「プラットフォーマー」と呼ばれる海外の大手IT企業による影響力の実態調査を公正取引委員会が行い、中間報告を公表しました。「GAFA」(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)に代表されるプラットフォーム事業者が国内でも大きな影響力を及ぼしていることが問題として浮上していますが、調査結果からは、国内大手の企業に対する取引業者の不満も大きいことが読み取れます。
公取委が実施した「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」は、GAFA問題に政府が取り組むことを決めたのを受け、プラットフォーム事業者と国内事業者との取引慣行などの実態を把握するためのものです。「公取委がGAFAにメス」といった調子で報道機関が意気揚々と取り上げたのでご記憶の方も多いと思いますが、実は国内大手のヤフー(Yahoo!JAPAN)、楽天も調査対象に入っていました。
調査は(1)ショップがプラットフォームに出店する形のオンラインショッピングモール、(2)スマートフォンなどのアプリを販売するアプリストア、(3)プラットフォーム事業者に情報を収集される側の一般ユーザーの認識──が対象です。それぞれ興味深いものですが、ここでは日本企業が“やぶ蛇”になったように見えるオンラインショッピングモールの項目を取り上げます。
オンラインショッピングモールの実態調査は、Amazon.co.jp(以下「Amazon」)、楽天市場(以下「楽天」)、Yahoo!ショッピング(以下「Yahoo!」)、その他のモールを対象とし、オンラインアンケート調査を2月27日から3月26日まで実施。取引経験があるか、取引しようとしたことがある811の事業者が回答したとのことです。
調査結果の概要から主なものをピックアップした上で、分かりやすくするため、各項目について企業をランキング化した表を作成してみました。
「利用料が高い」「交渉の余地がない」あのトップ企業
調査結果によると、出店者との規約が「一方的に変更された」という回答は、楽天の93.2%が断トツでした。変更された規約に「不利益な内容があった」という回答も楽天が93.5%と、Amazonなどを大きく上回っています。
出店・出品の審査で承認されなかった場合、「説明はなかった」はYahoo!とその他モールが85.7%でトップでした。ただ、説明があった場合、Yahoo!は「納得できた」でトップだったのに対し、楽天は「納得できなかった」で最多でした。
商品の販売価格や品揃えについて「要請や指示を受けたことがあった」はAmazonがトップ。内容は、自社サイトや他のモールへの出品と同等か、優位にするよう求められたというもので、これは「最恵国待遇」条項のことを指すのではないかと思われます。Amazonは独占禁止法違反の疑いがあると公取委から指摘を受け、この条項を取り下げています。
モール運営事業者に支払う利用料では「一方的に決定された」が楽天は91.0%。各事業者とも料金値上げなどについては説明をしているようですが、説明について「納得できなかった」という回答が楽天は95.3%でこれも断トツ。「利用料が高い」という不満については完全に楽天の独壇場になっています。
「一方的に決めた」といえば、2014年に音楽機器販売のサウンドハウスが楽天から撤退した際の説明を思い出します。サウンドハウスによると、「楽天は一方的に弊社の決済口座としては楽天銀行の口座に一本化」することを決め、「出店店舗の銀行口座を勝手に開設し、決済用口座としてはその口座しか認めないということは、これまでの日本の商習慣ではありえないこと」として説明と撤回を求めました。ですが、「納得できる説明もなく、口座の取り消しも実行しないことが判明したため、弊社ではやむを得ず、楽天との取引を中止することと致しました」として撤退を決めています。
国内ネット企業最大手のYahoo!はECプラットフォームとしては後塵を拝しており、「初期費用、月額システム利用料、売り上げロイヤルティとも無料」という施策を打ち出していますので、料金面での不満が少ないのだろうと考えられます。
商品の検索結果などの表示についての不満は楽天が軒並みトップ。返品については、比較的容易に返品できることで知られるAmazonへの不満が軒並み最多でした。
以上を見たところ、取引業者からのネガティブな評価は楽天 >Amazon >Yahoo!の順で多い結果でした。新聞報道などではAmazonの支配力が問題にされることが多い印象ですが、実際の不満は楽天のほうが大きいようです。
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