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「ジブリに帰れるのかな」――宮崎吾朗監督が明かす“武者修行” 「山賊の娘ローニャ」で3DCGにも手応え

メディア向け試写には立ち見も出るほどの注目度。一度映画化を試みるも挫折した「山賊の娘ローニャ」に託すメッセージとは。

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 映画「ゲド戦記」「コクリコ坂から」で知られる宮崎吾朗監督が9月2日、初めてスタジオジブリを離れて制作したテレビアニメシリーズ「山賊の娘ローニャ」(NHK BSプレミアム、10月11日スタート)の完成試写会と会見に登場しました。

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左からドワンゴ川上量生会長(プロデューサー)、白石晴香さん(ローニャ役)、宇山玲加さん(ビルク役)、宮崎吾朗監督

 吾朗監督は今回、ハリウッド作品も手がけるスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズと手を組み、ドワンゴ川上量生会長をプロデューサーに据え、3DCGアニメに挑戦しています。そんな状況を自ら「武者修行」と表現。修行を経てスタジオジブリに何を持ち帰るのか? と尋ねられ「ジブリに帰れるのかな。スタジオジブリには1年くらい行っていなくて武者修行に出っぱなしになるんじゃないかと心配」と語り、笑いを誘いました。

試写には立ち見も ローニャの注目度

 試写の会場には80人ほどの記者が集まり、立ち見も出るほどでした。その熱気に吾朗監督は冒頭「大げさなことになってますね」と驚いた様子。制作統括の有吉伸人さん(NHK)も「どれだけ注目度がすごいか肌で感じています」と挨拶しました。

 NHKのアニメの歴史は1978年放送の「未来少年コナン」にさかのぼります。この作品の監督はご存知、吾郎監督の父、若き日の宮崎駿監督です。それから30数年。今回の制作にかかった時間、スタッフの数、クオリティなどは「NHKのアニメの歴史のなかでも破格」だと、有吉さんは語ります。

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 DVDやグッズ企画先行だったり、大人を意識したストーリー展開だったりするアニメ作品が多い昨今ですが、「山賊の娘ローニャ」は“子どものための良質なアニメ”をテーマに掲げています。「今のテレビには『アルプスの少女ハイジ』のような番組がない」――吾郎監督が有吉さんにこんな風に語ったこともあるそうです。放送は土曜日午後7時。家族で見ることを意識した時間設定です。

 原作の「山賊の娘ローニャ」は、スウェーデンを代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの代表作の1つ。山賊マッティスの娘ローニャの成長を描いた物語です。アニメでは愛するあまり時にすれ違う親子関係、対立する山賊の息子ビルクとの兄弟のような関係などが見どころ。女の顔を持つ妖鳥「鳥女」、岩や苔の間に群れをなして住む小人「灰色小人」など不気味でワクワクするキャラも登場します。

 吾郎監督は以前、映画の企画を考えるため「児童文学を読み漁る」なかでこの作品に出会い、父と娘の“ラブストーリー”に惹かれたそうです。しかし2時間の枠におさめるのは難しく映画化は挫折。このとき代わりに制作されたのが「コクリコ坂から」(2011年公開)でした。

 その後、吾郎監督によれば「コクリコ坂が終わった後ジブリで腐っていたら、川上さん(川上量生プロデューサー)が僕に声をかけてくれました」とのこと。またスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーからは「ジブリにいる限り、宮崎駿の影響下からは逃れられない」と外に出ることを勧められ、テレビアニメの挑戦へとつながりました。

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 山賊の娘ローニャは3DCGアニメです。人間の表情など繊細な表現を行うのは難しいとされる3DCGをあえて使い、なじみあるセルアニメーション調の絵のタッチを採用しながらも、CGで「心の機微」を描くことに挑戦しています。なぜ3DCGかと言えば「どうせ(外で)やるならCGにしなよと鈴木プロデューサーに言われた」(吾郎監督)からだとか。

 ちなみに今日の会見の時点で全26話が完成している予定でしたが、実際はまだ3話までしか出来ていない(!)という状況だそうです。「3DCGけっこうイケるじゃんという手応えがあります。僕が心配しているのは本当に完成するかということです」と、吾郎監督はポツリ。川上プロデューサーも「ローニャはCGなので一旦モデルを作ればその動かし方のノウハウがたまり、クオリティが下がることはありません! ありうるとするとできないということです」と明かしました。

川上会長は何もしないプロデューサー!?

 一方、ネット企業の経営者という立場ながらアニメ制作の現場に飛び込んだ川上会長は「何もしない」プロデューサーだと自身を表現します。

 「アニメ制作についてまったく分かっていませんので、制作について寄与できることはない。今回は吾郎監督が制作に集中できる環境をどうやって構築するのか――ということはできたのかな」「全くアニメ業界と関係ないジャンルのぼくがやっていいのか? と思ったんですが、考えてみれば吾郎監督(※建設コンサルタントという異業種の経歴を持つ)も同じだな。そこにシンパシーを感じることはできるなと」(川上会長)

 川上会長は“スタジオジブリのプロデューサー見習い”としてではなく“ドワンゴ会長”として製作陣に加わっています。アニメの制作・著作はNHKとドワンゴ。スタジオジブリは制作協力という位置づけです。niconicoなどドワンゴのサービスとの連携など具体的な話は出ませんでしたが「アニメ業界に寄与できるような形で、ドワンゴが今やってるインターネットのビジネスと絡められないかなということは最近になって考えはじめた」と川上会長がコメントしていたので、今後ネット向けの展開も期待したいところです。

 初回放送は10月11日午後7時スタート、再放送は10月15日午後6時40分。1話25分で全26話あり、初回放送は1、2話連続放送の50分拡大版です。

(C)NHK・NEP・Dwango, licensed by Saltkrakan AB, The Astrid Lindgren Company


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