ハレの日のご飯を作り続けてきた老舗駅弁屋さんが、体に優しい「日常のご飯」を作ってみた!
京阪神地区を拠点とする神戸駅弁の淡路屋が、高槻阪急のデパ地下につくった「櫻小路」ブランド。どんなお弁当なのでしょうか。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
「駅弁」は、どこかへ出かけるときにいただく「ハレの日」の食べ物という方も多いですね。ターミナル駅ではブランド食材を使った1000円以上の駅弁が、比較的よく売れています。しかし、コロナ禍では、どの駅弁屋さんも需要が落ち込んだこともあり、弁当作りの原点を見直す機会となりました。京阪神地区を拠点とする神戸駅弁の「淡路屋」も、その取り組みから、大阪郊外のデパ地下に、新たなブランドを立ち上げました。
コロナ禍における、老舗駅弁店の挑戦(後編/全2回)
大阪と金沢・和倉温泉の間を結ぶ特急「サンダーバード」が、大阪と京都の府境を駆け抜けて行きます。いまの主力・683系電車は平成13(2001)年のデビューですから、活躍期間は、早いもので20年になるんですね。先頭車は流線形と貫通形の2種類。平成29(2017)年からは、朝晩の一部列車が高槻にも停車しており、大阪・北摂地域から北陸方面へのアクセスが便利となっています。
いまは新快速も停まる高槻。日中は新大阪まで10分、大阪まで15分、京都へ13分と鉄道移動はとても便利です。ほぼ並行する阪急の高槻市駅とJR高槻駅の間は、歩いて数分の距離。ただ、令和元(2019)年にオープンした「高槻阪急」はJR駅前にあります。こちらはもともと、西武高槻店だったところ。阪急や西武と聞くと、昔からのパ・リーグファンは、何となくシンパシーを覚えてしまいますね。
この高槻阪急の地下1階に、今年(2021年)春から「櫻小路」というブランドのお店が、新たにオープンしています。コチラのお店、神戸を拠点に京阪神の駅弁を製造している「淡路屋」が新たに立ち上げたお店です。コロナ禍で改めて弁当作りの原点を見直すなか、ハレの日の食事・駅弁だけでなく、日々の食事を支えてこそ食のインフラになり得るとの考えから、こちらのお店を立ち上げたと言います。
「櫻小路」の弁当は、メインの食材、副菜の大半にも、塩糀や醤油糀、あま糀や味噌などを用いて発酵・熟成の作用を活用したおかずを盛り付けているのが特徴。普段の食事であれば、少しでも体にいいものをということで、100年を超える駅弁屋さんのさまざまな技のなかから、「発酵」と「熟成」に注目したのだそう。ご飯には寒天入り雑穀ご飯が使われ、お浸しには甘糀を使用、ポテトサラダと奈良漬けの組み合わせも面白いですね。
総菜では定番のから揚げ弁当も、糀を使ったものになるとヘルシーな食感。今回は肉のお弁当を選びましたが、鯖や鮭など魚の弁当もあって、いずれも1000円以内。加えて、日本有数の酒どころである京阪神を拠点とする駅弁屋さんが、酒造りのベースにある「発酵」「熟成」をキーワードとした弁当作りを行っているのも、食文化として興味深いところ。この新ブランドもじっくり“熟成”させて、地元の皆さんの暮らしに定着して欲しいものです。
新大阪から特急「こうのとり」として北近畿方面へ向かう289系電車が、京都の車庫から出てきました。“コロナ禍”で気軽に出かけられない方が多いため、地方も苦しい状況が続きます。そこで、淡路屋では9月3日から都市部でも駅弁を通じて地方の食文化に触れてもらう「駅弁食べて地方へGo」という新企画もスタート。第1弾は京都・伊根の舟屋をモチーフとした「丹後 伊根の舟屋寿し」を開発しました。改めて感じるのは「苦しいときは挑戦ができるとき」だということ。淡路屋の次なるアイデアに期待が高まります。
(初出:2021年9月8日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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