本作はめちゃくちゃ面白い! このゴールデンウィークに、老若男女が楽しめる映画として大プッシュでおすすめできる。何しろ、ほぼノンストップで見せ場が展開するのでまったく退屈する隙がない。上映時間も94分とタイトなので、長い映画だとグズってしまう小さなお子さんをお持ちの方でも安心だろう。
ゲームを遊ばない、マリオのことをよく知らないという方でも問題なく、ファンであればさらにアガるサプライズや小ネタも仕込まれている。さらに、良い意味でのクレイジーでハイテンションな作風もまた見どころとなっていた。ここからは、大きなネタバレは避けつつ内容に踏み込む形で、さらなる魅力について記していこう。
かわいいキャラの「新鮮な肉」発言から分かるクレイジーさ
この「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の最注目ポイントは、制作会社がイルミネーションであることだろう。「ミニオンズ(怪盗グルー)」「ペット」「シング」シリーズが有名で、ファミリー向けアニメ映画の大ヒット作を続々と送り出しているスタジオなのだ。
そのイルミネーションの作品ではスラップスティックなギャグが多い。というよりも殴られたり蹴られたりの暴力がコミカルに描かれたり、思わずギョッとしてしまうほど毒っ気の強いギャグもある。今回は予告編でマリオがドンキーコングにボッコボコにされて「うわぁ、これはむごい!」と言われたりすることから、その攻めたギャグの一端が分かるだろう。
さらなる衝撃は、「スーパーマリオギャラクシー」などに登場した星の形をしたキャラクター・ルマリー(日本版ゲームでの名前は「よろずやチコ」)の衝撃的な発言である。溶岩の上につるされた牢屋の中にいるルイージに対し、「おっ、新鮮な肉が来たね」「唯一の希望、それは死による解放さ」などと、虚無主義的な発言を繰り返すのである(※子どもも見る映画です)。
そして、軍団がぶつかり合って戦ったり、カートに乗って激しい攻防を繰り広げる様が大迫力。大量のキャラクターが一堂に会する画の情報量の多さ、カーチェイスのドラッギーなまでのトンデモぶり、イカれた連中がキャラクターの9割を占める様から強く連想したのは、あの「マッドマックス 怒りのデス・ロード」だった。
本作は「マリオmeetsマッドマックス」な内容と言っても過言ではなく、それこそディズニーやピクサーには絶対にできない、イルミネーションらしいアニメの魅力そのものだったのだ。よく考えたら、元のゲームもキノコを食べると巨大化したり、花を食べると火を放ったりする、まあまあおかしな発想があったので、このクレイジーさとの相性が良かったともいえる。
そのハイテンションぶりがアクセル全開すぎるのか、多少の無理が通れば道理がひっこむ、勢い任せの展開もあったような気もしたが、それも含めて超楽しかったので個人的には大いに許せる。米批評サービスのRotten Tomatoesでの「批評家の評価は割れているが、一般観客からは大絶賛」という評価のバランスも、なんだか納得なのである。
まさかの実写映画版へのリスペクト(?)
もはやマッドマックスぶりにびっくりする今回の映画だが、さらに驚いたことが序盤も序盤にある。何しろ、本作のあらすじは「ブルックリンで配管工をしているマリオとルイージの兄弟が、不思議な世界へ迷い込んでしまう」というもの。これが1993年の実写映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」の導入部ととてもよく似ていたのだ。
その「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」は批評的にも興行的にも大失敗作と呼ばれており、確かにグロめの世界観やヨッシーがただの恐竜にしか見えないなどの問題もあるものの、個人的にはワクワクするギミック満載の楽しい映画だったと記憶している。そちらを黒歴史にするどころかリスペクト(?)してくるとは、いったい誰が予想しただろうか。
そして、今回の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」ではマリオとルイージは配管工として新しく事業を始めたばかりかつ、初っぱなから大失敗をしてしまう。そんな人生がどん詰まりな状況から、弟と生き別れになってしまうも、再会をするための冒険に旅立ち成長をしていく、分かりやすく感情移入をさせてくれる物語にもなっているのだ。
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