ドイツのショッピングモールでこのほど、マンガ風の似顔絵を描いてもらえるイベントが開催され好評を博していました。いわゆる「巣ごもり需要」で海外でも日本のマンガが売上を伸ばしているという報道は、何度か目にしたことがあるのではないでしょうか。一方で、その後の展開はあまり知られていないのかもしれません。
筆者が訪れたのは、2月18日にフランクフルトの隣町オッフェンバッハのショッピングモール「KOMM」で開催されたイベントです。モール内には、ドイツの書店チェーン大手のThalia(タリア)の店舗があり、似顔絵イベントはどうやらタリアが主催しているようでした。しかも、料金はなんと無料ということもあり、開始前から長蛇の列ができていました。
当日、ドイツ初の女性マンガ家として知られるクリスティーナ・プラカさんやYaya-Chanさんなど5人のマンガ家・イラストレーターが参加しました。プラカさんは筆者も過去にインタビュー(関連記事)したことがありますが、自身が開設したマンガ教室の公式アカウントで似顔絵の作成風景を公開しています。
タリアのマンガ専門店の様子
会場の向かいにはタリアの店舗があり、隣には2022年にオープンしたマンガ専門店がありました。店内は、あらためて見るとこれだけのマンガ作品がドイツで出版されているのかと驚くほどの規模です。大まかなジャンルごとに分かれて陳列されており、店員の「推し」ポイントが細かく書かれたおすすめコーナーや、プラカさんの原稿が展示されていたりと工夫を凝らした店内でした。
マンガの売上が「爆発的に」増加
今回の似顔絵イベントを主催したタリア、オッフェンバッハ店のケースティン・フェーディッシュさんによると、タリアでは近年、マンガの売上が「爆発的に」伸びています。部分的には2倍、3倍に跳ね上がりました。こうした事情を受けて2022年7月に誕生したのが上記のマンガ専門店です。年末までのポップアップ店として開店しましたが、好調につき現在期間を延長しており、常設化する考えとのこと。
こうした中、タリアでは書店としてマンガの販売以外でも何か提供したいと思い、イベントを計画しました。似顔絵イベントだけでなく、2022年はマンガのワークショップも実施しました。
「イベントはショッピングモールからの支援もあり、来場者は無料で絵を描いてもらえますが、アーティストには謝礼が支払われています。このようなイベントは2022年も実施しましたが、今年は他の町でも予定しています。今後もさまざまな可能性を試してみたいと考えています」(フェーディッシュさん)
マンガ販売からマンガ文化の普及へ
ショッピングモールが協力し地元のマンガ家やイラストレーターに参加してもらい、地域のマンガ読者が集まる会場というのは、言ってみればマンガ文化を広める「場」とでも呼べるのかもしれません。
オッフェンバッハでの取り組みはまだテスト段階ですが、タリアはドイツを中心に展開する書店チェーンでドイツだけでも344店舗存在(記事執筆時点)します。もし、チェーン全体で実施されれば、大きな規模になる可能性があります。
また、アーティストに謝礼がきちんと支払われる仕組みに、今後も継続しそうな持続性を感じました。こういった取り組みが今後拡大するのか、気になるところです。
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