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10月9日より映画『バイオハザード』が公開中。同作は全米で9月18日より公開され、10月5日時点で全世界興行収入が約2億4600万ドル(約387億円)とも報じられるなど、大ヒット記録を伸ばし続けている。さらに、映画批評サービス「Rotten Tomatoes」で批評家支持率が96%に到達(10月上旬現在)するなど、作品評価も絶賛に次ぐ絶賛の大成功となっている。

映画『バイオハザード』ポスタービジュアル 10月9日(金)全国の映画館で公退屈する隙開
そのことを踏まえて、筆者個人の結論から先に言っておこう。本作は2026年の映画の中でもベスト級。終盤には本当に涙が出てくるほどの「ハチャメチャな面白さ」があり、「『バイオハザード』というゲームの完璧な映画化であった!」と。そして、ゲームの実写映画化という枠組みにおいて最高傑作だったとも断言しよう。
ライター:ヒナタカ

アニメとインディーゲームが好きで映画ならなんでも観る雑食系ライター。「All About ニュース」「マグミクス」「NiEW」のほか、新たに「ダ・ヴィンチWeb」でも連載を開始。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』
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まぎれもなく『バイオハザード』の実写映画化だった
言うまでもないが、もともとの『バイオハザード』は、世界的に大人気のホラーゲームシリーズだ。後述もするが、同ゲームの実写映画化作品には、2001年から6作が作られたシリーズと、2021年制作のリブート作品があるものの、いずれも高い評価を得ていたとは言いがたい(他にも3DCGのアニメ映画版やNetflix配信のドラマシリーズもある)。
だが、今回の2026年版は、過去の映画作品とは一線を画する特徴があり、それをもって「究極の『バイオハザード』の映画が誕生した」と断言できる。
それでいて、今回はゲームでおなじみのキャラクターはほぼ登場しないし、物語そのものもほぼオリジナルだ。そうなると「『バイオハザード』である意味がないんじゃないの?」「有名なタイトルの名前を冠しただけでは?」」と思われるかもしれないが、もちろんそんなことはない。
こちらも詳しくは後述するが、「『バイオハザード』というゲームの本質を理解して、大きな愛を捧げているからこそ」の内容になっているのだ。
それでいて、本作の面白さの本質はとてもシンプルで難しいところはいっさいなく、ハラハラドキドキするシチュエーションのつるべうち。しかも、上映時間は1時間34分とタイトで退屈する暇はいっさいない。そのため、本作はゲームをまったく遊んでいなくても問題なく楽しめるとも、断言しておこう。
ファンだけがわかる面白さを強いて挙げるのであれば、ゲームシリーズの中では『バイオハザード2』と『バイオハザード4』を参照していると思しき場面が多く、そちらを遊んでいればニヤリとできる、というくらいだろう。つまり、言ってしまえば、予備知識はいっさいなくても構わない。
R15+指定も大納得の「容赦のないグロ」は「もはや笑える」?
注意点としては、「刺激の強い肉体損壊がみられる」という理由でR15+指定となっていることがある。過去の『バイオハザード』の映画は、日本では最高でもPG12指定のレーティングだった。つまりは、そちらとはケタ違いの「容赦のないグロ」が待ち受けていることは覚悟してほしい。
ただ、そのグロがあまりにエクストリームで、「もう笑ってしまう」領域になっているため、それほど陰惨で後を引くものではなく、もはや「お化け屋敷」または「汚い花火大会」的な感じで気負いすぎることなく楽しめるのでは? とも個人的には思える(感じ方には個人差があります)。
しかも、本作はその「グロすぎて笑ってしまう」ほかにも、「もはやコメディでは?」「いやハッキリ笑いを取りにいっているだろ!」となる要素もふんだんにある。「怖さよりも笑いが勝つ」ような、ホラーよりブラックコメディ的ですらあるテイストは、賛否を呼ぶポイントかもしれないが、本作の一番の魅力とも言い換えられるだろう(でも怖い場面はちゃんと怖い。なお感じ方には個人差があります)。それに伴う良い意味での「露悪さ」や「見世物感」は、むしろ映画の原初的な楽しみに立ち返ったようでもある。
なお、「大きな音でワッと驚かせる」、いわゆる「ジャンプスケア」の演出が序盤にあるが、その数は少なく、余計な効果音を足したりするものでもないので、苦手な人も許容はしやすいと思う。それよりも派手な見せ場が目立っているし、後述する「観ることしかできない」映画ならではの恐怖が秀逸でもあった。
ちなみに、公式から「一部、光の点滅が続くシーンが含まれております」というアナウンスがあるので、こちらも留意の上でご覧になってほしい。
さてさて、そのほかのことは何も知らなくてもいい、「ゲームのファンでも、そうでなくても、15歳以上かつグロOKで、とにかく面白い映画を求める人はいますぐ観に行って!」で終わりにしてもいいのだが、ここからは内容に踏み込みつつ、魅力を紹介していこう。
※以下、2026年版の映画『バイオハザード』の決定的なネタバレを避けつつ、一部内容に触れています。ご注意ください。
「ステージクリア」や「カメラワーク」で、ゲームを「映画として」体感できる
2026年版『バイオハザード』の物語は「超」がつくほどにシンプルだ。「配達人である主人公のブライアンが、“報酬2倍”という条件につられて、“ラクーンシティ総合病院”へ“ある医療品”を届けに行く」。本当にそれだけだ。それ以外のことはいっさいしないと言っても過言ではない(だが予想外のツイストもある)。

それでも、まったく飽きることがないどころか、映画の、そしてゲームの「快楽」に満ち満ちている。何しろ本作のコンセプトは、「もしゲーム『バイオハザード』の世界に放り込まれたらどうなるか?」であり、ザック・クレッガー監督自身が「何度も何度もプレイしてきた」と語るほどのゲームファンだ。その時点で「サービス満点」になることはほぼ確定なのだが、さらに特筆すべきは「ゲームプレイの感覚が映画体験へとコンバートできている」ことだろう。
たとえば、ザック・クレッガー監督が語るゲーム的演出の一つとして、「7〜8分ごとに舞台となる場所を切り替える」ことがある。それはさしずめ「ステージをクリアして次に進む」という感覚だ。単純に「雪道から納屋へ、農家の家へ、廃トンネル、そして……」と、舞台がバラエティ豊かに変わっていくこと自体が楽しい。しかも、襲いかかるクリーチャーはゾンビだけでなく、その「襲い方」も多種多様で、ゲームを遊んでいても予想外のサプライズ、いや「トッピング」があるのも嬉しい。

さらに、重要なのはカメラワークだ。クレッガー監督が「カメラが暴れまわる、殴り合いのような体験を目指した」「本能に訴える生々しさに振り切った」と語っている通りの躍動感、いや暴力性がある。大胆に回り込むカメラが逆説的に“死角”をも意識させ、どこから驚異が襲いくるのか分からない怖さもある。かと思えば、『バイオハザード4』に近い「プレイヤーの後部から捉えたショット」もあり、映画を見ながら標的を仕留めようとする主人公の“視点”を体験できたりもするのだ。
また、キャラクターを操作してインタラクティブな楽しみ方ができるゲームとは違い、映画は「観ることしかできない」受動的な媒体だ。しかし、その「観ることしかできない」こと、もっと言えば「どれだけ異常事態が起こっても内容にコミットできない」からこそ、恐怖につながっている場面もあった。
さらに、ネタバレになるので詳細は控えるが、その「観ることしかできない」映画ならではの特徴が、後述するコメディ要素にも昇華されていてニヤニヤできるし、まさかの「ホロリと泣かされる」場面でも生かされていたのだ。その先のクライマックスは「もはやカオス」なハチャメチャさがあるようでいて、皮肉めいた展開が連続している、つまりはしっかり「計算」されているのも美点だ。

その他、ゲームでおなじみの「タイプライター」「救急スプレー」「緑のハーブ」といったアイテムが映る場面もあったりするが、それは本質的な魅力ではない。だが、そちらも「あ、ここにあった!」と見つけられたりする、イースターエッグ的な楽しみ方ができるだろう。
「銃のド素人」である主人公のリアクション芸がスベり知らず
さらに大きな特徴は、主人公のブライアンがどこにでもいる普通の配達人であり、ほんのりクズな言動をする卑近さもあり、さらには銃の扱いがド素人という点だろう。さしずめ、「ゲームを初めて遊ぶプレイヤーが、『バイオハザード』の世界に放り込まれたらどうなるか?」を、まさに体現した存在であるのだ。
そんな彼が数々の異常事態にほんろうされる様が、それだけで笑える。いわば、「リアクション芸」が抱腹絶倒の領域に達している。映画やドラマにおける笑いは、「本人が至って大真面目」だからこそ笑えるというケースが多いが、それを地でいく面白さなのだ。ここは良い意味で原作ゲームからやや離れた(もしくは『バイオハザード4』で皮肉を言う主人公・レオンにも通じている?)魅力だろう。
また、彼がド素人なりに使おうとする銃は、初めはハンドガン、次はショットガン、そしてMP5 サブマシンガンと、段階を踏んでグレードアップしていく。行く先々で銃や弾薬を現地調達していく、時には残りの弾薬を気にする感覚も、まさにゲーム的かつ「『バイオハザード』らしさ」だ。
また、ゲームでは「銃はだいたいその方向を向いていれば当たる」という、現実的ではないが、プレイヤーをイライラさせない、良い意味での「ウソ」があることも。しかし、今回は映画という「リアル」寄りの表現方法もあってか、ド素人のブライアンは銃をまったく上手く使いこなせず、弾を込める時にはドラえもんが緊急事態に他の道具まで出しまくる勢いで大慌てするし、言うまでもなくミスショットばかり。マイナスにも程がある事態を招いてしまうので、やっぱり笑ってしまう。
しかし、その「映画らしいリアル」を前提にしつつ、「原作がゲーム」であることをメタフィクション的に示しているとさえ言える、とある衝撃的な展開とセリフも待ち受けていた。ここで筆者は爆笑しつつ、感動して涙を流してしまったのだ。
さらに楽しめる要素に「字幕」もある。ブライアンはことあるごとに「F◯CK!」と言うのだが、その時の字幕が「キショい」「グロすぎ」などバリエーション豊かなため、笑いがさらに増す。
特に、終盤のとある「来るぞ来るぞ……」と思わせてからの「やっぱりそうなった」場面での「F◯CK!」に、「完璧な訳」の字幕がついていたため、こちらも笑いを超えて感動してしまった。字幕担当の稲田嵯裕里も最高の仕事をしていた。きっと、いや間違いなく、『鬼滅の刃』の我妻善逸でおなじみの人気声優・下野紘がブライアンの声を担当した吹き替え版も、さらなる笑いを届けてくれるはずだ。
ちなみにクレッガー監督は、試写会を重ねて観客から「可笑しすぎる」という意見が寄せられたため、これでもできる限りジョークを削っていたらしい(IMDbのトリビアより)。確かに、実際の映画以上にコメディ要素が多いと、「もとはホラーゲーム」という印象が崩れてしまったかもしれないので、これで最適のバランスだったのだと思う。
余談だが、クレッガー監督の前作であるオリジナル企画のホラー映画『WEAPONS/ウェポンズ』も、高い評価を得ていた。こちらは不穏な展開が続くようでいて、とある場面から「笑い」に転じていく様が楽しい快作だった。尖った作家性と抜群のエンタメ性を併せ持つ作家が、世界的人気のシリーズで遠慮なく「らしさ」を見せつけ、なおかつ原作のポテンシャルも最大限に生かした映画を生み出したというのが嬉しい。クレッガー監督には今後もゲームの実写映画化を任されてほしいし、個人的にはとある理由から『塊魂(かたまりだましい)』を映画化してくれると信じている。
さらに余談だが、今回の2026年版『バイオハザード』で主人公のブライアンを演じ、『WEAPONS/ウェポンズ』にも出演している俳優オースティン・エイブラムスは、早くも10月16日に日本で公開される『クジラに落ちた男』でも主演を務めている。原作ゲームからわかる通り、全ての創作物の中でトップレベルにヤバい町であるラクーンシティで地獄のような酷い目にあったかと思いきや、今度はクジラに喰われるエイブラムスの活躍から今後も目が離せない。
過去の『バイオハザード』の映画もまったく憎めない
最後になるが、過去の『バイオハザード』の実写映画作品も簡単に振り返っておこう。
2001年から6作が作られたシリーズでは、こちらも主人公のアリスが映画オリジナルキャラクターだった。それでいてゲームのキャラクターがサブ的に登場しており、内容はシリーズを重ねるごとに「ホラーよりも荒唐無稽なアクション」の側面が強くなっていった。主演のミラ・ジョヴォヴィッチの魅力は大きかったが、せっかく登場した他のゲームのキャラクターがやや中途半端な扱いだったり、何よりツッコミどころが多い大味なテイストで、「ゲームとは別物」の印象も強かった。
一方で、2021年制作のリブート作品である『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、「ゲームの再現」に注力した作品だったが、「ゲームの『1』と『2』の要素をぶち込んで、印象的なシーンや舞台をパッチワーク的に繋げた」という、また別の大味さが否めない作品だった。ゲームの小ネタである「かゆうま(正確には「かゆい うま」)」まで再現していたり、ゲームのキャラクターが総出演というゴージャスさもあって、ゲームへの愛情も確かに伝わってくるのだが、「原作をそのまま映画で再現すればいいってもんじゃない」こともハッキリ分かった実例でもあった。
そんな風に『バイオハザード』の過去の映画作品も、筆者個人としてはまったく憎めない、「これはこれで」な内容だったのだが、今回の2026年版はやはり一線を画しまくっていた。
前述してきた「ゲームの世界に放り込まれたらどうなるか? がコンセプト」「でもゲームのキャラクターをほぼ登場させない」「でもクリーチャーは大活躍(トッピングもあるよ)」「エクストリームなグロさ」「ステージをクリアしていく感覚の再現」「躍動感あるカメラワーク」「ちょいクズな主人公のリアクション芸がスベり知らず」といった挑戦的だが、実はゲームの特徴を理解していて、表現媒体が異なる映画へ上手く昇華させていたからこそ、「ゲームの映画化」に最適解を叩き出したのだ。
ちなみに、クレッガー監督はゲームの大ファンだが、過去の『バイオハザード』の実写映画は1本も観ていなかったらしい。しかし、7作も実写映画作品を積み重ねた歴史を観てきたファンの目線からすれば、「ここ」に『バイオハザード』の映画がたどり着いたことにも感動があった。あとは、難しいことはいっさい考えず、ハチャメチャに面白くて、笑えて、そしてゲームへの愛にも涙する、極上の映画体験を味わってほしい。
クレジット表記
- 邦題:『バイオハザード』
- 原題:『RESIDENT EVIL』
- 日本公開表記:10月9日(金)全国の映画館で公開
- 全米公開日:9月18日(金)
- 監督:ザック・クレッガー
- 脚本:ザック・クレッガー、シェイ・ハッテン
- 製作:ロバート・クルツァー、ザック・クレッガー、ロイ・リー、ミリ・ユーン、ヴィクター・ハディダ、アサド・キジルバッシュ、カーター・スワン
- エグゼクティヴ・プロデューサー:オリヴァー・ベルベン、リチャード・ライト、ロバート・ベルナッチ
- 出演:オースティン・エイブラムス、ザック・チェリー、カーリー・レイス、ポール・ウォルター・ハウザー

