西アフリカ・ナイジェリアの熱帯雨林で、長らく絶滅したと考えられていた小さなコウモリが45年ぶりに確認されました。発見されたのは「ショートテール・ラウンドリーフ・バット(標準和名:タンビカグラコウモリ)」で、体重はティースプーン1杯分の塩とほぼ同じという極小サイズです。
1970年代以降、ナイジェリアで確実な記録が途絶えていた種で、今回の発見は地域の生物多様性においても大きな意味を持つとされています。

アフィ保護区で見つかった、消えたはずの「コウモリ」
今回の発見は、ナイジェリア南東部・クロスリバー州に広がるアフィ山野生生物保護区で行われた調査の中で明らかになりました。
発見したのは生物学者のイロロ・タンシ氏で、2016年のフィールド調査中に偶然このコウモリを確認したのがはじまりです。
当初は他のコウモリとは明らかに違う個体として注目され、その後の分析で、1970年代以来、確認されていなかった希少種「Hipposideros curtus(ヒッポシデロス・クルトゥス)」であることが判明しました。
この保護区では、ゴリラやドリルモンキーなどの大型哺乳類とともに多くの希少種が共存しています。その一角で、小さなコウモリが静かに生き延びていたことになります。
“塩ひとさじ”ほどの体に秘めた超音波の才能
タンビカグラコウモリは、見た目も非常に特徴的です。大きな耳と複雑に折りたたまれた鼻を持ち、暗闇の中でも正確に飛行できる高度なエコーロケーション能力を備えています。
体重はわずか数グラム程度で、ティースプーン1杯の塩とほぼ同じ程度。光や音の変化に非常に敏感で、調査の際も赤色ライトを短時間だけ使用する必要があるほど繊細な生き物です。
大型のフルーツコウモリとは異なり、昆虫を主食としながら夜間に活動し、完全な暗闇の中で生活しています。その姿は小さいながらも、自然界に適応した精密な構造を持つ存在だといえます。
ナイジェリアに生息する“コウモリ大国”の実態
ナイジェリアはアフリカでも特にコウモリの多様性が高い国として知られており、確認されているだけで約100種、アフリカ全体の約3分の1が生息しているとされています。
その多くは森林や洞窟を拠点に暮らしており、地域の生態系に深く関わっています。昆虫を食べる種は農作物を守る役割を果たし、果実を食べる種は植物の受粉や種子散布に貢献しています。さらに、フンは肥料として土壌を豊かにするなど、見えないところで環境を支えています。
一方で、コウモリは長年にわたり、迷信や誤解の対象にもなってきました。その影響で狩猟の対象となることもあり、一部の種は深刻な減少に直面しています。

45年ぶりの再発見が意味するもの
今回再確認されたコウモリは、ナイジェリア国内でおよそ45年もの間、絶滅した可能性があると考えられていた存在でした。世界的にも約5年間にわたって記録がなく、生息地の森林伐採や環境変化によって、すでに姿を消したとも見られていたのです。
しかしアフィ保護区では、現在も小規模ながらコロニーが維持されていることが確認されました。ただし、その存在は非常に限られており、保護の重要性が改めて浮き彫りになっています。
発見に関わったタンシ氏は、その後も保護活動に携わり、山火事対策や地域住民との協働を通じて生息環境の保全に取り組んでいます。
それでも、この小さなコウモリがひっそりと姿を残していたという事実は、アフィ保護区の森が想像以上に息づいていることを感じさせます。発見の一報は、足元にまだ名前のついていない生き物がいるかもしれないという、そんな想像も呼び起こすものとなりました。