将棋棋士の橋本崇載八段が3月2日、三浦弘行九段の冤罪事件について「一兆%無実です。疑ってごめんなさい」とTwitterで謝罪した。三浦九段には直接会って謝り、今は2人の間に溝はないという。
橋本八段は三浦九段の処分が発表された翌日の2016年10月13日、Twitterに「ファンには酷な知らせと思うが、個人的にも1億%クロだと思っている」と投稿(現在は削除済み)。同月末にアカウントをスタッフと共有しているとして、「私が呟いたものもあればそうでないものもあります」と釈明したものの、将棋ファンの間で物議をかもしていた。
2日の投稿によると、三浦九段とは1時間ほど話し合い、「今回どうしてこんなことが起こったのか、誰が不正の噂を撒いていたのか」などを問われたとのこと。その上で「運命を変えた10月10日〜10月12日に何があったのか、真実を明らかにしてほしいと思う」「今回の騒動は、三浦さんにとってあまりにも気の毒な事件だった。将棋をよく知らない皆さんにも、1人でも多く知ってほしいと思い、拡散を希望する。一兆%無実!ふざけてるんじゃないよ、一兆%無実です。疑ってごめんなさい!」とコメントしている。一方、Twitterアカウントは3月3日未明までに削除するとのこと。
橋本崇載八段の2016年10月13日の投稿
「数週間か1か月ほど前に、奴と対戦した人が不正行為をやられたと憤慨していると聞いた。恐らく、その後に決定的にクロ断定できるものを掴んで、踏み切ったのだろう。将棋連盟はタイトル戦開催まで数日というギリギリのタイミングでよく英断したと思う。始まってからでは、より取り返しがつかない。」
「ファンには酷な知らせと思うが、個人的にも1億%クロだと思っている。奴が除名になるかどうかは知らないけど、俺は二度と戦う気しない。以前からソフト指し、モラル、カンニング、再三警鐘を鳴らしてきたつもりだが、最悪の形になりただただ残念だ。これでも潔白を信じるという人はどうぞご自由に。」
「最大の被害者は渡辺竜王ではないのか?数日前のA級戦、大事な大事な一局、どんな心境でいたか? そして、ずっと1番の目標にしていた防衛戦が数日前にまさかの相手変更である。精神的動揺はどんなものであろうか。」
「俺としては、とにかく渡辺さんに、流石は人類最高峰の将棋だと感動させるような圧倒的な内容を期待します。こういう発信は、本当しんどいんでこれくらいで。」
12月発売の著書「棋士の一分 将棋界が変わるには」(角川新書)での記述
「すでに複数の棋士から疑惑を聞いてたので、私は連盟がなにかしら言い逃れのできない証拠といえるものをつかんだうえで、今回の処分に至ったのだと受け取った」(P24)
「一部報道やインターネット上の書き込みなどでは、私が三浦九段はクロだと『断定している』ということが強調して伝えられたが、もともとこの件は、私という個人が断定できるような問題ではない。ただし、複数の棋士がそうした不信感をもつということは、普通はあり得ない。もし三浦九段が『シロ』だという判定が出たところで、どうも腑に落ちない」(P24〜25)
三浦九段の将棋ソフト不正冤罪事件
2016年10月、トップ棋士の三浦弘行九段が対局中にスマートフォンを使って将棋ソフトを不正利用した疑いがもたれ年内の出場停止処分が下されたもの。本人は全面的に否定し、処分の早期撤回を求めていた。第三者調査委員会は同年12月、「不正行為の証拠なし」「処分は妥当(当時の判断としてはやむをえなかった)」との調査結果を発表。
事件の対応を受けて、当時の谷川浩司会長など連盟の理事2人が辞任。2017年2月には棋士総会の投票により、常任理事3人が新たに解任されている。
なお、三浦九段の直接の処分理由となった「休場届の不提出」の事実関係について、三浦九段側と第三者委で見解に違いがあるものの、将棋連盟は「再調査を行う予定はない」としている。
(高橋史彦)
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