男子の舞台「Dancing☆Starプリキュア」は確かに「プリキュア」だった 20年間来のプリキュアファンが“ぼくプリ”に感じた「プリキュアの芯」:サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)
舞台上には、確かに「男の子のプリキュアたち」がいたのです。
2023年4月28日。突然発表された「男の子のみのプリキュア舞台化」の一報はプリキュアファンに大きな衝撃を与えました。賛否両論入り交じりSNSでも大激論。正直なところ、自分も初めて聞いたときは「それはもはやプリキュアじゃないだろう……」なんてことを思っていました。
しかし、僕は謝らなければいけません。実際に見て分かりました。「Dancing☆Starプリキュア」The Stage、最高にプリキュアでした。「プリキュアっぽい何か」ではなく、舞台上で踊る彼らは確かに「男子高校生のプリキュア」だったのです。
20年間プリキュアを見続けてきたアラフィフのおじさんが「Dancing☆Starプリキュア」のどこに「プリキュア」を感じたのか、記していきたいと思います。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
「大人になった女児たちの場所」
「Dancing☆Starプリキュア」The Stage(以降「ぼくプリ」)。「プリキュアシリーズ」放送開始20周年を契機に制作された、シリーズ初の舞台化作品です。ダンス部に所属する男子高校生たちがプリキュアに変身するという、これまでのプリキュアシリーズとは大きく異なるアプローチの舞台作品です。
プリキュアシリーズを立ち上げた東映アニメーションの鷲尾天さんは、「ぼくプリ」を「大人になった女児たちが集まれる場所」と定義しているように、明確に女児ではなく「大人の女性を意識したコンテンツ」となっています。
かつて応援してくださった「大人になった女児たち」が集まれる場所、それが「Dancing☆Starプリキュア」The Stageです。
鷲尾天 「Dancing☆Starプリキュア」The Stage パンフレットより
さらに同公演は、舞台作品ということもあり、規約で「未就学児」の入場は禁止となっています。つまり「未就学児が見られない初のプリキュアコンテンツ」ともなりました(後にネット配信で視聴はできましたが)。
観客の95%は女性客
正直なところ、開演前は「ぼくプリ」にあまり良い印象はありませんでした。
「プリキュアはあくまで女の子が主体」であって「男の子のみでプリキュア」が成立するとはとても思っていなかったのです。一人二人メンバーに入るのと「全員が男の子」では訳が違う。しかも男子高校生の舞台作品? いや、ありえない……なんてことを思っていました。
とはいえ、見ないで批判することはできません。「きっちり見届けよう」と11月3日13時の回を見に行きました。
お昼過ぎに会場の品川ステラボールに着くと、そこにはきれいに着飾ったお姉さま方の大行列。自分のようなおじさんは完全にアウェイです。
観客の内訳をざっと目視で確認すると、女性客95%、男女ペア2%、親子連れ2%、男性客1%といったところでしょうか。小学生と思われる女の子もちらほら見掛けます。
「東京千秋楽の1日前」という日で90%以上の席が埋まっている盛況っぷりです。
開演前のグッズの販売も長蛇の列。妖精バドドゥのポシェットやらフォトカードやらの売り切れ報告が飛びかい、こちらも大盛況。その人気の高さが伺えます。
王道のプリキュア
“プリキュアの生みの親”の鷲尾天さんが「ぼくプリ」の発表時に「破壊と創造」「20年で最大の挑戦」と言っていたので、どれだけ奇抜なものが出てくるのかと覚悟していましたが、ストーリーは意外なほどに「王道のプリキュア」でした。
プリキュアシリーズの1クール(1〜12話)までを一気に見た印象です。
「ボーイミーツフェアリー」から始まり、変身アイテム入手、主人公初変身、相棒の変身、先輩や後輩も変身し、友達の悩みを解決しつつの敵幹部登場、待ってましたの「ポーズを決めての5人集合名乗り」からの「合体決め技」で敵幹部との決戦、新しい謎が提示されて1クールが終了、という「プリキュア前半お約束の流れ」を2時間30分に凝縮した感じです。何なら「オープニング」も「エンディングダンス」もあります。
また「ダンスで勝敗を決めるダンスバトルもの」でもなく、普通にキックやパンチで戦います。敵の幹部に至っては大きな剣を振り回して戦いますし、プリキュアを構成する大切な要素である「肉弾戦」もきちんと描かれていました。
20周年のニチアサプリキュア「ひろがるスカイ!プリキュア」がやや変則的な展開をしている中、「変化球」と思われた男子の舞台プリキュアの方が逆に「王道のプリキュア物語」をやっていたのが興味深いところではあります。
仮にこの舞台作品を批判するのであれば「こんなのプリキュアじゃない!」ではなくて「創造と破壊とか言っておきながら、プリキュア過ぎるじゃないか!」になるのかもしれません。
というか、この作品を「プリキュアかどうか判断してやろう」なんてうがった目で見ていたのは自分のような頭の固い一部の古いプリキュアファンだけで、その観客のほとんどは純粋に「舞台作品」として見に来ていたのですよね。「純粋な舞台作品」としても最高に楽しかったです。
変身シーンが楽しい
プリキュアの花形である「変身シーン」。これを舞台作品でどう処理したのか? も気になるところでした(子ども向けのショーのように「入れ替わる」わけにはいきませんものね)。
この「変身シーン」がとても秀逸なアイデアでした。
変身の掛け声と共に、どこからともなく表れたダンサーたちと一緒に踊りながら変身開始。このダンサーズが「変身エフェクト」のように踊ります。最初の変身では踊りながらダンサーにパーツを付けてもらいつつ、子ども向けプリキュアショーでもおなじみの大きなパネルがスライドしてきます。このパネルでの演出とダンサーズのキレッキレの踊りで盛り上げながら徐々に変身。最後はキャスト本人によるダンスパフォーマンスで締める、といった変身スタイル。
変身にかかる時間を逆手にとってダンスを見せつつ変身するというアイデアで、これはあたかも「変身バンク」を見ているようなのです。この「変身シーンを見るのが楽しい」のもプリキュア的でした。
個人的にはキュアカグラ(緑のクール系男子)の「和傘が開いたり閉じたりしながらの変身」が最高にカッコよかったです。
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プリキュアが20周年を迎えられたのも、ひとえに子どもたちが玩具を買ってくれたからなのです。