米アラバマ州の軍事施設地下にある洞窟で、目も色素も持たない新種の魚が発見されました。

 この洞窟は約40年にわたって調査が続けられてきた場所でした。研究者たちは、この魚が既知の洞窟魚とは異なるまったく新しい系統に属すると確認し、「世界で最も希少な魚の一つかもしれない」としています。

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40年調査された洞窟に突然現れた新種の魚

 新たに発見されたのは、Demogorgonichthys arcanus(デモゴルゴニクティス・アルカヌス)という新属新種の洞窟魚です。通称は「デーモン・ケイブフィッシュ(悪魔の洞窟魚)」と呼ばれています。

 発見場所は、米アラバマ州ハンツビルにある米陸軍レッドストーン・アーセナル基地内のボブキャット洞窟。この地下洞窟群は、かつて化学兵器生産の拠点だった軍事施設の地下に広がっており、絶滅危惧種のアラバマ洞窟エビが生息することから、研究者たちが約40年間にわたって調査を続けてきた場所です。

画像は学術誌『Scientific reports』からの引用(Photo credit by M.L. Niemiller)

 2025年初頭、アラバマ大学ハンツビル校の洞窟生物学者マシュー・ニーミラー氏が定期調査中に、青白く目のない魚を発見しました。頭の後ろのこぶや長く平らな鼻先など、これまで知られていた洞窟魚とは異なる特徴を持っていたことから、標本はオーバーン大学へ送られました。

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遺伝子解析で新属新種と判明

 CTスキャンによる骨格解析や遺伝子解析の結果、この魚は既知のどの洞窟魚グループにも属さないことが判明しました。体色を持たず、吻の形や体形、ひれの骨の構造などが近縁種とは明確に異なり、さらに光を感じるためのタンパク質「ロドプシン」に関わる遺伝子の一部が欠損していました。

 近縁のサザン・ケイブフィッシュはわずかな光に反応しますが、この新種はロドプシンが機能せず、視覚能力が完全に失われていると考えられています。

 ニーミラー氏は、この魚と近縁種が異なる仕組みで視覚を失ったことは、似た環境に適応する中で別々に同じ特徴へ進化する「収斂進化」の興味深い例だと説明しています。

画像は学術誌『Scientific reports』からの引用(Photo credit by M.L. Niemiller)
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名前の由来は「ストレンジャー・シングス」の怪物

 デモゴルゴニクティス(demogorgonichthys)という名前は、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス』に登場する怪物デモゴルゴンに由来します。さらにその語源は、ジョン・ミルトンの『失楽園』にも登場する冥界の悪魔までさかのぼります。

 種小名のアルカヌス(arcanus)は、ラテン語で「隠された」「秘密の」を意味し、長年誰にも気づかれず地下深くに潜んでいたこの魚を象徴する名前となりました。

 研究者たちはこれまでに約20匹程度しか確認しておらず、その多くは人が立ち入れない地下の帯水層で一生を過ごしている可能性があります。現在確認されている生息地はボブキャット洞窟だけで、国際自然保護連合(IUCN)の基準では「絶滅危惧IA類に相当する可能性が高い」とのこと。

 一方で、この魚が生き延びてこられた背景には、軍事施設内で周辺開発が制限されてきたことも関係しているとみられています。研究者は「これほど綿密に調査されてきた場所で新たな生物が見つかるのは非常に珍しい。私たちの身近な環境には、まだ知られていない生き物が数多く残されていることを示す発見です」と話しています。

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