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「麻雀界に風穴を開けてくれた」“チームがらくた”と前原雄大プロの生き様

たろちん:Mリーグについてもお聞きしたいです。Mリーグの発足前と後では、麻雀界も大きく変わったと思いますが、佐々木さんが特に大きな変化だと感じたことは何でしょうか?

佐々木寿人:やっぱり、Mリーグが始まってから麻雀ファンが圧倒的に増えましたよね。僕たちもすごく責任を感じていますし、もっともっと大きな世界にしていきたいと思っています。

最近では子どもたちにも麻雀が親しまれるようになって、「これからどうやって広めていこうか」という話もあります。うちの会長の森山(日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ)は、「麻雀は面白すぎるから、あまり子どもには教えたくない」という思いもあるんです。それも当然だなと思いつつ、僕たちはこれからどうやって麻雀を広めていくべきなのか、考えていますね。

たろちん:最近はテレビゲームでも、「麻雀に似ているな」と思うものが多いと感じています。例えば『スプラトゥーン』シリーズも、誰とマッチングするか分からず、上手い人が仲間になったり敵になったりする。使える武器などにもランダムな要素がありますよね。

絶妙に勝ったり負けたりするから面白くて何度もプレイしてしまう一方で、きちんと技術的な要素もあって、上達する楽しさもある。そういうところが麻雀に似ているなと思います。確かに、子どもたちが麻雀を始めたら、「10歳の天才雀士」のような存在が出てくる可能性もありますよね。

佐々木寿人:いずれそういう人が出てくると、麻雀界も盛り上がっていいと思いますね。将棋の藤井聡太棋士のような方が麻雀界にも出てくる時代が、いつか来るのかなと思いながらやっています。

僕も来年50歳になるのですが、業界が盛り上がっていくためには、若い人たちにも盛り上げてもらわないと、麻雀界は広がっていかないと思っています。先輩方からずっと受け継いできた「後輩を育てる」という気持ちは強くあるので、そこは大事にしていきたいですね。

たろちん:本には、前原さんが「熱狂を外に」という思いを意識されていたと書かれていましたが、佐々木さんはどのように考えていますか?

佐々木寿人:その気持ちはありますね。前原さんは、勝利時の「がらくたポーズ」に批判が寄せられたこともあって……。少し落ち込んでいた時期もありました。

たろちん:前原さんが対局終了直後の卓上で右手を上げて天を指さすパフォーマンスをしたことですね。「ラオウポーズ」などとも呼ばれていました。

佐々木寿人:あの後、僕も「がらくたポーズ」をやったら、前原さんが「気持ちが安らいだ」と言ってくれたんです。そういったことも含めて、前原さんは「麻雀をどうやって盛り上げていくか」という思いを体現されている方でした。

僕もそんなに目立ちたがりではないんですが、できるだけ麻雀を広めていけたらいいな、という思いはあります。

たろちん:いろいろなチームの方がそういった試みをされていて、ファンとしては「面白いな」と思いながら見ています。一方で、前原さんの「がらくたポーズ」にも批判があったと聞くと、麻雀界にも過渡期ならではの難しさがあったのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

佐々木寿人:麻雀って、アガっても喜べないんですよね。前原さんは「選手の喜びがあまり伝わらない」と言われたらしいんです。それで前原さんなりに考えて、あのポーズで勝利の喜びを表現してみようと思ったんでしょうね。

実際にやってくれた勇気もすごかったですし、麻雀界が変わっていく一つのきっかけになったんじゃないかと思います。

たろちん:あのポーズを入りたての若手がやっていたら、また違った受け止められ方をしていたと思います。ベテランの前原さんがやったからこそ、意味があったのではないかと思いました。

佐々木寿人:そうですね。昔から麻雀界には、ガッツポーズなどをする文化がなかったので、あれは風穴を開けてくれたシーンだったと思います。

Mリーグのパブリックビューイングも始まって、ファンの方が勝利を喜んでくれている姿を見るのが、すごくうれしかったんですよね。「麻雀も少しずつ変わってきたな」と思っていますし、プロ自身も勝った喜びを少し表現してもいいのかな、とは思っていますね。

たろちん:佐々木さんは、自分が勝った対局は見るけれど、負けた対局は見ないと伺ったのですが、本当ですか?

佐々木寿人:そうですよ。体が、負けた試合の再生ボタンを押せなくなったんです(笑)。勝った試合なら押せるんですけど。なので最近のリーグ戦も、負けたので見られていないです(笑)。

たろちん:そのあたりも、プロによってタイプが分かれるのでしょうか?

佐々木寿人:そうですね。滝沢プロ(滝沢和典プロ)は逆のタイプで、負けた試合をよく見ると言っています。前原さんもそうでしたよ。「負けた試合を見ることに意味がある」と言っていました。そこは僕とは違います(笑)。

麻雀はメンタルを保つことがすごく大事なので、負けた試合を見てぐったりするよりも、勝った試合を見ていいイメージを持って次の試合に臨む方が、僕には合っていると思っています。

負けた日は、本当にぐったりして帰ってくるんです。でも、負けることは何度も経験しなければいけないので、できるだけ負けた試合を思い出さないようにしています。

たろちん:選手によって、かなりタイプが違うんですね。本にもたくさんのエピソードが書かれていますが、佐々木さんにとって「チームがらくた」はどのような存在でしたか?

佐々木寿人:麻雀界初のユニットだったと思っているんですよね。2人の性格もすごく合っていたので、番組でチームを組むのもすごくやりやすかったですし、イベントもやらせてもらいました。僕としては非常にありがたい存在でした。販売したTシャツを着てくれるファンの方もたくさんいて、うれしかったです。

たろちん:「チームがらくた」があることで、お二人ならではのカラーを出せた部分もあったのでしょうか。ご自身でも「チームがらくた」らしさを意識することはありましたか?

佐々木寿人:ありました。2人のカラーを出せたと思っています。森山さん(日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロ)が命名して下さったんですけど、「チームがらくた」という名前もファンの間に広まってくれましたし、ありがたかったなと思います。

「がらくたリーチ」って、お客さんが喜んでくれたりするんです。正直、プロらしからぬリーチもあるんですけど、「これが見たくて地方から来たんです」と言ってくださる方もいて。そういうときは「ああ、よかったな」と思いますね。

たろちん:「がらくたリーチ」と名前が付いて、自分たちの戦法として定着するってすごいですよね。

佐々木寿人:そうですよね。別に必殺技でもなんでもないんですが(笑)。実況の方が「がらくたリーチ」と言ってくれたりするので、うれしいなと思います。

たろちん:視聴するファンとしては、「がらくたリーチ」のように必殺技のような名前が付いていると、見ていて分かりやすいですし、麻雀初心者の方も入りやすいのではないかなと思います。

佐々木寿人:前原さんが昔、「ハラハラドキドキさせて勝つのがスーパーヒーローだ」と言っていて、それがずっと頭に残っているんですよね。そういう“必殺技”のようなものがあるのは、うれしいことだなと思います。

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「年の離れた親友」前原雄大が最後まで貫いた“麻雀に生きる”

たろちん:今回の『麻雀に生きる』を執筆されたり、前原さんの文章を読んだりする中で、あらためて気付いたことはありましたか?

佐々木寿人:前原さんの体のことなど、本を読んで初めて知ったことがたくさんあったんです。Mリーグの期間中も、僕が知らなかったことがたくさんあって。「こんなに大変な中で打っていたんだ」「こんな状態でやっていたんだ」と思いました。体調は相当きつかったと思います。

たろちん:前原さんは、一緒にいるときも体調の悪さを表には出さなかったんですか?

佐々木寿人:全然出さなかったので、分からなかったです。すごいですよね。体調が悪いことを周囲に気付かれないようにしていたんだと思います。

たろちん:前原さんの「麻雀に生きる」という言葉を、佐々木さんはどのように捉えていますか?

佐々木寿人:前原さんの最後の試合は達人戦(「達人戦〜GREAT LEAGUE〜」第7節)で、チューブをつけながら、最後の最後まで戦ったんですよね。決勝戦まではいけませんでしたが、本当に立派な麻雀プロとしての人生と生き様を、僕たちに見せてくれたと思っています。

すごくつらい状況で打っていたと思うんです。それでも、僕と最後に「鳳凰位決定戦」で打ちたいという思いでリーグ戦に臨んでいらっしゃった。その夢は叶いませんでしたが、その姿勢が本当にすごいなと。その思いを胸に、僕もこれから打っていこうと思っています。本当に素晴らしかったです。

実は、対局室と控室のほんの数メートルの移動でも、ゼエゼエと息を切らしながら歩いていらっしゃったんですよ。その姿を見ているので、本当にすごいなという気持ちしかないです。最後は「みんなに迷惑をかけちゃうから」と辞退されたんですけど、それでも「最後まで卓で打ち続けたい」という思いがあったんでしょうね。

僕と前原さんは、「鳳凰位決定戦」では一度も一緒に打ったことがないんです。それが叶わなかったことは、本当に残念です。

たろちん:最後に、本書の読みどころを教えてください。

佐々木寿人:僕も知らなかったことがたくさんあったんですが、前原さんがどんな思いで最後まで牌を握っていたのかが書かれています。そこはぜひ注目して読んでいただきたいです。

前原さんとは、一言で表現すると“年の離れた親友”という関係だったと思っています。大先輩なんですが、遠慮なく付き合えて、すごく話しやすかった。本には、そんな僕と前原さんとの関係性についても書かれています。

前原さんは本人いわく、「佐々木寿人マニア」だったそうです(笑)。そう言われて、うれしかったのを覚えています。X(Twitter)でもよく言っていたんですが、僕が出るものは試合も解説も含めて全部見てくれていたんですよ。前原さんは全試合を見ることで知られていましたが、特に僕の試合は全部見ていたと思います(笑)。

たろちん:本当のマニアですね(笑)。前原さんから「昨日の試合が~」みたいに、何か言われることもありましたか?

佐々木寿人:「私に対する褒めが足りない」と言われたことがありました(笑)。解説中に前原さんの話を出すことがあったんですが、そういうときに「もっと私のことを言う回数を増やして」とか、「私のことを褒めて」と言われたことがありました(笑)。

(了)

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『麻雀に生きる』

 「叶うことなら、卓上で命をまっとうしたい」。日本プロ麻雀連盟1期生として、昭和、平成、令和と変わりゆく時代の中で、常に第一線で戦い続けた前原雄大プロが、2025年10月12日、急逝された。68歳だった。圧倒的な強さとその存在感ゆえ、麻雀ファンから“総帥”と親しまれた前原プロが遺した言葉「麻雀に生きる」とはどういうことのなのか。
 本書では、A1リーグをはじめ、全タイトル戦から身を引くことを決断した直後、自身の生き様を振り返り、伝えたかった思いを告白。前原プロと愚直な剛腕コンビ《チームがらくた》を結成し、MリーグでもKONAMI麻雀格闘倶楽部で共に戦っていた佐々木寿人プロは、その強さの真髄を振り返る。

 さらに“雄大伝説”をよく知る日本プロ麻雀連盟会長・森山茂和プロをはじめ、同1期生として時代を切り開いて来た伊藤優孝プロ、KONAMI麻雀格闘倶楽部ファミリーとしてMリーグを戦った高宮まりプロらが、その知られざるエピソードを語り継ぐ。“雄大”の名付け親でもある作家の故・伊集院 静さん(享年73)が題字を書かれた前原プロの伝説エッセイ『勝手にしやがれ』も厳選収録。68年間の足跡から「麻雀に生きる」という言葉に込められた想いをたどる。

出典:Amazon.co.jp

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