会社を舞台にした“ループもの”映画「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」が、10月14日より東京・大阪・名古屋で先行公開、10月28日より全国順次公開となる。
サブタイトルが示す通り、本作は「恋はデジャ・ブ」(1993)「ハッピー・デス・デイ」(2017)「パーム・スプリングス」(2020)など、多数の名作映画を生み出してきた(タイム)ループもの。設定上の破綻がなければ一定の面白さが期待できるジャンルであり、実際本編はその“一定”をはるかに上回っていてめちゃくちゃ面白かった。
本作ではループというギミックを使い、いわゆる“社畜”を自虐的に、なんならその“怖さ”に至るまで描写。“会社あるある”をシニカルな目線で切り取ることで、笑うに笑えないけど笑ってしまうブラックコメディーに仕上がっている。
1週間スパンのお仕事リセット(だが受け入れる)
ループもの作品はおおむね1日、あるいはもっと短いスパンで時間が繰り返されることが多いのだが、この「MONDAYS」のループの間隔は1週間。しかも主人公たちが務めるのは広告代理店の下請けで、土日も含め会社へ泊まり込みもしている、由緒正しき“ブラック企業”なのである。
もちろん、劇中の1週間におけるほとんどの時間はカットされており、テンポ良く展開していくのだが……想像してほしい。1週間必死で務めて仕事を終えても、また月曜日に戻って全てがやり直しになる様を……。自分が当事者だと想像すると秒で気が狂う自信がある。
そして、ループに気づく(前のループの記憶を保持できる)社員は1人、また1人と増えていき、社員らが思いのほかループを受け入れていれていってしまう様に“怖面白さ”がある。
特に主人公の女性は、ループに気づいても「考えようによっては仕事がうまくなるまで何回でも同じことができる」といった謎の上昇志向とポジティブシンキングを持っており、同僚から「えっ……その考え方、怖い……」というツッコミが入ったりする。社畜根性が笑えるレベルをとっくに通り越して恐れ慄くレベルになっていることを、ループを持って示している、というわけなのだ。
さらに社畜根性が表れているのがもう1つ。どれだけ仕事をしてもループしてしまうのであれば、仕事を放り投げて遊んでいてもおかしくないと思うのだが、劇中で彼ら彼女らは「いつループから抜け出してもいいように、社会人として仕事はある程度はちゃんとしておこう」という結論に至り、毎回の1週間のループでそれを律義に貫こうとするのである。「もしかすると」という可能性を捨てきれず、やはり社畜根性に乗っかって仕事に従事することも、またゾッとさせられるし、リアルだと思わされるのだ。
超めんどくさいミッション
他にも、本作は“会社あるある”をループから脱出する物語にうまく絡めている。例えば、サブタイトル通り「上司に気づかせないと終わらない」仮説を実証するため、「上申制度」というアイデアが持ち出される。それは、上司にたどり着くまでに「段階」を踏むことで、自分よりちょっと上の役職(先輩)の者、そのまたちょっと上の役職の者へと申し伝えをして、最終的に目的の上司にきちんとメッセージを伝えるという、超めんどくさいミッションだ。
だが、会社のお偉いさんに意志を伝えるために、面倒な手続きやコミュニケーションが必要なのは、いかにも“会社あるある”だ。
さらに、上司に意志を伝えるところまでたどり着いたとしても、思いのほか(ループしているという事実への)理解力が低く、そのために社員たちがさらなる努力をしなければならない展開にも胃がキュッとした。しんどい。しんどいよ。
そして、ループものの定石といえる「前のループで学んだことを次に生かす」もここで存分に生かされている。例えば出先での交通事故も回避できるし、停電のタイミングにも備えられる。
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