「お前やってることは法律に引っかかってんだよ!」 コインハイブ事件、神奈川県警がすごむ取り調べ音声を入手(3/3 ページ)
【動画あり】弁護士は「推定無罪の原則を真っ向から否定している」と語りました。
モロさんの弁護士「推定無罪の原則を真っ向から否定している」
現在も裁判が続いているモロさんの事件ですが、モロさんの代理人である平野敬弁護士は本件をどう見ているのでしょうか。見解を伺いました。
――モロさんの弁護人を引き受けることになったきっかけを教えてください。
平野弁護士:モロさんからのコンタクトです。かつて代理人を務めたUQ WiMAX事件のことをご存じで、ITに詳しい弁護士として選ばれたようです。
――モロさんが検挙されたという事実について、平野先生の見解をお聞かせください。
平野弁護士:「Coinhiveは本当にウイルス(不正指令電磁的記録)にあたるのか」という点を脇においても、いくつか問題があります。
対象選択の問題
警察が捜査に踏み込んだ2018年2月時点において、モロさんはすでにCoinhiveを自分のサイトから撤去済みでした。2017年10月にTwitter上で他人から「閲覧者の同意を得たほうがいいのでは」と指摘を受け、それからわずか1週間で自発的に撤去していたのです。Coinhiveで採掘できた仮想通貨も極めて少額で、引き出しもしていません。刑事手続の対象とすべき事例とは思えません。
捜査体制の問題
今回、主に動いていたのは神奈川県警港南署の生活安全課です。ITに関して一定の知識をもつ警察官もいたようですが、そうでない者も多数いました。モロさんが技術的な説明をしても理解してもらえず苦労したようです。取調べは長時間にわたり、一方的な調書にサインを求め、モロさんが訂正を求めると取調べの長期化をにおわせて脅しました。
条文解釈の問題
ウイルス(不正指令電磁的記録)の要件は(1)反意図性 と(2)不正性 なのですが、両方とも極めて曖昧です。2011年に制定された当初から乱用の危険があると指摘されてきました。明確な基準で運用しなければ処罰範囲が無限に広がり、技術の萎縮を招きかねません。今回警察は「Coinhiveがなぜウイルスにあたるのか」、根拠や明確な基準を示さないまま一斉摘発に乗り出しています。
――本件でモロさんが取調べ時に音声データを録音することは法的には問題ありませんか。
平野弁護士:違法ではありません。
――音声データにおいて警察官がモロさんに対する態度についてはいかがお考えでしょうか。
平野弁護士:言葉遣いの乱暴さも問題ですが、「裁判所が(捜索)令状を出しているんだから違法に決まっている」「被疑者は弁解せず反省しなければならない」という思考が警官の口から自然と出てくる点に恐ろしさを感じます。推定無罪の原則を真っ向から否定しているわけですから。「新婚さんなんだろ」という、反抗すれば家族に迷惑が掛かるぞと暗示するような言葉には背筋が凍る思いです。
――今回の集団検挙については、いかが考えでしょうか。また集団検挙に関する法の問題点などがあれば教えてください。
平野弁護士:私はモロさんを含め複数人の弁護を引き受けていますが、裁判まで行っているのはモロさんだけです。私の担当外では、既に略式で起訴され罰金を受け入れている方が何人かいると聞きました。弁護人をつけて裁判で争うのは時間も費用もかかりますから、やむを得ないものと思います。泣き寝入りを強いられ、何人もの技術者が人生を狂わされてしまったのは、とても残念に思います。
モロさんの裁判は2月18日に最終弁論と論告求刑が行われ、3月中には判決が出る予定です。
(Kikka)
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