【ロングインタビュー】異色の王道『ウルトラマンブレーザー』なぜ生まれた? 田口清隆メイン監督が明かす(2/3 ページ)
僕の中では、ニュージェネの総決算が『ウルトラマンZ』
―― SKaRDメンバーの多様性や、ゲント隊長が妻子持ちであることなど、誰もが何かとの板挟みになっている感じがストーリーに混ぜられていて、世界共通で人生のどこかの場面に引っ掛かるような描かれ方ですね。
ところで、『ウルトラマンブレーザー』では、「今回いつもとは違うことを」「何でもいいとしたら何がやりたいか」といったオーダーがあったようですね。先ほど定番を避けた話もありましたが、田口監督が感じる『ウルトラマンブレーザー』の方向性を掘り下げてみたいです。
田口 僕が『ブレーザー』以前のウルトラマンシリーズでメイン監督を務めたのは『X』と『オーブ』と『Z』ですが、『新ウルトラマン列伝』の番組内作品だった『X』や、その後に放送された『オーブ』のころは、「ニュージェネレーション(ニュージェネ)」という言葉はまだなかったんです。
2014年の『ギンガS』から監督をやって、翌年の『X』でメイン監督をやったときは、『ギンガS』と違うもの、かつやりたいことがたくさんあったので、「自分がずっとやりたかったウルトラマン」を目指しました。『X』で出し切った思いもあり、翌年の『オーブ』ではそれまでの自分が考えたこともなかった全然違うウルトラマンをやりました。ある意味『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』みたいな感覚で。
過去のウルトラヒーローのパワーを使った変身やタイプチェンジが完全に定番化していったのは『オーブ』の後くらいからで、ニュージェネという言葉が浸透していったのはその次の『ウルトラマンジード』ぐらいから。僕にとっては『X』も『オーブ』も、ニュージェネどうこうではなく常に1本1本新しいウルトラマンを生み出すつもりで作っていました。
ただし、『Z』は明確にニュージェネだと捉えていました。それまでのニュージェネのいいところを集めたニュージェネの集合体として意識してメイン監督をやった唯一の作品が『ウルトラマンZ』。僕の中でのニュージェネの総決算が『Z』と思っています。
ニュージェネは毎回かなり異色作だったと思うし、自分も今までもいつもなるべく違うものを作ってきたつもりでした。でも、ここ10年で異色であることがある種の定番になっていて、逆に王道を突き詰めたら新しいものになるんじゃないかと思いました。ただ、『ブレーザー』が何か新しい定番になるとも思ってません。ここ最近の定番をしない、というだけで。
―― 定番をしない。再び登場しましたね。
田口 「定番をしない」というのは、「いったん、元に戻す」ということ。僕は初代マンが一番好きなんですが、『ウルトラマン』(1966年)を徹底的なまでに今風に描いた『シン・ウルトラマン』が既に存在する以上、ウルトラマンの根底にある定番要素――地球防衛隊的な人たちがいて、そのうち誰か1人がウルトラマンで、怪獣事件があってそれを解決しようとして、最終的にはウルトラマンが出てきて倒す――以外は一度全て取り除き、SFとして本来こういうことなんじゃないか? ということで構成していく形で作っていきました。今までやった中でも一番、新しいものを作るために原点回帰した感覚があります。
また、数年前には想像もつかなかったようなことが起きている中で、今年だからこそやろうと思った部分もあります。製作途中でコロナ禍に遭った『Z』も、コロナ禍だからこそ生まれた何かがあったと考えていて。初代マンが放送された当時も、沖縄は統治下でしたが、そうした時代的なものが明らかにストーリーに影を落としていました。
そういう特撮ものが持つ「怪獣に乗せて時代を比喩していく」側面が好きで、2023年だからこそやれるドラマのつもりで『ブレーザー』を作りました。だから、「ここからこういう風潮になるべきだ」とかは考えていません。こんなこと毎年やろうと思ったら大変ですし、誰もやりたくないでしょうし。
―― 定番を避けることで大変だったことはありますか?
田口 一番やりたくてやったけどやってみたら大変だったのは、ウルトラマンが(地球語を)しゃべらないことですね。
―― 地球の言葉をしゃべらず、決めぜりふも言わないウルトラマンはある意味新鮮でした。
田口 それこそ『ウルトラマン』のころから、どこから来て何が目的なのか、ウルトラマン自身がしゃべっていましたが、ハードSFとしてとらえると、初めて地球にやってきた宇宙人が地球の言語をしゃべるのはおかしいんですよね。
でもそれをやめるとウルトラマンの設定を誰も説明できなくなる。ゲントにすらほとんど説明してくれないから、探ってくしか説明する方法がなくなる。それをやるだけで1クール掛かりかねない、というのは一種の苦しみにもなりました。
でも、途中からはそれを面白さに変えてしまえばよいと発想を転換して、「分かんなくていいじゃん、だって宇宙人だよ」って。『2001年宇宙の旅』のモノリスのように、何か人類を進化させようとしているみたいだけど、その正体は小説版を最後まで読んでギリギリわかるかどうか、みたいな存在。それに近いことがあってもいいんじゃないかなと。
“ハシビロコウ”って鳥類がいるじゃないですか。あれ、僕大好きで。
―― 突然のハシビロコウ。
田口 眺めていてもほとんど動かないんですが、何かの拍子に突然羽を開いたりすると、われわれハシビロコウ好きは「動いた!」と盛り上がるんです。ハシビロコウがなぜ羽を開いたのか、何考えているかなんて分からないけど、魅力的に感じる。
もしそんな存在と一心同体になったらどうなるか考えたら、最後まで分からない。ただ、ブレーザーは、その場で失われようとしている命に対しては、明らかに行動を起こす。しかも、行動を起こすことで多くの命を救うために1つの命を奪うことに対して、謎の舞いを見せている。
―― ムエタイのワイクルーのような所作ですよね。
田口 あくまで僕の中では、天と地の恵みに感謝して命を奪うことに対する祈祷(きとう)ととらえています。いつもなら僕がそう言ってしまえばその設定になるんですが、今回はそれはやめ、あえて設定していません。その方がずっと気になる存在になるし、設定しちゃったらつまらない。分からなくていいんじゃないかと。
―― 異文化との交流を描くのはいつの時代もエンターテインメントの基本ですし、『ブレーザー』の全体的なテーマとして掲げられている「コミュニケーション」にも通じる話ですね。
田口 地球人が考える知的生命体とは違うだけで、ブレーザーは原始的な生き物というわけではないので。しゃべらないんじゃなくて、日本語、地球の言語を獲得していないだけで、何なら一番やかましい(笑)。
僕らも海外旅行に行って、英語はギリギリ分かるかもしれないけど、それ以外の言語の人だと地球人同士なのにほぼ伝わらないとかありますよね。宇宙人ならもっとでしょ? そんな中で、ゲントとブレーザーがどうコミュニケーション取るのかは楽しみにしてもらいたい要素の1つです。
生き物だから何かを発してるし、何かを返すし、何なら一緒に戦っている。そんな中で、何となくゲントがギリギリ理解していく。その何となくを視聴者も何となく味わってくれるといいなと思います。
―― 「俺が行く!」だったゲント隊長が、物語が進んでいくと「いくぞブレーザー!」となるのは、一緒に戦っていてもどこか得体の知れない存在だったブレーザーが、自分と同じように誰かを守るために戦っているのだとゲントの理解が進んだことを感じさせます。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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