「スプラッシュ・マウンテン」になぜ消滅の噂が? 大人気アトラクションをめぐる日米の動向を知る(1/5 ページ)
早速ですが、1枚の写真を紹介したいと思います。どこかで見たようなタイプのアトラクション模型、しかしよーく見てみると、あなたのよく知るそれとはちょっと異なることが分かるかと思います。これはれっきとした、ディズニーによる公式の模型。いったい、何なのでしょうか? そこには、かなり込み入った事情があるのではないかと、筆者は推察しています。
本記事で扱いたいのは、東京ディズニーランドで大人気のアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」の今後についてです。このアトラクション、たびたび日本で「もうすぐなくなるのではないか?」と語られることが増えてきました。現時点では唯一現存している東京ディズニーランドの「スプラッシュ・マウンテン」は、むしろ海外から注目を集めており、その行く末に心配する方、ディズニーに対して憤る方も少なくありません。
スプラッシュ・マウンテンの今後については、今では出所不明の内通者によるコメントがSNS上を駆け巡るほど注目が集まっています。その背景は非常に入りくんでおり、事実関係のみでも把握が難しいと思います。そこで、今回は表に出てきている事実をキーとして、最後にほんの少し私見を含めた未来予測をまとめてみたいと思います。
結論から先に言ってしまえば「スプラッシュ・マウンテンは、いつかはこの世から消える。でも、今じゃない」といったところです。では、そこに至るまでの道のりをともにたどってみましょう。
筆者紹介
宮田健:IT系メディアの編集者を経て、現在は独立しエンタープライズ系ITのライターとして活動する傍ら、広義の“ディズニー”を追いかけるディズニージャーナリストとして、個人でできる範囲の活動を行う。ディズニーを中心とした情報を集める個人サイトdpost.jpを運営。
基になった映画「南部の唄」をディズニーはどう捉えているのか?
「スプラッシュ・マウンテン」の去就が注目されているのは、実はかなり昔から。このアトラクションは映画「南部の唄」(1946年公開)を基にしており、作中で語られるリーマスおじさんの寓話部分をアトラクションにしています。
この作品は公開直後から(アメリカにおけるBlack Lives Matter運動や日本における“ポリコレ”騒動よりもはるか昔から)人種差別の面で問題を抱えており、アメリカではホームビデオリリースがされておらず、かつディズニーの配信サービス「Disney+」でももちろん配信されていません。実は日本ではレーザーディスクやVHSでリリースされていたこともあり、一時は海外のコレクターがこれを買い集めた時期もありました(私もレーザーディスク版を所有しています)。
多くの方はもうこの作品を見ることができないため、同作の問題に関しては本記事では触れません。ディズニーとしてこの作品をどう見ているかについては、私が知る限り20年以上前から株主総会で株主より本作のリリースがないか、という質問が頻出しており、その都度予定はないと回答しています。
実は今も、ディズニー長編アニメーションの一部では、同じように「時代にそぐわない」シーンが含まれる作品が多数存在しています。その中には東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」でテーマエリアになっている「ピーター・パン」や、東京ディズニーランドのアトラクションとして存在する「ダンボ」もあります。これらの作品ではDisney+で、現代には合わないシーンが存在していることをかなり長い時間、アドバイザリテキストで説明するようになっている上に、子ども向けプロファイルではそもそも見られないようになっています。
2020年にはディズニーが「Stories Matter」というページを公開しています。問題のあるシーンが含まれる「おしゃれキャット」「ダンボ」「ピーター・パン」などを例示し、これらシーンに関して解説を加えています。これを見るとアメリカにおいていったい何がマズいのか、なんとなく分かるのではないでしょうか。個人的にもダンボのカラスたちが行う「ジム・クロウ」のポーズは、その背景を知ったあとはドキッとするようになりました(そのシーンは一部の国の配信からカットされています)。
つまり、「問題があっても日本では注意書きしておけばいいのでは?」という解決策は、他の作品では既に行っており、ディズニーは「南部の唄」ではそれは通用しないほど問題だと考えている、と捉えることができます。上記ディズニー自身が反省を含めまとめているであろう、「Stories Matter」のページでも「南部の唄」は一切触れることができておらず、ディズニーにとっても大変扱いにくい作品であることがうかがい知れます。
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