5月29日(現地時間)、米ニューヨークのブルックリンにある屋内競技場「バークレイズ・センター」で銃撃事件が発生したとの騒ぎが起こり、テニスプレイヤーの大坂なおみ選手がその場に居合わせたことをTwitterで報告しました。実際には銃撃は発生しておらず、思い違いによる騒動で発砲はありませんでしたが、大坂選手は自身が受けたショックやアメリカで多数発生する銃乱射事件に対するいまの気持ちを吐露しています。
大坂選手は、自身の安全を確保したのちにすぐ起こったことをツイート。「バークレイズ・センターにいたら突然叫び声が聞こえ、人々が走っているのが見えた。銃撃者がいると叫ばれ、私たちは部屋の中に身を寄せ合って扉を閉めた。すごく怖くて固まった」「このツイートは私たちがうまく逃げ出したことを意味しているわけで、みんなが無事に脱出できたことを願います」と恐ろしい体験を生々しく説明し、居合わせた他の人たちの身を案じました。
騒ぎが起きた当時、会場ではボクシングの試合が行われていており、大きな音が起きたことをきっかけに観客の大勢がパニックに陥り逃げようとしたため複数の負傷者が出たものの、深刻な事態にはなりませんでした。アメリカでは5月24日(現地時間)にテキサス州ユバルディの小学校で銃乱射が起こり、21人が死亡するという痛ましい事件が起こったばかり。恐怖感が色濃く残っていたことが今回の騒動の起因となったと見られています。
大坂選手は自身の体験を通し、また発砲がなかったとわかったあとも銃乱射事件が多発するアメリカに住むいち市民として思うところをツイートしました。
いつからそうなったのかはわかりませんが、銃乱射事件のニュースに慣れてしまいました。同じようなひどいことが繰り返されているように感じ、似たような状況に自分が陥ったときのため脳がスイッチを入れて準備し始めたんです。前は映画に行くことが好きだったんだけど、いまはごく稀にしか行くチャンスがなくて、それで上映中に誰かが入ってくるのを見るたびに、心臓が締め付けられ手のひらが汗ばむんです。
先の体験で、いろいろ考えさせられました。私は幸運にもセキュリティーガードが一緒でしたが、もし1人で切り抜けなければならないとか、まして子どもでこれが誤報でなかった場合など、想像もできません。こんな頻繁に起こる悲惨な状況に親しむ感情は、アメリカに住む人特有のものかもしれませんが、私があの部屋で数分間経験した気持ちは、誰にも味わってほしくありません。
先日、防弾バックパックがどんどん売れていっているという記事を読み、すごく泣けてきました。このままでは未来が見えないし、何かが進化し、できればより良い方へ向かってほしい。なぜならこれはまともではなく、狂ったことだからです。
銃撃事件の多発に声を上げたのは大坂選手だけでなく、英タレントのジェームズ・コーデンは「今年、イギリスでも日本でもオーストラリアでも学校での銃乱射は起こっていない。アメリカでは今年27の学校で起こっている」と訴えかけ、ユバルディ出身の米俳優マシュー・マコノヒーも、すべてのアメリカ人が「本当に大切なものはなにか? どうやったら問題を修正できるのか?」自問自答すべきと声明をあげるなど、多くのセレブが問題提起しました。
大坂選手は2020年に、米ウィスコンシン州ケノーシャでアフリカ系米国人が警察官に銃撃された事件を受け、ウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝を棄権すると発表したことで世間が事件により注目するよう行動を起こしました(関連記事)。大会側は試合日程を延期し棄権は撤回されましたが、その後出場した全米オープンでは、試合ごとに警察からの人種差別的暴力に遭った黒人被害者の名前を書いたマスクを着用して登場し、話題をさらっています。
さらに2021年の全仏オープンでは、「アスリートのメンタルヘルスを考慮していない」として記者会見を開かないことを発表。また、2018年からうつ病を抱えていたことも明かし、同大会2回戦を棄権しました。2022年の全仏には出場し、5月23日に行われた1回戦を敗退したばかりです。
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テロから逃げる基本として、頭の片隅に。