【ゲーミングお嬢様 VS 対ありでした。】「人間性の良さが正しいバズを生む」「ウメハラの言葉を20回聞いた」 2人の作者に聞く“格ゲーお嬢様漫画”が生まれた理由
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「お嬢様」と「格闘ゲーム」を題材とし、ほぼ同時期にスタートした『ゲーミングお嬢様』『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~(以下、『対ありでした。』)』という2つの漫画をご存知だろうか。「ジャンプルーキー!」に投稿され、絵は荒削りながらも類稀なワードセンスで話題を呼んだ『ゲーミングお嬢様』と、その作者から「『ゲーミングお嬢様』の上位互換」と言わしめ、今年1月にはアニメ化も発表された『対ありでした。』。シンクロニシティを起こした2つの「お嬢様格ゲー漫画」は、強烈な個性を持ったキャラクターや濃密な格闘ゲーマー心理を描き、幅広い層から支持を集める人気漫画となっている。
この2つの漫画の作者はお互いの漫画をどう見ているのだろう――今回は、そんな疑問を解消するため『ゲーミングお嬢様』の原作を担当する大@nani先生と、『対ありでした。』の著者である江島絵理先生との対談を実施。「格闘ゲームを描くことの苦労」といった話題だけでなく、「バズるコンテンツを作る心構え」や「面白くするために“分かりやすさ”を犠牲にする」といった部分にまで話が及ぶこととなった。なお、この2人が直接会話するのは今回が初めてのことだという。
対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
人間性ができていないと正しい形のバズはできない
――本日はよろしくお願い致します。お二人の漫画は偶然にもテーマが一致していることで話題を呼びましたが、なぜ格闘ゲームを題材にしたんでしょうか。
大@nani(以下「大」) 以前ねとらぼさんで記事にしていただいた通り、「格ゲー勢の発言まとめ」を作ったときに上手くバズってしまって、じゃあ漫画にしてしまおうと思ってやってみたらここまできてしまったという感じですね。まさかこんなにうまくいくとは思ってませんでしたけど。
江島絵理(以下「江島」) 私の場合、趣味を探していたのがきっかけですね。漫画も趣味といえば趣味で、お金をもらわなくても描いていたんですけど、それで生計を立てるようになると漫画を描くことしかしなくなるわけですよ。それで別の刺激がほしくなって、格闘ゲームをはじめたという形です。
だんだんハマっていくと、散歩してるときとかも格ゲーのことを考えるんですよね。始めたてでよく分かってないけど、「今日のアビゲイル戦はどうしたら良かったんだろう」とか、「(持ちキャラである)キャミィで近づくためには何をしたら良いんだろう。今はアクセルスピンナックルをパなしてるけど、本当はダメなんだろうな……」とか。
それで徐々に漫画に描きたくなってきて、前に連載していた『柚子森さん』でも描いたりしていたんです。要するに“漫画と関係ない趣味がほしい”と思って格ゲーを始めたのに、ハマってくると漫画で描きたくなってしまったっていう……。
――なるほど、お二人とも「趣味の延長」みたいなところがあるんですね。
大 そうですね。そもそも自分としては連載になって仕事にするなんて一切考えてなかったですから。それがこんな形になってしまったんですけど。
江島 ほんと、すごいことになってますからね……。
大 まぁ運が良かったとしか思ってませんけどね(笑)。
――「運が良かった」と仰いますが、大@nani先生のTwitterを拝見していると「バズらせる力が高い人だな」という印象を受けます。
大 確かに、バズらせることは意識してましたね。絵の力がないので、見てもらうためにはTwitterでバズらせるしかなかったんです。
2019年の10月19日が「格ゲー勢の発言まとめ」をツイートした日なんですけど、ちょうど大きい台風があった日だったので、「この時間はみんなTwitter見るだろう」と思ってツイート投稿したりしましたね。結果的にぶっぱが通ったっていう感覚です。
江島 大@naniさんの立ち回りを見てると、本当にネットの歩き方を知ってるなって思いますね。私はTwitterをやればやるほど情緒不安定になっていくんですよね……。ネットに触れたのが大人になってからなので、ネットの呼吸みたいなのがあんまり分かってないというか。『ゲーミングお嬢様』を見てても、あんなにバズっちゃうと普通のメンタルではやっていけないんじゃないかと思っちゃいます。
大 言い方が難しいんですけど、「まともなことが言えている」という自信があるんですよね。その上で「バズらせる」ことができれば、ネット上では強者になれるんだと思うんです。
「炎上芸」って言葉があるじゃないですか、あえて炎上してインプレッションを稼ぐっていう。でも、そもそも炎上はするべきじゃない。多数派の意見をとった上でバズるのが一番良いはずなんですよ。だから、めちゃくちゃ過激なことを描いた上で、それでも“多数派からの共感”を生ませてバズらせるということを狙ってました。
今はそういうことがなんとかできているから、心穏やかでいられるのかもしれませんね。自分も大層な人間じゃないですけど、人間性ができていないと正しい形でのバズはできないと思います。
――お互いの作品は読んでらっしゃると思いますが、影響を受けたりするのでしょうか。
大 『対ありでした。』の9話なんかは「負けたな」と思いましたね。絵の力強さと狂いっぷりがやられたなと。
自分の作品は「人間として正しいことを言わせる」ということは意識しているんですよ。隆子(『ゲーミングお嬢様』の主人公)も格ゲーに関しては狂ってること言ってるけど、人間的には正しいことを言う。でも、こういうパワーのある狂い方には負けるんだな……と思いましたね。
江島 隆子さんは人として尊敬できますもんね。バイトしてるし。
――江島先生『ゲーミングお嬢様』からの影響という意味ではいかがですか?
江島 まず……めちゃくちゃパクリだって言われたんですよ(笑)。
大 偶然なんですけどね……申し訳ないです(笑)。
江島 いやいや(笑)。
ネームを描く時に「ニコニコ静画」で過去話を確認することが多いんですけど、『対ありでした。』で検索すると「他の人はこちらも検索しています」みたいなのが出ますよね。そこで「パクリ」みたいなのが出るんです。
で、「そんなに言うならマジでパクってやろう」と思って(笑)。それでやったのが「必要のない起き攻め昇天」。あと、調整の話では「格闘ゲーマ―の発言まとめ」を意識してやってます。その2カ所ですかね。これについては影響っていうか……パクリましたね(笑)。
――(笑)
大 『ゲーミングお嬢様』でも、「次は殺す」っていうセリフは『対ありでした。』のパクリですね。もともと入れたいセリフでしたけど、パクられたからパクリかえしたっていう流れで(笑)。
江島 『ゲーミングお嬢様』の「次は殺す」を見たときも、「比較画像貼ったほうが良いのかな?」と思ったんですけど、そういうことをTwitterで発言するのも怖かったりしちゃうんですよね……。
――お互いに影響を受けているようですが、やはりライバルとしての意識もあるんでしょうか?
大 もちろん。バチバチに意識してますよ。『対ありでした。』のアニメのエンドカードに「ゲーミングお嬢様」って書いてもらうことが目標です。
江島 (笑)。
「格ゲー 殺したい」で検索して『対ありでした。』ができた
――格闘ゲームを描く上で苦労することはありますか?
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