ねとらぼ

「この番組は新潟市とご覧のスポンサーでお送りします」

――今回はなぜ新潟市にメインスポンサーをお願いしたのですか

郡司さん:番組のスポンサーをI.Gで募っていた際に、以前木村副市長がテレビ広告にご興味があるとおっしゃっていたことを思い出し、「そんなに高い金額ではないのでスポンサーをやりませんか」とお声がけをしました。

――しかしいくらI.Gが放送枠を買いきっているとはいえ、テレビの広告料ってものすごく高いイメージがあるのですが

木村副市長:私たちも当初、「テレビの広告は効果的」というのは分かっていましたが、数千万円近い費用が掛かるんだろうなと思っていました。ところが郡司さんとたまたまイベントでご一緒したときに、「え、そんな金額でできるの?」というお値段を郡司さんがぽろっと仰ってびっくりしたんです。

郡司さん:広告料のはっきりとした額はいえませんが独立局の場合、提供額の費用対効果は非常に高いと思います。今回だと番組提供費のうちの4分の1程度を新潟市さんが持ってくださっていますが、それでも他のメディアと比較してそこまで高い金額ではありません。

――テレビCMは費用対効果が高いんですか

郡司さん:広告費については結構面白いので、一般の方も調べてみると興味深いと思います。例えば「駅貼り広告」や雑誌の広告などはネット上に価格が掲載されています。テレビCMの効果的なところは、何と言っても「映像・音楽・声」など視覚聴覚に訴えることができるということです。テレビCMの刷り込み効果というのはとても強いと思います。今回の「ジョーカー・ゲーム」の再放送を視聴し続けていただけるとおそらく「がっとらね!! にいがた!!」のフレーズが自然に刷り込まれるでしょう(笑)。今回はアニメ番組の放送にCMを流していただいているので、新潟市マンガ・アニメ情報館のCMは非常に訴求しやすいと考えています。視聴率も再放送なのに3パーセント近くありますから費用対効果はかなり高い結果になるのではないかと思います。

――ちなみに今回は代理店業務も担当されたとのことですが、実際やってみた感想は

郡司さん:スポンサー営業が大変、CMを流す順番を考えなくてはならない、などやってみないと分からない苦労がかなりたくさんあって、「代理店は大変」ということを痛感しました。社内では最近、「中CM」「ステブレ」「ヒッチハイク」「CM進行表」などテレビ局の編成局のような用語が飛び交っています(笑)。

――そもそも新潟市とI.Gさんとの関係性はどこから生まれたのですか

郡司さん:実はI.Gは東京以外にも新潟市にもスタジオがあって、例えばジョーカー・ゲームの第7話なども新潟スタジオが主力となって制作しています。きっかけは90年代のお話なのですが、弊社に所属しているアニメーターが実家のある新潟に帰郷しなくてはならないことになったんです。当初彼はこれを機にアニメーターを引退すると言っていたのですが、I.Gが「それなら新潟に作画スタジオを作って続けてみては」と提案し、I.G新潟スタジオを設立しました。現在も彼は新潟スタジオの所長を務めています。

木村副市長:先ほどお話した新潟市マンガ・アニメ情報館のこけらおとしも、I.Gさんのグループのジーベックさんが制作の「宇宙戦艦ヤマト2199」の作品展示でお願いしていたりと、I.Gさんとは何かとご縁がありました。また私が「攻殻機動隊」ファンであることも関係しているかもしれません。

――副市長は「攻殻」がお好きなんですか

木村副市長:すごく好きです。好きな女性のタイプは草薙素子(特に少佐のとき)。また業務でも個人的に笑い男のレポート用紙を使わせていただいたり、タチコマなどのグッズも結構持っています。


ジョーカー・ゲーム

木村副市長愛用の笑い男レポート用紙。秘書さんへの指示などをこれに書いて渡すとのこと(Amazonより)


郡司さん:え! それって私が昔作ったグッズですよ!!

木村副市長:そうだったんですか! これは奇遇というかご縁といいますか……びっくりです。

――グッズもお持ちということは、いわゆる「ガチファン」というやつですよね

木村副市長:ガチ……ですかね(笑)。もともとマンガやアニメは好きな方だったのですが、新潟市マンガ・アニメ情報館を作る際に近くのTSUTAYAさんのマンガ、そしてアニメのDVDを全部見て勉強しました。そのとき、あらためてマンガやアニメの可能性や素晴らしさに気づきました。ちなみに「攻殻」に関してはDVDも全部持っていますし、今日は取材後にI.Gさんのオフィスを見学させていただけるということで、それも少し楽しみにしてきました。

郡司さん:私が新潟に出張して、木村副市長や職員の方と打ち合わせをしていたときなども、木村副市長と私があまりにもコアな話題で盛り上がっていたので、職員の皆さんがドン引きしていました(苦笑)。


ジョーカー・ゲーム
実はガチファンだった木村副市長

――今後も行政、また新潟市がアニメ番組のスポンサーに入る可能性はあるのでしょうか

木村副市長:今回は試験的な意味合いもあって広告を出させていただきましたので、今後は検証を重ねてから検討する形にはなると思いますが、好意的な意見が多いと追い風になると思います。特にTwitterなどでたくさんの反響をちょうだいしたのですが、中には「新潟市にふるさと納税をしたい」という内容のものもあり、そういうお言葉をいただいたということは本当にうれしいことですし、広告の効果もあったのではないかと思います。

郡司さん:もし行政にスポンサーに入っていただける機会が増えるのならとてもありがたいですね。メディアの変遷はスピードが早く、今後はどうなるか分かりませんが、現在はテレビCMが広告主にとって最も費用対効果が高いと考えられますので。

木村副市長:新潟市は昔からの文化も大切にしていますが、同時に若者文化もとても大切にしている街です。「がたふぇす(にいがたアニメ・マンガフェスティバル)」というマンガ・アニメイベントを開催したり、NGT48劇場やスケートボードやストリートダンスなど若者の皆さんが興味を持ってくださるコンテンツを広げていこうと頑張っています。関東からは1時間40分程度で遊びに来られますので、まず一度遊びに来ていただきたいと思います!

郡司さん:新潟市にはかなり出張に行っていますが、お米のおいしさには本当に驚きますよ。泊まるホテルの朝ごはんのお米がまずおいしいんです。I.Gは現在「銀河英雄伝説」の新たなアニメ化を進めているのですが、その宣伝プロモーションも兼ねて、9月9日からは、新潟市マンガ・アニメ情報館にて、「35th銀河英雄伝説〜The Art Exhibition〜」の企画・展示を予定しています。石黒監督版の未公開のセル画や貴重な資料など、かなりチカラを入れてそろえましたので、皆さんぜひ新潟市に遊びに来てほしいです。




 近年YouTubeなどを使った行政の動画広告が乱立していることから「いかに印象に残るか」が重要になってきているという行政のPR業務。アニメの提供スポンサーという史上初の取り組みは、県外ではあまり知られていない「新潟市マンガ・アニメ情報館」についての宣伝はもちろん、「アニメに力を入れる行政、新潟市」というインパクトを十分与えることに成功したのではないでしょうか。今後も行政とアニメ産業との形式にこだわらないコラボレーションに期待が高まります。

 また行政や制作会社が、SNSでの反響をきちんと評価として受け止めていることも今回の取材を通してよく伝わりました。消費者や視聴者などが良いものには「良い」と発信することこそが、産業を発展させるのかもしれません。

(Kikka)

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