「一般アニメの製作費の数十倍」はホント? Netflixはアニメ制作会社にとっての“黒船”になるのか 担当者に聞いた(2/2 ページ)
Netflixとアニメ
――オリジナルアニメにはアニメファンから大きな期待が寄せられています。なかでも一般的なアニメの製作費が2億円前後といわれるなか、Netflixオリジナルアニメでは数倍から数十倍の製作費がかけられているという話があり、アニメ関係者からも注目が集まっています。
中島さん:通常アニメの10倍の製作費を掛けている――といったお話があるのは把握していますし、アニメ作品に高額の予算を割いているのは事実です。ただ、全ての作品に高額の予算を掛けているかといわれればそうではありません。再生回数や安定した視聴時間が見込める作品に対して大きな予算を割くことはありますが、ニッチな作品にはそれなりの予算をということとなります。このあたりは企画発案のタイミングから、ファイナンスチームがシビアに費用対効果を計算しています。
――では今後製作費10億円の大作アニメが出てくることもあり得るということなのでしょうか。
中島さん:可能性としては十分あり得ると思います。
――ニッチな作品にも取り組むのはなぜなのでしょうか。
中島さん:毎日Netflixを使っていただくためには、幅広いコンテンツを提供することが重要で、誰もが知っている超大作だけで全てのお客さまに満足していただけるとは思っていません。「DEVILMAN crybaby」から「リラックマシリーズ(仮)」まで、多種多様な作品がそろっていることがNetflix最大の強みです。
――高額の予算をかける作品にはどういったものがあるのでしょうか。
中島さん:例えば4K/HDRのアニメ作品を作る、となれば必然的に予算は通常作品よりも多く必要になります。現在Netflixで取り扱っている作品の主流は2Kですが、今視聴しても、10年後に視聴しても劣化していないことが大前提です。これからは4K/HDRを水準にしていきたいと考えていますので、そういった技術力や長期に渡る作業にはきちんと予算をかけていきたいと思います。
――実写作品も含めて2017年の製作予算は60億ドル(約6700億円)ともいわれるNetflixですが、どの程度がアニメ作品に割り当てられているのでしょうか。
中島さん:具体的な数字は申し上げられませんが、かなり力を入れています。日本だけでなく、グローバル規模で期待されていることは確かです。
――制作会社との契約スタイルはどうなっているのでしょうか。
中島さん:いわゆる製作委員会モデルは一切採用せず、Netflixと制作会社とが、ライセンス契約を結ぶというシンプルなスタイルです。
――契約の期間などは定まっているのでしょうか。
中島さん:それは作品の形態や契約の内容によってマチマチです。
――制作スタッフからはNetflixと仕事をすることについてどんな声が上がっているのでしょうか。
中島さん:HDR、ドルビーアトモスでも配信されているアニメ「BLAME!」の吉平“Tady”直弘副監督/CGスーパーバイザーからは、HDRによって自分の頭の中の演出をそのまま画面に出せたとおっしゃっていただけました。Netflixはクリエイターをとても大切にしているので、そういったお声をいただけたことはうれしく思いました。
――現場のアニメーターさんたちからは「高額の製作費が出ているはずなのに、自分たちに支払われる賃金はいつもと変わらない」という声もあがっているようです。
中島さん:私たちは制作会社に対して、ライセンスフィー(契約金)をお支払いしていますが、その先のお金の使い方というのは制作会社の範ちゅうになります。アニメーターの方からそうした声が上がっているということは把握しておりません。
――聞きにくいことですが、お金を出すということは、作品の内容についても口を出すということでしょうか。
中島さん:社として「クリエイティヴ・フリーダム」という言葉をスローガンにしていることもあるのですが、基本的には余り口を出さないようにしています。もっと作品を良くするために、と意見を言うことはありますが、あくまでもディスカッションのような感じです。「自分たちが決定権を握っているんだ」というようなポーズを取ることはありません。その制作会社、そのスタッフさんを信頼してお願いしているのですから、後から細かいリクエストを出すことはほとんどないですね。餅は餅屋に任せるべきだと考えています。
――意見を言うこともあるということですが、Netflixならではの要望のようなものはあるのでしょうか。
中島さん:Netflixは世界190カ国に配信するサービスなので、作家性・メッセージ性が分かりやすいと多くの国・地域の方に作品の魅力を感じていただけるということはあります。ただこの部分を意識しすぎると、結局内容が薄まってしまいますので、日本でのオリジナルアニメの場合には「作家性を尊重しつつ、日本のお客さまに喜んでいただける、ハイクオリティーな作品」を第一に目指したいとお伝えしています。
――日本のTVアニメで重要視されるものの一つに、DVD/Blu-rayの売上があります。Netflixの場合、配信権をNetflix側で買い切るということですから、いわゆる“円盤”を売ることはできないのでしょうか。
中島さん:NetflixからDVDやBlu-rayを出すということはありませんが、DVD化/Blu-ray化はできます。作品にもよりますが、弊社が制作会社と結ぶのは基本的にSVODの独占契約のみですので、他社や制作会社が独自にマーチャンダイズしていただく分には問題ありません。またグッズなどももちろん同様です。
――そうなると、DVD勢とNetflix勢が競合してしまう形になりませんか。
中島さん:作品の配信権を持っていて、なおかつ全世界最速で作品を配信できるという強みがありますので、DVDやBlu-rayに関しては別のビジネスだと考えています。またNetflixは月額650円から、高くても最大1450円の視聴料で全てのサービス、作品をお楽しみいただけますので、安さにも自信があります。円盤を排除することに力を入れるよりも、エンターテインメントファンが作品を楽しめる環境と、Netflix自体のコンテンツの良さをアピールすることに力を入れていきたいです。
――日本の地上波放送アニメでは制作が放送に間に合わず“落ちる”という事象が問題となっています。Netflixの場合は製作期間はどの程度用意されるのでしょうか。またNetflixでアニメが“落ちる”ことはあり得るのでしょうか。
中島さん:Netflixオリジナル作品に関しては、配信予定日よりもかなり早めに納品していただくようなスケジュールになっていますので、基本的には“落ちる”ことはありませんが、配信日を変更することはあります。Netflix作品の特徴として、原則全話を一気に配信となりますので、13話完結でしたら、13話全てが納品されてから配信スケジュールを一般に発表するという形になります。ビジネス面とクリエイティヴ・フリーダムがマッチするスケジュールを契約時にじっくり話し合いますので、今のところ弊社都合での「スケジュールが折り合わずに断念」といったケースはありません。
――Netflixでもクオリティーの低さを原因とする「納品拒否」は起こりうるのでしょうか。
中島さん:有料で作品を配信している以上、クオリティーが低いものを出すということは絶対に避けなければなりません。自信を持って配信できるクオリティーになるまで、配信を遅らせるということもあり得ます。また基本的にあってはならないことですが、最悪の場合、配信前日にでも配信を止めることができるというのはインターネットテレビの特性だと思います。
――Netflixの作品には「字幕」「吹き替え」もついていますが、あれも制作会社側で作業をするのでしょうか。また何カ国語に対応しているのですか。
中島さん:Netflixオリジナル作品に関しては、基本的にNetflix側で作業しています。最大で24カ国語に対応していますが、作品によって字幕と吹き替えのあるなしがあるので、字幕の場合は平均すると20カ国語程度に対応しています。
――なぜ「字幕」「吹き替え」のあるなしがあるのですか。
中島さん:例えばファミリー向けの番組の場合は「吹き替え」があった方が良いでしょうし、大人向けの作品では「吹き替え」にそこまで力を入れなくても良いかもしれないといったマーケティングを行っているからです。
企画の成り立ち
――アニメスレートでのオリジナルアニメ発表からはかなり力を入れているなという印象を受けたのですが、具体的にはいつごろからオリジナルアニメの企画を進めていたのでしょうか。
中島さん:作品によって違うのですが、今回の発表したものでいうと「B: the Beginning」は、2年以上前から動いていた企画です。当初は「パーフェクトボーンズ」という仮タイトルが付いていたもので、IP(※)が全くないところから、イチから作り上げていっており、自信を持っている作品のひとつです。
(※)IP:インテレクチュアルプロパティ=知的財産。
――企画は制作会社からの持ち込みが多いのでしょうか。
中島さん:まだ始まったばかりのサービスなので、持ち込みというのはあまりありません。弊社からいろいろな会社にごあいさつへ伺った際に「これはどうでしょう」というお話が出て、企画や交渉に入るということもあります。
――ハフィントンポストが行ったポリゴン・ピクチュアズCEOの塩田周三さんのインタビューでは、Netflixは「買い付け担当者」個人の権限が大きいというお話もありました。
中島さん:会社のカルチャーとして、「フリーダム&レスポンシビリティ」というスローガンを掲げているので、それは事実です。誰の決裁もいらないし、自分で全てを決めていいというものですね。会社はプロとして私達を雇用しているので、自分で判断できない人間は逆にいらない、という意味です。ただ、ビジネスとして物事を考えた場合には、全て独断で決済するということはなく、情報を共有し合って、何が一番ベストなのかをディスカッションして決定することが多いです。
――アニメ作品の「買い付け担当者」は何人ぐらいいるのでしょうか。
中島さん:実写作品とアニメ作品の兼任で6人ほどで買い付けています。
――これからがNetflixが目指す方向について教えてください。
中島さん:全社においてNetflixオリジナルコンテンツに注力する、というベクトルで進めています。アニメーションに関しては、作品づくりにとても時間がかかるコンテンツなので、もう少しお待ちいただければという部分もあるのですが、先日のアニメスレートでは「日本にとってアニメコンテンツがいかに重要か」「いかに注目をされているか」が認識できました。「B: the Beginning」のように、イチから作り上げた作品であってもこんなに面白いんだ、また見たいと思っていただけるような作品をどんどん配信していきたいと思います。
作品の個別収支ではなく、有料会員を増やすことによりビジネスを成立させているNetflix。まだまだ始まったばかりの事業のため、ビジネス形態が今後変化していく可能性はありますが、有料会員の視聴時間数を伸ばすべく“多種多様な作品像”を求めるNetflixと、予算や出資者の意見に左右されない“自由度の高い作品”を作りたい制作会社の意向がマッチすることにより、NetflixオリジナルアニメがOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)形式に代わる新たな主要プラットフォームとなるかもしれないと感じました。
(Kikka:執筆・聞き手、福田瑠千代:聞き手)
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