電動アシスト自転車って坂道とかラクチンですよね。こぎ出すときや加速するときにも絶妙の案配でモーターがアシストしてくれます。「これをこっそり使ったらレースで勝てちゃうんじゃないの?」と思った人もきっといるでしょう。でもまさかホントにやる人が現れるとは! しかも世界選手権という大舞台で。
先週、ベルギーで行われていた自転車レース、シクロクロス世界選手権で出場選手の「メカニカルドーピング」が発覚し、自転車レースファンのみならず、世界中で大きな話題になっています。一般的にドーピングと呼ばれるのは、パフォーマンス向上を目的として薬物などを使って一時的に身体能力を上げることですが、これを機材側、つまり自転車本体側で行う「技術的不正行為」のことをメカニカルドーピングと呼んでいます。
UCI(国際自転車競技連合)が発表したプレスリリースには「技術的な欺瞞行為(technological fraud)」と書かれており、詳細なことは「調査中」とのこと。
このニュースの第一報を報じたベルギーのスポーツニュースサイト「sporza」の記事によれば「シートポストが取り外された際に電源ケーブルらしきコードが見えた」という目撃証言があり、そのことから小型モーター使った装置を使用していたのではないかと、レース関係者の間では言われています。
推察される手口は、このような小型のモーターとバッテリーを自転車のフレーム内に収め、そのパワーアシストによってアドバンテージを得るものです。実はこういったモーター自体は、脚力に自信のないライダー、女性や年配のライダーのライディングをサポートするといった位置付けで数年前から一般向けに商品として販売されており、誰でも入手することができます。
フレームの中に収めてしまうとぱっと見では全く分かりません。
数年前からメカニカルドーピングについては、その可能性がささやかれており、実際にUCIの公式レースでは極端なハイパフォーマンスを見せた選手の機材をX線などでチェックすることも行われてきましたが、発覚したのは今回が史上初めて。レース関係者も今まで半信半疑、「まさか、ね」と思っていたことが実際に起こってしまったことに衝撃が広がっています。詳細な調査結果、そしてメカニカルドーピングを行った選手への処罰など続報が待たれます。
どちらにしても、今後は薬物ドーピングだけではなく、メカニカルドーピングのチェックもより厳しくなることでしょう。自転車レースファンにはいろいろと気が重くなる事件です。
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