「スプラッシュ・マウンテン」になぜ消滅の噂が? 大人気アトラクションをめぐる日米の動向を知る(1/5 ページ)

» 2024年10月23日 11時00分 公開
[宮田健(dpost.jp)ねとらぼ]

 早速ですが、1枚の写真を紹介したいと思います。どこかで見たようなタイプのアトラクション模型、しかしよーく見てみると、あなたのよく知るそれとはちょっと異なることが分かるかと思います。これはれっきとした、ディズニーによる公式の模型。いったい、何なのでしょうか? そこには、かなり込み入った事情があるのではないかと、筆者は推察しています。

アトラクション模型 ずぶ濡れになるあのアトラクションかと思いきや……ライオンの王が!?

 本記事で扱いたいのは、東京ディズニーランドで大人気のアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」の今後についてです。このアトラクション、たびたび日本で「もうすぐなくなるのではないか?」と語られることが増えてきました。現時点では唯一現存している東京ディズニーランドの「スプラッシュ・マウンテン」は、むしろ海外から注目を集めており、その行く末に心配する方、ディズニーに対して憤る方も少なくありません。

 スプラッシュ・マウンテンの今後については、今では出所不明の内通者によるコメントがSNS上を駆け巡るほど注目が集まっています。その背景は非常に入りくんでおり、事実関係のみでも把握が難しいと思います。そこで、今回は表に出てきている事実をキーとして、最後にほんの少し私見を含めた未来予測をまとめてみたいと思います。

 結論から先に言ってしまえば「スプラッシュ・マウンテンは、いつかはこの世から消える。でも、今じゃない」といったところです。では、そこに至るまでの道のりをともにたどってみましょう。

スプラッシュ・マウンテン 皆が愛した「スプラッシュ・マウンテン」はなぜ存続の危機なのか?

筆者紹介

宮田健:IT系メディアの編集者を経て、現在は独立しエンタープライズ系ITのライターとして活動する傍ら、広義の“ディズニー”を追いかけるディズニージャーナリストとして、個人でできる範囲の活動を行う。ディズニーを中心とした情報を集める個人サイトdpost.jpを運営。


基になった映画「南部の唄」をディズニーはどう捉えているのか?

 「スプラッシュ・マウンテン」の去就が注目されているのは、実はかなり昔から。このアトラクションは映画「南部の唄」(1946年公開)を基にしており、作中で語られるリーマスおじさんの寓話部分をアトラクションにしています。

 この作品は公開直後から(アメリカにおけるBlack Lives Matter運動や日本における“ポリコレ”騒動よりもはるか昔から)人種差別の面で問題を抱えており、アメリカではホームビデオリリースがされておらず、かつディズニーの配信サービス「Disney+」でももちろん配信されていません。実は日本ではレーザーディスクやVHSでリリースされていたこともあり、一時は海外のコレクターがこれを買い集めた時期もありました(私もレーザーディスク版を所有しています)。

 多くの方はもうこの作品を見ることができないため、同作の問題に関しては本記事では触れません。ディズニーとしてこの作品をどう見ているかについては、私が知る限り20年以上前から株主総会で株主より本作のリリースがないか、という質問が頻出しており、その都度予定はないと回答しています。

 実は今も、ディズニー長編アニメーションの一部では、同じように「時代にそぐわない」シーンが含まれる作品が多数存在しています。その中には東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」でテーマエリアになっている「ピーター・パン」や、東京ディズニーランドのアトラクションとして存在する「ダンボ」もあります。これらの作品ではDisney+で、現代には合わないシーンが存在していることをかなり長い時間、アドバイザリテキストで説明するようになっている上に、子ども向けプロファイルではそもそも見られないようになっています。

いくつかの作品に追加されているアドバイザリ いくつかの作品に追加されているアドバイザリ

 2020年にはディズニーが「Stories Matter」というページを公開しています。問題のあるシーンが含まれる「おしゃれキャット」「ダンボ」「ピーター・パン」などを例示し、これらシーンに関して解説を加えています。これを見るとアメリカにおいていったい何がマズいのか、なんとなく分かるのではないでしょうか。個人的にもダンボのカラスたちが行う「ジム・クロウ」のポーズは、その背景を知ったあとはドキッとするようになりました(そのシーンは一部の国の配信からカットされています)。

 つまり、「問題があっても日本では注意書きしておけばいいのでは?」という解決策は、他の作品では既に行っており、ディズニーは「南部の唄」ではそれは通用しないほど問題だと考えている、と捉えることができます。上記ディズニー自身が反省を含めまとめているであろう、「Stories Matter」のページでも「南部の唄」は一切触れることができておらず、ディズニーにとっても大変扱いにくい作品であることがうかがい知れます。

「Stories Matter」 「Stories Matter」による紹介。映画「おしゃれキャット」(Arisotcats)ではアジア人への侮蔑的なしぐさと容姿の扱いが取り上げられている
       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた