一足お先に次世代機気分――HDTV+5.1chで現行機を遊ぶススメ Part1:概要編(2/3 ページ)

» 2005年07月08日 14時27分 公開
[小泉公仁,ITmedia]

5.1chサラウンドの導入効果はHDTV以上

 続いては、サウンド面の強化についてのお話。これまでのオーディオ機器やソース(音楽CDなど)というのは、前方に2つのスピーカーを設置するステレオ方式が一般的だった。それに対して5.1chサラウンドは、センター(前方の中央)、フロント(前方の左右)、サラウンド(後方の左右)、サブウーファーという計6つのスピーカーを取り囲むように設置して、ステレオ方式以上に空間的な広がりを持つ立体音響を実現する技術だ(関連記事参照)。

 部屋にスピーカーを6つも置くことはさすがに難しいかもしれないが、5.1chサラウンドの臨場感や迫力は、ゲームそのものの印象を一変させるくらいのインパクトをもたらす。もし、ゲームを主たる目的にHDTVと5.1chサラウンドのどちらか一方を導入するとしたら、ぜひ5.1chサラウンドを先に導入されたい。

 5.1ch対応のオーディオシステムは、安価なものなら3万円前後から買えるが、実感できる効果はその価格以上に大きいはずだ。また、ゲームだけではなく、映画などのDVDを鑑賞する際にも5.1chサラウンドは威力を発揮するので、ゲームファンならずとも注目したいところだ。

知っておきたいサラウンドフォーマットの種類と機能

 5.1chサラウンドに関して混乱しやすいのが、サラウンドフォーマットの種類があまりに数多く存在することと、それぞれの機能や特性がわかりにくいことだ。例えば、「ドルビーデジタル」や「DTS」などは、市販のDVDでもよく使われているので、名前くらいは聞いたことがあるはずだが、他にも「ドルビープロロジックII」や「DTS-ES」など、似たような名前のフォーマットがいくつもある。

 また、各フォーマットが、ソース(DVDやゲームソフト)に収録する際のエンコード方式を指すのか、再生機器側のデコード方式を指すのか、名前やロゴだけでは判別が難しいのもビギナーにとってややこしいところ。そこで、ゲームに使われているものも含め、主要なサラウンドフォーマットをここで整理しておこう。

 一つ覚えておきたいのは、サラウンド音声のエンコード/デコードが「ディスクリート方式」と「マトリックス方式」に大別されるということ。ディスクリート方式は、サラウンド音声をチャンネルごとに独立した状態で収録/再生する方式。例えば5.1chサラウンドなら、センター、フロント右、フロント左、サラウンド右、サラウンド左、サブウーファーと、各スピーカーに対応する6つの音声信号を個別に持っていることになる。一方、マトリックス方式は、例えば5.1ch分の信号を2chのステレオ音声の中に溶かし込むような形でエンコードし、再生時にデコーダー側で各チャンネルの信号を取り出すというものだ。ディスクリート方式の方がチャンネル間の音の分離性は良く、マトリックス方式よりも高音質が期待できる。

表3■主なサラウンドフォーマット
ロゴ名称再生チャンネル数(最大)概要
ドルビーデジタル5.1chDVDの音声トラックをはじめとする幅広い用途に使われ、現在もっとも普及している完全ディスクリート方式のフォーマット。元の約1/10程度という高圧縮率が特徴で、DVDの場合、384〜448kbps程度の低ビットレートで5.1ch分の音声を伝送できる(ドルビーデジタルの最大は640kbps)。現行ゲーム機の中では、Xboxが唯一、ドルビーデジタルをハードウェアレベルでサポートしている。
ドルビーデジタルEX6.1chドルビーデジタルの5.1chに、さらにサラウンドバック(リアセンター)を加え、計6.1chでサラウンド音声を実現する方式。ただし、サラウンドバックの成分は、サラウンドL/Rにマトリックスエンコードしたもの。厳密には、この方式で6.1chエンコードされたソースを「ドルビーデジタルサラウンドEX」と呼び、それをデコード(再生)するための民生用ハードウェアを「ドルビーデジタルEX」と呼んでいる。
ドルビープロロジックII5.1ch最大5.1ch分のサラウンド音声を2chのステレオ音声にマトリックスエンコードしたもの。また、それを5.1chに復号するデコード技術のことも指す。前身となる「プロロジック」は、最大4ch、サラウンド(リア)はモノラルで、高域再生限界も7kHzに制限されていたが、「プロロジックII」では5.1ch出力で、全チャンネルとも20kHzで再生できるようになった。また、「プロロジックII」に対応した機器では、「プロロジックII」でエンコードされたソースだけでなく、通常の2chソースも5.1chにデコードすることができる。現行ゲーム機では、PS2やGCのソフトに「プロロジックII」を採用したものが多い。
ドルビープロロジックII x7.1ch「プロロジックII」のマトリックスデコードをさらに拡張し、サラウンドバック2つを追加して最大7.1ch再生を可能にしたデコード技術のこと。「プロロジックII」でエンコードされたソースや、通常の2ch、さらには5.1chのソースも7.1ch化できることが特徴。なお、「プロロジックII x」はあくまでハードウェア側に搭載されるデコード技術の名称なので、現時点で「プロロジックII x」でマトリックスエンコードされたソースというのは存在しない。
DTS5.1ch「ドルビーデジタル」と同様の完全ディスクリート方式のフォーマットで、主にDVDの音声トラックに使われている。特徴は、「ドルビーデジタル」よりも圧縮率が低い分、より原音に忠実で高音質を実現していること。ビットレートは、フルレートの場合で1536kbps、ハーフレートでも768kbpsとなる。また、ゲーム機向けには「DTS Interactive」といって、リアルタイムにDTS音声を生成する技術があるが、その開発キットが提供されているのは現在のところPS2のみで、対応ソフトも数えるほどしかない。
DTS-ES6.1ch「DTS」の5.1chにサラウンドバックを追加し、6.1chを実現したもの。これには、6.1chの全チャンネルをディスクリート方式でエンコードした「DTS-ESディスクリート6.1」と、「ドルビーデジタルサラウンドEX」のようにサラウンドL/Rにサラウンドバックの成分をマトリックスエンコードした「DTS-ESマトリックス6.1」の2種類がある。いずれの場合も、「DTS-ES」デコーダーを搭載したAVアンプを通すことで、6.1chで再生される。
DTS Neo:66.1ch「DTS-ESマトリックス6.1」の技術を応用して、2chのソースを5.1chまたは6.1chにマトリックスデコードする技術のこと。原理としてはドルビーの「プロロジックII」に近いが、音の分離性や包囲感では「DTS Neo:6」の方がやや優れているように感じる。あくまでデコード技術の1つなので、「DTS Neo:6」でエンコードされたソースというのは存在しない。

狙い目は6万円台のミドルクラス

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