約100年もの間、姿をほとんど確認できなかった“幻の鳥”が見つかりました。インドネシア・ブル島だけに生息する固有種「ブルインコ(Blue-fronted Lorikeet)」です。

 2026年4月、調査チームが島の険しい山岳地帯で撮影に成功。科学界から長らく姿を消していた希少なインコの生存が改めて確認されました。

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標本は7点だけ。ほぼ1世紀にわたり謎に包まれていた鳥

 ブルインコは、インドネシア東部のブル島にのみ生息するとされる小型のインコです。

 ライムグリーンの羽毛にオレンジ色のくちばし、青い額から後頭部にかけての羽色が特徴で、1920年代に採集されたわずか7点の標本をもとに初めて存在が記録されました。

 しかし、その後に状況が一変。研究者たちは標本が採集された低地林や中標高の森林で繰り返し調査を行いましたが、ブルインコは見つかりませんでした。記録が途絶えたまま年月が過ぎ、この鳥は“実在するのかさえ分からない存在”として語られるようになります。

 転機となったのは2014年です。バードウォッチングツアー中にクレイグ・ロブソン氏らが撮影した写真によって、ブルインコが絶滅していないことが判明しました。

 とはいえ、その後も詳しい生息地や個体数は分からないまま。確認例は依然として極めて少なく、2024年には米国鳥類保護協会(ABC)、Re:wild、バードライフ・インターナショナルによる国際プロジェクト「Search for Lost Birds」の“失われた鳥”リストにも追加されました。

 IUCNレッドリストでも、情報不足のため絶滅リスクを正確に評価できない「データ不足(Data Deficient)」に分類されています。

画像は「American Bird Conservancy」からの引用
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未踏に近い山岳地帯へ。過酷な14日間の調査でついに遭遇

 ブルインコを探す鍵は、「人がほとんど立ち入れない高地にいるのではないか」という仮説でした。

 ブル島最高峰のカパラトマダ山周辺は、鋭い石灰岩やトゲの多い植物、噛みつく昆虫などが行く手を阻む難所として知られています。そのため長年、本格的な調査がほとんど行われていませんでした。

 そんな中、2025年に地元登山家グループが標高およそ2712メートルの山頂へ至る新ルートを開拓。これにより、これまで到達困難だった高山林の調査が可能になりました。

 そして2026年4月、インドネシアの登山グループ「カナル・ブル」のハンドコ氏を中心に、米国鳥類保護協会やバードツアー・アジアなどの専門家が参加する調査隊が14日間の遠征を実施しました。

 登山開始から6日後、一行は雲霧林が広がる高原地帯へ到達。そこで突然、2羽の小鳥が木に飛び込む姿を目撃します。米国鳥類保護協会のジョン・C・ミッターマイヤー氏は当時をこう振り返っています。

 「双眼鏡で確認した瞬間、それがブルインコだと分かりました。興奮のあまり頭が真っ白になりました」

 最初の個体は撮影前に飛び去ってしまいましたが、2日後に再び出現。今度は鮮やかな緑色の姿を写真に収めることに成功しました。

 さらに遠征最終盤には別の2羽も確認され、鳴き声の録音にも初めて成功。バードツアー・アジアのガイド、スマラジャ氏は「ブルインコを見た時、涙が止まりませんでした」と語っています。

画像はInstagaramアカウント「birdlife.international」からの引用
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発見は朗報だが課題も。森林伐採や狩猟の脅威は続く

 今回の発見によって、「ブルインコは高地の森林に生息している」という説が有力になりました。一方、研究者らによると生息域は極めて限定的とみられ、個体数は少ない可能性があるとのことでした。

 また、インドネシア・オウム保護協会(KKI)が2023年から2025年にかけて実施した調査では、生息地周辺で森林伐採や鉱山開発が進んでいることも確認されました。さらに一部地域では鳥類の狩猟も続いているといいます。

 これまでブルインコが生き延びてこられた大きな理由の1つは、人が簡単に近づけない山岳地帯に暮らしていたことでした。しかし、今後は調査や観光などで人の往来が増える可能性もあります。

 保全関係者は、今回の再発見を出発点として、生息地の保護と実態調査を進める必要があると訴えています。

 約100年にわたり科学者たちを悩ませてきたブルインコ。今回その存在が改めて確認されましたが、その生態や個体数にはまだ多くの謎が残されています。“幻の鳥”の正体が明らかになるまでには、もう少し時間がかかりそうです。

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