知らなきゃよかった、でももっと知りたい:「零〜刺青の聲」レビュー(2/2 ページ)
“知る”恐怖を味わえる、最新作「零〜刺青の聲〜」
先にも述べたように、本作の舞台となるのは、怜が見る「夢」の世界だ。主人公たち3人がその夢に引き寄せられ、数々の謎を解き明かすために夢の世界を探索する。
プレーヤーが最初に操ることとなる怜は、夢の世界で呪いにかかってしまう。その謎を解き明かし、自らの呪いを解くことが、当面の目標となる。
だが夢の世界では、その謎の断片しか入手できない。たとえば謎の書物であったり、怪しい場所を撮影したときに写る写真などだ。これらの情報は、もう1つの世界である「現実」に持ち込んで、その謎を解いていくこととなる。
現実世界では、主人公である怜以外に、深紅や螢も調査に参加する。深紅は、夢の中で撮影した写真を調査して詳細を教えてくれ、螢は夢の世界に関してのレポートを手紙で届けてくれる。
このように、夢の世界で手がかりを入手し、現実世界でその謎を解き明かす、という新たな楽しみのほかにも、怜ひとりだけではなく、主人公たち3人が協力して夢の謎を解き明かしていく、仲間とともに戦う結束感も楽しめるようになっているのだ。
身にかかる謎の恐怖、そしてその謎が徐々に明らかになっていく恐怖。謎が明らかになればなるほど、夢との現実との境界が薄れていき、やがて夢の世界は現実にも影響をおよぼしていく。本作では、この“事実を知るたびに怖くなる”恐怖をも体験できる。
カメラを使った戦闘は今作でも健在
本作の戦闘は、過去のシリーズ同様、“射影機で霊を撮影して”戦う。だが決定的に違うのは、襲い来る霊の怖さだ。
たとえば霊の目はギョロギョロ動くようになり、また体中に刺青のようなあざが浮かび上がる。さらに、ファインダー越しに見られる彼らの狂気じみた笑顔、苦痛に歪む表情など、そのすべてにおいて前作よりも格段にパワーアップしている。視覚的にもわれわれを怖がらせてくれるのだ。
そんな、怖さが格段にパワーアップした霊を倒すために、射影機を構えてファインダーに収めなければならないのが、また怖い。見たくない霊を見つめなければ倒せないというジレンマこそが、本作の戦闘シーンで味わえる最大の恐怖ではないだろうか。
そんな霊との戦闘だが、本作は前作に比べて、やや少なくなったように感じた。ただしその分、比較的早い段階から複数の霊が同時に出現するなど、1回の戦闘における内容自体は濃さを増している。
前作をプレイ済みの人ならば、“途切れることがないほど霊が連続で襲いかかってくる”という場面が減ったことで、難易度が下がったように感じるかもしれない。だが実際にプレイを続けると、全体的にあまり難易度は変わっていないような気がした。
アクションゲームとしての完成度も特筆すべき
操作するキャラクターごとに味わえる違った恐怖、2つの世界を行き来して徐々に真実を知る恐怖、そして出現する霊の映像的な恐怖と、とにかく恐怖づくしの本作。とかく怖がらせることだけに注力していると思われがちだが、ゲーム性とストーリーという面から見ても、非常に高い完成度を誇っていることに注目したい。
たとえば設定だが、各キャラクターには隠された秘密があり、屋敷に出てくる霊のすべてについて“どうして霊になったのか”といった事柄までもが細かく設定されている。一度クリアして、それらの情報を手に入れた後でもう一度プレイすると、また違った観点で物語が楽しめるはずだ。
クリア後のやりこみ要素も、膨大なボリュームが用意されている。霊を撮影したときの最高得点を狙ってみたり、特定の場所を撮影すると霊が写る隠し要素をすべて見つけたりと、そのボリュームは一朝一夕で語れるものではない。ホラー好きとアクションゲーム好きの、両方のゲーマーにオススメしたい作品だ。
さらに言うならば、“ゲームを起動して数分で恐怖を味わえる”ことにも注目したい。家でいつでも手軽に恐怖を体験することができる、まさに夏にうってつけの作品と言えるだろう。友だちを集め、肝試し大会などで本作を遊ぶ楽しみ方も、もちろんアリだ。
なお本シリーズは、シナリオ面から見ると過去作を大きく引きずっていない。前2作をプレイしていなくとも、最新作である「零〜刺青の聲〜」は十二分に楽しめるのだ。シリーズものだからと後込みすることなく、気軽に遊んでみてほしい。
零〜刺青の聲(しせいのこえ)〜 | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | テクモ |
ジャンル | ホラーアクションアドベンチャー |
発売日 | 発売中(2005年7月28日) |
価格 | 7140円(税込) |
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