この世界には様々な職業がありますが、自分が働いている業界や、いわゆるなりたい職業ランキングに載るような仕事以外にも、おもしろそうで、かっこいい仕事はたくさんあります。
今回ご紹介するのは、「官能検査員」という職業。最初に「官能」と聞いたときは全く想像ができなかったのですが、飲料工場に在籍し、鋭い嗅覚と味覚で官能し、ちゃんと美味しくできているのか、また不純物などが混じっていないかを調べるのが仕事だそうです。
今回は、そんな官能検査員として働いているサントリーの山口技師長に、お仕事について伺いました。
ーーまず、官能検査員はどのような仕事なのか教えてください。
山口技師長:商品を出荷する前に、味や香りを確認をして、出荷できる基準を満たしているのかどうかを確認する仕事です。
我々のいる白州工場では、通常の「サントリー天然水」と「スパークリングレモン」「朝摘みオレンジ」「芳醇ぶどう」などを製造しているのですが、これらの製品が設計通りの味になっているのかというところも担っています。
ーー山口さんは、どうして官能検査員になられたんですか?
山口技師長:私は、もともと開発をしていたのですが、そこでいろいろ経験させていただいたあとに工場に転勤となり、今は品質保証の仕事をしています。また、品質保証の仕事の一部として、試験を受けて官能検査員としても働いています。
工場勤務になると、全員がサンプルに香り付けをしたものを嗅ぎ分ける訓練をして、そのなかで特によく出来ている人をスカウトするんですよ。
ーーなるほど、社内でも狭き門なんですね。官能検査員は、ある種羨望の目を向けられるような仕事なのでしょうか?
山口技師長:社員1人1人が安全安心な商品を出すんだ、美味しい商品を出すんだ、という思いは持っているのですが、その最後の砦的な役割があるので、尊敬される立場にはあると思います。
訓練をしても、最終的には優れた嗅覚や味覚があるかどうかで左右されてしまう仕事ではあるので、なりたくてなれるものじゃない、という部分も少数精鋭感はあると思います。
ーー先ほど、官能検査員になるために「試験」があるとおっしゃっていましたが、こちらも難しいものなんですね。
山口技師長:「官能検査室」というものがあるんですが、その部屋にサンプルが並べてあり、嗅ぎ分ける練習をします。サンプルは、香りの濃度が濃いものから薄いものまでいろいろあって、それぞれがなんの香りかがわかるようになっているんです。
普段はサンプルを使ってトレーニングを積み、試験では香りの問題に対して回答を出し、その結果で判断をします。
先ほどもお伝えしたように、優れた嗅覚や味覚は大前提ではあるのですが、実はコツみたいなものがあるので、トレーニング次第で精度を高めることは十分に可能です。
なので、その「官能検査室」で自分はこの匂いをどう感じるか、とか、この匂いはどう感じればいいのか、みたいなところをトレーニング重ねていくんですね。そのため、1回目の試験には落ちたけど、その次の年に官能検査員として受け入れられる、みたいな人もいます。
この官能検査員の試験をパスするときは、全部正解しているのですごく爽快ですし、うれしいです!
ーー嗅覚ってトレーニングできるんですね! では、技術習得までに大変だったことはありますか?
山口技師長:やはり、匂いを嗅ぎ分けるにあたり、自分の得意な香りと不得意な香りというのは必ずあるのですが、苦手な香りを分かるようになるまではけっこう苦労しました。
また、一度官能検査員になったとしても、例えば体調や花粉症などで全然ダメになってしまったり、あとはひどい風邪を拗らせてしまって嗅覚自体が弱ってしまったりすることもあるんです。
官能検査員の試験に定期的に受かり続ければ、ずっと官能検査員ではいられるのですが、やはり年齢を重ねると嗅覚が少し衰えてしまったという人もいます。そのため、技術の習得までも大変ですし、維持も大変な仕事だと思います。
ーーでは、官能検査員であり続けるために努力していることもあるのでしょうか?
山口技師長:先ほどの話にも繋がりますが、体調管理は本当に気をつけています。風邪をひかないように予防するのはもちろんですし、花粉症は早めからケアをする、というメンバーもいます。
あとは、刺激物をあまり食べないようにする、とかですね。
ーー刺激物もダメなんですか?
山口技師長:医学的にダメと言われているかどうかはわからないのですが、一般的には良くないと言われているので自分も食べないようにしています。
あとは、官能検査の仕事をする前日にはにんにくをはじめとした匂いの強いものは触らない、食べない、ということもあります。
これは、自分自身のためでもあるのですが、周りのメンバーに迷惑をかけてしまうので、かなり注意はしています。
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