室町時代の武将の邸宅をリアルに再現したジオラマに驚きの声 「タイムスリップしてドローンで撮ってきたみたい」(1/2 ページ)
「洛中洛外図」を参考に、約1カ月半かけて立体化した力作。作者に詳細を聞きました。
室町時代の有力守護大名、細川氏の邸宅を再現した精巧なジオラマが好評を博しています。屋根から庭から建具からみっちり作り込まれていて、本当に武士が住んでそう。
作者は日ごろから神社や仏閣のミニチュアを製作している宗秀斎(@sousyuusai_ar)さん。今回は国宝の「洛中洛外図」(米沢藩上杉家に伝来した「上杉本」)に描かれた「細川殿」を参考に、16世紀中盤の邸宅を再現しました。
製作期間は約1カ月半。屋根の垂木や建具など、目立たない箇所まで作り込む過程も投稿されており、並々ならぬ苦労がうかがえます。
あまりのリアルさに、X(Twitter)では約1万8000件のいいなが集まり、「本物を見ているみたい」「実は室町時代にドローンを持ち込んで撮影したのでは!?」と驚く人が多数。編集部は宗秀斎さんに、作品の詳細を聞きました。
―― 細川氏の邸宅を立体化しようと思ったきっかけをお聞かせください
宗秀斎 数年前から主に日本の寺院仏閣などの古建築模型を再現・製作しているなか、古絵図や資料をもとに失われた武家屋敷の姿を立体化するなど、当時の風景を具現化することに面白さを感じていました。
そこで思いついたのが、室町・戦国時代の京都で暮らす人々の風景が描かれた「洛中洛外図」でした。屏風絵に大きく強調されている屋敷の部分に着目し、「当時の中世時代の武家邸宅がどのような姿であったのか?」「そこで暮らす武将はどんな人物であったか?」などと歴史を振り返りながらイメージを膨らませられる、ストーリー性あるジオラマにすると面白いのではと考えました。また、前例もほとんどなかったため、未知の世界に飛び込むようなチャレンジ精神もありました。
―― 製作にあたって、苦労した部分を教えてください
宗秀斎 建築物の再現では、洛中洛外図のような古絵図と、研究論文で示された配置復元図を頼りに図面を起こす必要があります。それを補強するための参考に、寺院仏閣の方丈や御殿など、現存する建築物のなかで絵図に描かれた時代と近いものに可能な限り足を運びました。撮影した写真を絵図と比べて外観や屋根など類似点を探り、立体として図面に起こす、一連の作業に苦労しました。
また、製作時の技巧的な点で言えば、寺院仏閣に見られるような、棟から軒先のほうへ反った曲線屋根の形状を表現するうえで、何度も試作しながら形にしていく工程も大変でした。建築ジオラマは見下ろして観賞することが多いので、どうしても目線が建物の屋根に行きがちです。そうなると屋根の形ひとつで建物の印象が変わるので、特に神経を使いました。
―― 製作にあたって特にこだわった部分は?
宗秀斎 主な材料は木材ですが、建具の障子部分に本物の障子紙を貼り付けたり、地面には土壁を使用したりと、リアルにするため部分部分の材質にもこだわりました。色彩においても時間の経過を感じさせるように、経年劣化した柱や壁、屋根などの褪色感を意識しています。
また、全体の半分くらいの面積を占める回遊式庭園も見どころだと思っているので、一つ一つの石庭や木々など細部に至るまでこだわり、建物と自然が調和した小さな箱庭から癒やしを感じるような空間作りを心がけました。今でいうところの、「武士のテーマパーク」のミニチュアですね。
―― Xでの反響について感想をお聞かせください
宗秀斎 ニッチな模型なので、今回の反響には大変驚きました。失われた室町・戦国時代の武家屋敷の姿を再現することで、その時代背景とそこから想像することの楽しさ、CGと違った模型ならではの手作り感を共感していただけたことに、製作の意義を感じました。また、日本の古建築や風景の魅力、それにまつわる歴史などを知りつつ、想像しながら名所や観光地に足を運ぶ楽しさを感じていただけたらうれしいですね。
―― 次はどのような作品を制作する予定ですか?
宗秀斎 今年は残り少ないので、普段の寺院仏閣ジオラマ製作に向き合うことになりそうですね。それとは別に、来年に向けて面白そうなジオラマを構想しているので、今後も小出しにSNSで発信していきたいと考えています。それまでは内緒ということで(笑)。
協力・動画提供:宗秀斎(@sousyuusai_ar)さん
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