劇場公開予定から一転、Netflixで6月18日から全世界独占配信となったスタジオコロリドのアニメーション映画「泣きたい私は猫をかぶる」。アニメらしい愛くるしいデザインとリアルな動きが調和した猫の姿も好評ですが、エンドロールの「猫モーションデザイン」という聞き慣れない言葉にその秘密が隠されていました。

同作は、「ペンギン・ハイウェイ」(2018年公開)で注目を集めたアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」の長編アニメーション映画第2弾。もともとは6月5日に劇場公開予定でしたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の状況を踏まえ、Netflixでの全世界独占配信に切り替えるという決断も話題となりました。
原作がある「ペンギン・ハイウェイ」と異なり、オリジナルのアニメ作品として制作された同作は、猫に変身できる不思議なお面を手に入れた中学2年生のヒロイン・ムゲ(CV.志田未来)と、ムゲが思いを寄せるクラスメートの日之出賢人(CV.花江夏樹)を中心に、“猫”の世界を通して繰り広げられる青春ファンタジー。ストーリーもさることながら、ムゲが変身した猫の「太郎」を中心に、劇中で生き生きと動き回る猫たちには並々ならぬこだわりが見て取れます。



エンドロールで「猫モーションデザイン」としてクレジットされているのが、作画監督の横田匡史さん。スタジオジブリでアニメーターとしてのキャリアをスタートさせ、その後もテレビアニメ「七つの大罪」「僕だけがいない街」「魔法使いの嫁」などでも作画監督を担当した人物です。

猫の歩きや走り、人間から猫へ変身するときの様子、猫から人間に戻るときの動きなど、動作パターンの設定化を担当した横田さん。歩行だけでみても、常足や速歩、走りの中で宙に浮く回数でシングルとダブルの違いがある襲歩(ギャロップ)などがありますが、そうした“動作パターンの設定化”こそが「猫モーション」の肝といえそうです。なぜ設定化が必要だったのでしょうか。
「猫の魅力の1つとして動きのしなやかさがあると思いますが、骨格を理解しただけではそれらしい動きは描けない」と横田さん。そうした動きを表現するには、意識的に観察を繰り返して特徴をつかむ必要があるとしながらも、「最近は、(自分も含めて)動物を描き慣れていないアニメーターの方が圧倒的に多い」と謙遜しながら現状を説明。「歩きや走りといった基本動作はある程度共通認識として設定化しておかないとまずいと思いました」と、猫モーションの重要性を語っています。
同作の絵コンテを初めて見た際には、要求されているレベルの高さに驚きつつも、「猫アクションとキャラクターの感情芝居が自分に要求されていることなのだろうと思いました」と話す横田さん。「ひたすら猫だけ描いている時期が半年くらい続いたときは、さすがに少ししんどかった」と正直な心境も吐露してくれました。

同作は、「美少女戦士セーラームーン」「おジャ魔女どれみ」などで知られる佐藤順一さんと、長編監督デビューを飾った柴山智隆さんのダブル監督。横田さんは、「佐藤監督は、猫の毛の質感処理にかなりこだわっていたように思います。柴山監督は仕事量が膨大過ぎて、本当はもっとこだわりたいけど時間がない……っ! と苦悩していたことの方が多かったように思います」と制作当時を振り返りながら、2人のこだわりの違いを説明しました。
そんな横田さんに「もしムゲのように猫になれたら何をしたいか?」と質問してみたところ、「何もせずにゴロゴロしていたい。でもきっとすぐに飽きて、人間に戻りたくなると思います」とのこと。そんな横田さん渾身(こんしん)の「猫モーション」で生き生きと動き回る猫たちも、知られざる同作の見どころです。

(C) 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
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