半田健人「僕には『仮面ライダー555』を守る権利と義務がある」 新作撮影で監督に直談判、20周年記念インタビュー(1/2 ページ)
「(20周年記念作では)ファイズフォンはスマホになってますよ」
人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。
インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」
半田健人さんは2001年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ芸能界入り。2003年には平成仮面ライダーシリーズ第4作「仮面ライダー555(ファイズ)」の主人公・乾巧(いぬい たくみ)役に抜てきされ、撮影開始時18歳で史上最年少ライダー(当時)として話題になりました。
番組終了後は昭和歌謡への深い造詣を生かしてタレントとしても活動。現在はアーティスト、俳優として活動の場を広げながら放送20周年記念作品「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」(2024年公開予定)では乾巧役を再演します。
ねとらぼでは6月に誕生日を迎え、39歳となったばかりの半田さんにインタビュー。「パラダイス・リゲインド」だけでなく、20年を経て変化してきた代表作「仮面ライダー555」への思い、YouTubeで展開する謎多きオリジナルヒーロー番組「超絶戦士サプライザー」誕生秘話や人生観まで聞きました。
20周年、ようやく客観的な視点で見られるようになった 乾巧へ「いい男じゃないか」
―― 2023年2月からYouTubeで「仮面ライダー555」が配信されています。Twitterでは配信に合わせて思い出や裏話を投稿されていますが、今回見返してみて率直にいかがでしょうか?
半田健人(以下、半田) 新作映画撮影のタイミングと重なったこともあってか、自分の中で変化が起きて完全に客観的な視点で見られるようになりました。これまでも何度か見返したことはあったんですけど、懐かしむというか映像を見ながら当時の自分を振り返る見方になってしまってばかり。今回は「ああもう、このときの演技が……」ではなく一視聴者として楽しんでいます。だからたまに自分を見て思いますもん。「こいつかっこいいな」「いい男じゃないか」と(笑)。
―― その感覚は限られた人にしかないものですね。あらためてどんな感想を抱きましたか?
半田 新鮮。となったときに面白い。今までは懐かしかったものが面白いんですよ。先だって「ここ行ったなぁ」「この水落ちがつらかったなぁ」「ここでこういう目にあって嫌だったなぁ」と浮かんでいたのが視聴者目線で見てみたら、20年の長きにわたりファンの方が愛してくれるのも分からんではないなと感じますね。
―― 客観的に見ることで感情移入できるキャラクターも変わったのでしょうか?
半田 変わりました。今までは、自分しか見ていなかった。要するに思い出をたどってばかりだと自分主体になってしまうので、このキャラはやっぱり効いているなと感じたり、あとは他の皆さんの演技力だったり、例えばスマートブレインの村上社長役の村井(克行)さんって、当時まだ30歳過ぎだったんです(※現在53歳)。
―― 意外にお若かった。
半田 そう、35歳にもなっていない。だから村上社長は今の僕からしたら年下なわけで不思議な感覚です。でもすごく大人っぽいし、いまだに年上に見える。そこは皆さん役作りをすごく丁寧にされているんだな。
あとは「村上(幸平、仮面ライダーカイザ/草加雅人役)さん頑張ってんな」とか。
―― 「555」随一、平成ライダーでも指折りの爪痕を遺した人気ライバルキャラクターです。
半田 草加雅人のヒールぶり! 嫌われ役って中途半端じゃダメで、嫌われるなら骨の髄まで徹底的にじゃなきゃいけない。それをやりきれる村上さんの入れ込みようですよね。
村上さんは当時から評判を気にするタイプで、ネット掲示板か、東映公式サイトのご意見板かでわざわざ“草加雅人が心の底から憎い”といわれているのを確認して「よしよし」と言っていたそうです。村上さんは役者だから、要は「ここで嫌われなきゃ俺の演技ができていないってことなんだ」「悪者に見えない。いい人オーラが出てるじゃダメで、これでいいんだ」と。あまり言っちゃうと本人から怒られるかもしれないけど、仲がいいので(笑)。
ただ今になって振り返るとそうでも、当時は「これでいいんだろうか」と悩むこともあった。村上幸平が嫌われているわけじゃなくて、草加雅人が嫌われているとしても「エゴサなんてしちゃダメだよ」って言ってるんだけど、村上さんはわりとする方です。
―― 村上さんご本人にこの記事が見つかってしまう可能性があると。半田さんご自身は、あまりエゴサはされない方ですか?
半田 見つかるべきですよ。いい評判もあるんでしょうし励みになるとしても、僕は全くしません。100個いい意見があっても、1個でも心に刺さるものがあると人間ってその100対1の1へ気持ちを持っていかれる生き物。だから自分の評判は受け入れるだけにして、気にしてしまうことはしたくない。
―― 伺っていると村上さんとは正反対の印象ですね。巧と草加の関係に通ずる気もします。
半田 僕と村上さんは、タイプは明らかに違う人間でだからこそ仲がいい。どうしても譲れない美学ってあるじゃないですか。他は全部違っていいんです。食の好み、服の好みだとか好きなものも全部違っていても「これをやっちゃあおしまいよ」みたいな共通認識があればうまくやっていける。僕と村上さんの譲れない部分には近いものがあります。
ファイズフォンもついにスマホ化 「自分でも何か足りないなって」
―― 「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」について、現時点でお話できることを教えてください。村上さんも出演していますね。
半田 難しいな。映画の内容に関しては、5月5日の記念イベントで出ている情報しか言えないんです(※インタビューは7月)。だから出演者でいえば、村上幸平さんが出ます。唐橋(充、海堂直也役)さん、もちろん僕と、芳賀(優里亜、ヒロイン園田真理役)さんは出ます。監督は田崎(竜太、オリジナル版から続投。2003年公開の劇場版も担当)さんですとか。
あとはファイズの新フォーム。新しいフォームが出ます。ちなみにですが、ファイズフォンはスマホになってますよ。
―― パカッ、ポチポチポチ、「スタンディンバイ」のルーティンがないファイズ……!
半田 20年前からガラケーでやってるし、その後もいろいろ出演した※じゃないですか。そこでも従来の携帯を出してパカッとやって、ピピピ(555)、エンターキーを押してパシンと閉じて変身。もうこれが完成したリズムなんです。今回は“ピコンピコンピコン”からパチッと閉じるモーションがない。自分でも「何か足りないな」っていうのは正直ありました。
※半田さんは「平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊」(2014)と「スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号」(2015)で乾巧役を再演
―― 寂しいですね。パカパカアクションがないと。
半田 そう。あと一周り大きいし幅があって持ちにくいし、片手で「5、5、5」「エンター」と押しにくい。あれはファイズフォンの改善すべきとこだな。
でも20年目にして新しいデバイスができたり、新フォームを作ってもらえたりしてうれしいです。今回の映画はいろいろと勉強になったし、これをきっかけに悟りを開いたみたいなところすらあります。それだけでも大きな意味があった。
年齢的なものが大きいのかな。2024年で40歳になるんですが、これまで仮面ライダーをやったこと、ファイズを演じたことが、自分の人生でどういう意味合いを持つのか分かっているようでいなかった。特に自分は18歳でこの世界に入って最初の連続作品も、上京のきっかけも「555」。大人たちに混ざって右も左も分からないまま演じて、そこから芸能界でいっぱい仕事をやって、もちろん感謝もしていたし世に出るきっかけは「555」だって頭では分かっていたけど。
―― 人生の折り返し地点が見えてきたくらいの年代です。
半田 80歳まで生きるとしたら半分。芸能人生に限ったことではなく、人生単位で見ても「仮面ライダー555」は1つのパーツとして重要なんです。自分がこれからも生きていく上で、「555」があるということが1つの支え。作品を通じて出会った人も含めて何か「そうか、この人たちとこういうことをするために俺は生まれてきたのかな」みたいな。
40歳近くなってきて、周囲の人間も入れ替わり立ち替わりしていく中で、いまだにつながっている人もいればもう道が分かれてしまった人もいる。今回20周年を迎えたことで当時の仲間たちと再集合して1つのものを作りながらいろんな話をしたときに、大げさな言い方をすれば僕の生まれてきた意味合いの中に、“ファイズを任される、任してもらう”ことは1つの大きな使命だったのかなと思いました。
―― それは新劇場版のストーリーが影響しているのか、それともやったこと自体がということですか?
半田 ストーリーには関係なく年齢ですよ。中年になってきたから。40歳を控えて「どうしようかな」と思う反面、40歳になったからこそ見えてくる感覚があるなら中年も悪くないなと思う。肉体だけ若くてジレンマを抱えまくってぶつかりまくっていた20代の自分より、今の方がよっぽどいい。
35歳くらいまでは自分の人生を自分でコントロールしていると思い込んでいたんです。良くも悪くも自分の行動次第で、うまく波を乗りこなしている自覚と自負があった。ただそういう生き方は得てしてしんどいんです。人生は本来、自動操縦の乗り物に乗っているようなもの。努力は裏切らないとか、やったことへの成果・対価を結び付けて考えがちですが、やってもダメなときはダメだし、逆に何もしないのにうまくいくときもある。流れに逆らわず身を委ねてそれを受け入れたとき、急に心地よくなる感じ。
人だってそう。他人をコントロールしようとするとやっぱりダメなんです。できないから腹が立つ。腹が立たないようにするためには、その人から離れるしかない。人間関係にしても、仕事にしても、何にしても、思い通りにならないと思っていた時期が僕にもあります。だけどそう考えだすと全部面白くない。「何でもっと」じゃなくて、今自分の周りにあるもの、いる人にもう1回目を向けてみた時に、いろいろ分かることがある。
やっぱり人間って縁。「555」で出会った人間たちとはやっぱり縁があるんだろうし、それ以外も含めて縁に導かれた人生です。
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唐橋さん「お腹いたーい」。
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