欅坂46「不協和音」「サイマジョ」はどうやって誕生したのか 作曲家「バグベア」に聞く“ヒットの裏側”(2/3 ページ)

» 2018年12月27日 12時30分 公開
[Kikkaねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

――コンペのお話が出てきたので、気になっていたことを聞いてみたいと思うんですが、坂道AKBGの曲って秋元康さんの作詞がマストですよね。あの詞ってコンペの段階でもうできているものなのですか。

こぎみいい詞はいつも後からつけてくださいます。どの曲もすごくギリギリまで考えて、そのときに1番合った“リアルで鮮度の高い歌詞”をつけてくださるイメージがあります。コンペの段階では「どういう曲調で」といった要望がある場合がありますが、作曲家サイドが作ったとりあえずという感じの仮歌詞でコンペに提出する場合も多いですよ。

ここみらい曲調の指定がない場合もあります。

――欅坂46といえばデビュー曲の「サイレントマジョリティー」の印象が強い方も多いです。あの曲はどのように制作されたのでしょうか。

こぎみいい「サイマジョ」を作ったころは、当時僕たちが所属していた作曲家事務所から移籍するというタイミングだったのですが、曲が出せない期間がすごく長かったり、つらい時期でした。そういうときに「鳥居坂46(後の欅坂46)がデビューする」というお話や彼女たちが大変な状況に直面しているというお話が聞こえてきて、僕の中ではなんとなく「この子たちはここから戦っていくんだな」という印象を持ちました。そうこうしていたら、ここみらいが異常なぐらい「鳥居坂が〜」「鳥居坂が〜」と僕にプッシュしてきて、直感的にこの曲は書かなくちゃいけないと思ったんです。

欅坂46 「サイレントマジョリティー」


ここみらい普段自分からこぎみに「これをやりたい」ということはそんなに多くないのですが、なぜか鳥居坂のことがすごく気になったんですよね。

こぎみいいでも「デビュー曲に決まった」と言われたときも正直そこまでの実感がなくて、あんまり意味が分かっていなかったようなところもあったんですよ。

――その後「サイレントマジョリティー」は女性アーティストのデビューシングル初週売り上げ歴代1位を記録するなどの快挙で話題となりましたが、「これは大変なことになった」と感じられたのはどのタイミングでしたか。

こぎみいい当時タイアップしていた「メチャカリ」のCMを見たときですね。あのCMはメンバーごとに各エピソードが存在していて、当時はYouTubeで連続視聴できるようになっていたんです。それで何の気なしにそれを見始めたら、涙があふれて止まらなくなって、5〜6時間ぐらい泣いていました。普段からあんまり泣かないので、「人間ってこんなに泣くんだ」って思うぐらい自分でもびっくりしましたし、漠然と「この曲は跳ねるんだ」「ここからはじまるんだ」と思いました。

――メチャ泣きですね。涙が出てきた理由ってどんなことだと思いますか。

こぎみいいまさにメチャ泣きですよ(笑)。やっぱりあの曲ってあまりにもいい曲だし、秋元先生ご自身が気持ちなどをくんでくださる方というのもあり、歌詞が当時の自分たちの気持ちとも重なっていたことが大きいと思います。あのころは夜、社会人が働いていない時間に散歩をすることが多くて。歩いていたら何かをやっている気がするから、ひたすらここみらいと2人で夜空を見ながら歩いていたりしたんですけど、そういう悔しい気持ちとか、裏路地を歩いていたときの気持ちが「サイマジョ」の世界観にぴったりでした。あの曲に対して僕たちが思う一つのテーマ、「街の孤独」という感じがバグベアに合っているのかもしれません。



――ちなみにメチャカリのCMだと誰のエピソードがお好きですか。

こぎみいい僕は「ドキドキが人より多くてごめんなさい」というメッセージが印象的な土生ちゃん(土生瑞穂さん)ですね。

ここみらい私は渡邉理佐さんです。涙を流す姿が印象に残っています。

――「サイレントマジョリティー」と並ぶ人気を誇る「不協和音」もバグベアの代表曲の一つです。個人的には初めてパフォーマンスを見たときに衝撃が大きすぎて、「見ちゃいけないものを見た」感と同時に、「良い曲!」とびっくりしたのを覚えています。

こぎみいいありがとうございます。今だからこそ良い曲と認識していただけたり、評価してもらえて本当にありがたいのですが、「不協和音」が世の中に出てすぐのころは、YouTubeなどのネット上で賛否両論がありました。自分たちは絶対にいい曲だと思って出したので、精神的にショックを受けてしまって、「外に出るのも怖い」というところまで落ち込みました。しかしNHK紅白歌合戦などで披露してもらえたことで少しずつ「いい曲だ」と言っていただけるようになって、やっと「作ってよかった」と思いました

欅坂46「不協和音」


――2017年4月5日に発売されてから、12月31日の紅白までずっと苦しい思いをされていたんですね。

こぎみいい正直に言うと、紅白が終わるまでは本当に悩んでいました。いつかは評価される曲だと信じていましたが、2017年は本当に苦しい1年でした。

――「不協和音」はメッセージ性が強いからこそ、「特別だ」と言われることもあります。それについてはどう感じておられますか。

こぎみいい僕たちとしてはライブなどで披露されたりするとやっぱりうれしいです。さまざまな解釈がある曲ですが、ありがたいことに欅坂46のファンの方からサインを求められる際、「不協和音って書いてください」と言われることも多くて。苦しい時期もありましたが、今では「サイマジョ以上に刺さる曲になったのかな」と思うようになりました。

――でもそれは本当にそうだと思います。「不協和音」は脳にダイレクトに入ってくるので、思考能力を奪われたままそのあとずっと聞いてしまう……というような謎の中毒性があるというか。

こぎみいい「サイレントマジョリティー」はメロディーがしっかりしているから、一回見ると満足感がある曲だと思うんですが、「不協和音」で目指したのは、「何回も見ちゃうもの」でした。だから今仰っていただいた「謎の中毒性」というのはまさに狙いにはまっています。

――色々なお話を聞いて改めて「不協和音」の魅力に気づくことができたので、パフォーマンスがまた見たくなりました。欅坂46のメンバーに対する印象はいかがでしょうか。

ここみらい欅坂46(漢字欅)/けやき坂46(ひらがなけやき)の子たちってすごくいい子たちだなと感じることが多いです。先日卒業された志田愛佳さんに関しても、コメントを見るたびに「この子本当にいい子だったんだな」ってあらためて思いましたね。

こぎみいいお会いしたときに「漢字欅にまたいい曲書きたいな」と思わせてくれたのは、守屋茜さんですね。やっぱり目が強くて、あの目で見られたら「やらなきゃいけないんだな!」と思うというか、火をつけられた気がしました。最近欅坂46(漢字欅)には2期生、けやき坂46(ひらがなけやき)には3期生が入ってきたので、新メンバーの活躍にも期待しています。


欅坂46 乃木坂46 AKB48 HTK48 ラストアイドル バグベア 作曲家 作詞家

――欅坂46(漢字欅)には最年少メンバーとなる13歳の山崎天(崎はたつさき)さんも加入されましたが、若い子が入ると書きたい楽曲も変わってきますか。

こぎみいい変わると思います。

ここみらいそれこそライブなどを見るとインスピレーションもわいてきますし、見た方が絶対にわいてきやすいので、会ってみたいですね。

こぎみいい自分の場合はしゃべっているうちにその人のテーマソングがわいてくるというのがあって、話を進めていくうちにその人の曲が聞こえてくるんですよ。だからこそ一度会ってお話したいなと思います。

――これはいろいろな方に聞いているのですが、今年の欅坂46を漢字1文字で表すとしたら、何になりますか。

こぎみいい漢字一文字だと「鯉」ですかね。

――お魚の「鯉」ですか。

こぎみいい「鯉」ってドラゴンの元になっているっていう神話とかがあったりするじゃないですか。欅坂46はこれからもっともっと化けていくと思うので、2018年の漢字には「鯉」を選んでみました。

――面白い発想ですね、鯉。バグベア以外の作曲で、これはやられたな〜という曲はあったりしますか。

こぎみいいツキダタダシさんが作曲・編曲している、けやき坂46(ひらがなけやき)の「NO WAR in the future」です。ツキダさんとは仲がいいのでご本人にも聞いてみたら、同じことを言っていたんですけど、最初に聞いたときに「これは欅坂46(漢字欅)のシングル曲でも良いのではないか」と思ったんですよ。クオリティーもかなり高いし、技術面も光っているし、メロディアスでもあるし。

ここみらい奥で動いているメロディーも良いし、みんなで「NO WAR」いうところも盛り上がるし、あれは本当によく考えて作られた曲ですね。

こぎみいい本当にそうだと思います。イントロがクラブミュージックっぽいトラックから始まるところとか、かなりの工夫が施されているんですけど、それでいて複雑じゃないところなんかは本当に「うまいなぁ」と思います。Bメロのリズムに関しても「やられたな」と思いました。

――他にも注目している作曲家さんはいますか。

こぎみいいシラッティー(白戸佑輔さん)です。セカアイ(欅坂46の「世界には愛しかない」)もとても良いですし、ラストアイドルの「バンドワゴン」はものすごい名曲だなと思います。

欅坂46 「世界には愛しかない」


ラストアイドル 「バンドワゴン」


ここみらい井上ヨシマサさんもすばらしいですね。AKB48の「Everyday、カチューシャ」や「RIVER」、HKT48の「メロンジュース」などAKB48グループに多数の楽曲を提供されていて、私たち2人が尊敬している作家さんです。

AKB48 「 Everyday、カチューシャ」

被災地で頼まれたのは「チャリティーソングらしくないチャリティーソング」

――今年は岡山県が開催した「岡山県魅力発信プロジェクトPRイベント」にも出席されるなど、西日本豪雨災害のチャリティー活動にも積極的に取り組まれているお2人ですが、復興支援のきっかけは何だったのでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評