あなたは今の仕事で満足してる?――転職しまくり「FFIII」で職人を目指す:「ファイナルファンタジーIII」レビュー(4/4 ページ)
短い風水師ブームのあとに、空前のバイキングブーム到来!
各ジョブをちょこちょこと一日体験よろしくお試しでプレイしてみた結果が、ルーネス=ナイト、アルクゥ=風水師、イングズ=風水師、レフィア=白魔道師という新パーティー。個人的には狩人はコストがかかるし、学者は何だか地味で、やはり回復担当は必要だし、剣を扱う人はひとりくらい欲しいし、という結果がこれ。風水師は、「ちけい」を選択するとその場に応じた地形効果を繰り出す、というのが何となく気に入って、2人も投入してしまった。MPを消費しないというのも、何とも地球に優しい感じがしていい。
そんなノリで気分も新たにプレイしていたところ、次のボスはけっこう楽に倒すことができた。「お、風水師、いいんでねえの!」と調子に乗ってきた筆者。序盤のクライマックスを迎えて無駄にテンションが上がる。
ネタバレが多くなっていくので、いろいろ控えめにかいつまんでいく。さまざまなサブキャラとの出逢いを繰り返し、早くも追加ジョブが! 「竜騎士」、「バイキング」、「魔剣士」、「幻術師」、「吟遊詩人」が一気に追加され「もう、どうにでもしてくれ。何にでもなってくれ」状態に突入。ジョブのインフレが起きているー! とうれしい悲鳴をあげながら、さてさてどうしたものか、と悩んでしまうのであった。
これだけ面白そうな、魅力的なジョブが追加されてしまったがために、筆者の中の風水師ブームは脆くも崩れ去った。実社会においてもこのように、職業選択の自由がある程度ゆるいのなら、どれだけ楽だろうに。なんて派遣職のごとく次々と転職を繰り返す。またもやジョブを吟味した結果は、ルーネス=魔剣士、アルクゥ=バイキング、イングズ=バイキング、レフィア=白魔道師という編成。風水師ブームのあとは、どうやらバイキングブームが来たようだ。
ハンマーや斧をぶんぶん振り回すガテン系にして、やたらと防御も堅いバイキング。バイキング専用防具を買ってから、その堅牢さに惚れこんだ筆者は、アルクゥとイングズをとにかくバイキングとして鍛え上げた。もちろん両手に武器だ。ハンマーと斧で「10Hit!!」とかされたら、もう、モンスターが残っているわけがない。いや、残っているやつもいるけど。地球に優しい路線から一転、猛り狂う肉食動物的な方向へと突っ走ることになった。この何でもありな感じが本作の大きな魅力だと言えるだろう。
そんな間に、4人は地下に都市に空にと大活躍。バイキング万歳! な自分ではあったが、とある局面では「どう考えても全員竜騎士にしたほうがいい」と判断し、4人を竜騎士にしてピュンピュン飛びまくったりもした。もちろんそのおかげで、にっくきボスを倒すこともできたのだった。状況次第でフレキシブルに職業選択。例えば「俺、明日は身体動かしたいからガテン系、でも明後日はデスクワークがしたい」なんてワガママが実現できる。適材適所というわけだ。
キーワードは“ロハス”――地球と健康に優しいマゾパーティー誕生!
その後もバイキング、バイキング、魔剣士、白魔道師に戻って順調にストーリーを進めていた筆者であったが、ある場所で苦戦を強いられることに。とにかくザコが強いのである。何度全滅させられたことか。ダンジョンに潜っても、宝箱を取ったらすぐに“テレポ”で脱出してセーブしてまた潜る、という海女さんプレイをしたりして、戦々恐々としながら前進したものだ。
この頃になるとイングズをバイキングから黒魔道師に戻したりしている。やはり攻撃魔法があったほうがいい、と踏んでのことだ。物語も中盤にさしかかり、ようやく当初の「いつか思い切り俺プレイをしてやろう」という思いがむくむくと蘇ってきた。
もちろんまだ物語半ばなのだから、寄り道している場合ではない。そう。寄り道ではなく、普通に俺プレイでダンジョンに潜り、ボスを倒し、クリアをしていこうと思ったのだ。ただクリアしても面白くない……。「ジェネラリストよりスペシャリスト」、「芸は身を助く」、「水の一滴、岩をも砕く」そんな精神で、一流の職人を作り上げよう! という、若干マゾヒスティックな精神で臨んだ俺パーティー。それが……!
ルーネス=風水師、アルクゥ=風水師、イングズ=風水師、レフィア=吟遊詩人
というパーティーだ。やはりどうにも風水師が気になっていたようだ。よっぽど4人とも風水師にしようかと思ったが、それだと回復担当がいなくて、マゾプレイにもほどがある……というわけで、白魔道師を封印する代わりに「うたう」で“いやしのうた”を唄って回復できる吟遊詩人を選択させていただいた。
これは個人的には非常にロハス(Lifestyle of health and sustainabilityの略。効率優先の従来型の選択基準とは異なり、地球環境と健康を考えたライフスタイルのこと)なパーティーだと思っている。まずMPを使わない。とにかくMPの消費がない。魔法の残り使用回数を気にしなくていいので精神衛生上もいい。そのくせに複数の敵への同時攻撃にも長けている。仲間を思いやる詩人さんが攻撃の唄や防御の唄でサポートもしてくれる。全員後列にいてもまったく攻撃力が落ちない。風水師の持つベルとか、吟遊詩人の竪琴とか、何となくアイテムが平和的だ(本当になんとなくだが)。これらの要素を総合して、やはり「地球に優しい」エコとロハスのパーティーだと主張したい。
このロハスパーティー、実はけっこう活躍してくれている。超絶強力なとあるボスもこのパーティーでは誰も死なずに余裕で撃破できた。通常のザコ3匹なども比較的余裕を持って倒せている。吟遊詩人の“いやしのうた”は最初150くらいしか回復しなかったが、熟練度が上がるたびに、少しずつ1回の回復量が上がってきている。その成長を見るのも楽しい。ひょっとしたらこれでクリアできるんじゃん? と本気で思ったりもした。
しかし、俺プレイにつきものな弱点もたくさんある。まず、水場でのボス戦で各キャラの失態が露呈した。相手はボスだから“うずしお”(一定の確率でモンスターを消し去る技)が効かないのに、何度も“うずしお”を出しまくるのである。そんな状態なので、負けるのは必然。さらに言えば、白魔法を使える御仁がいないので、レイズがない。極力戦闘不能にならないようにやってはいるが、ダンジョン奥地で倒れたら全員切腹(リセット)くらいの勢いで臨んでいる。また、一気に回復する手段もないので、ピンチになるとみんながみんなハイポーションを使い出す。エリクサーなんてもったいなくて使えないから、全員ひーひーである。状態異常についても、ただの毒状態ですらポイゾナがないので、毒消しを使わなくてはならず、必然的に消費アイテムをためこむ必要がある。結果としてはお金がかかる。
何だこれは。何がロハスだ。ハイポーションなどの薬をガブガブ飲んでいる分、何だかむしろ不健康な気すらしてきた。絶対に彼らのおなかはハイポーションでたぷたぷになっているはずだ。ケアルのほうが健康なのか。もう、何が健康だかよく分からない。健康とか、どうでもいいじゃない、とすら思う。
そして極めつけの失態は、今現在後半戦でとある御仁に勝てないでいる、という、普通に詰まっている件だ。何度か全滅もした。しかし筆者は心に決めたのだ。このロハスな職人たちのパーティーで最後まで戦おうと。MPのない世界でクリアをしようと。そうなると筆者に残された手段はあれしかない。
「レベル、あげちゃいましょ!」
基本です。何事も基本なのです。
さて。ハチャメチャなプレイに行き着いた筆者のプレイリポート、いかがだっただろうか。このプレイが攻略上の正解かといえばそうではないが、不正解かといえばそうでもない。派遣社員やフリーターとして職を転々とするのも、ひとつの職業に打ち込み自己研鑽に励むのも、どちらもまた人生。当事者が納得していれば、充実していれば、それが正解なんじゃないの、と無理に人生と結び付けてる気もしつつ、今日もまたニンテンドーDSのスイッチを入れ、地形と唄に頼ったプレイを繰り返す筆者だった。
ファイナルファンタジーIII | |
対応機種 | ニンテンドーDS |
メーカー | スクウェア・エニックス |
ジャンル | RPG |
発売日 | 2006年8月24日 |
価格 | 通常版:5980円(税込)、クリスタルエディション:2万2780円(税込) |
TITLE DESIGN:YOSHITAKA AMANO
ILLUSTRATION:AKIHIKO YOSHIDA
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