練馬の3人組がアニメ界に新風を巻き起こす!?――TVアニメ「練馬大根ブラザーズ」(2/2 ページ)
キャラクターに命を吹き込む声優陣に対するこだわりも見逃してはならない。主役のヒデキを演じるのは、約10年ぶりに声優に挑戦するという歌手・松崎しげるさん。その歌唱力は言うに及ばず、声優経験もある松崎さんならミュージカルアニメという難題にもうってつけだ。また、イチローを演じるのは人気声優・森久保祥太郎さん。趣味はギターと語る森久保さんは、バンド「AN's ALL STARS」を組んで年数回のライブもこなすなど、歌手としても精力的に活動をしている。さらに、マコを演じる声優・松本彩乃さんも歌唱力を買われて抜擢されたというから、その美声はスタッフのお墨付きともいえる。こうした出演者やスタッフ陣を見れば、史上初の試みに対しても万全の体制で臨まれていることがわかるだろう。
そんな本作の、ミュージカル以外の見どころを声優さんにうかがってみた。森久保さんは「ふんだんに盛り込まれているネタを見てほしい」と語っている。ナンセンスかつシュールなギャグに定評のある浦沢氏が脚本を担当するだけに、その内容もやはり飛びぬけたものになるようだ。たとえば、練馬在住のギャング(しかも、アイドル志望の女の子とホストと農園経営者の3人組)なのに、大根畑の上にドームを建てるのが夢など、設定だけを見ても愉快なものになっているのだが、そのほかにも、某金融会社のCMに登場するかのようなレオタード姿のダンサーたちが登場してみたり、眼鏡とマフラーがよく似合う韓国系のパチンコ店オーナーが出てきたりといったパロディ要素も盛り込まれているようだ。森久保さんは「それだけに、1回見ただけでは面白さが伝わらないかもしれない」と前フリをした上で、「ビデオを録画したり、もしDVDが発売されたら買っていただいたりして何回も楽しんで見てください」と、しっかり番組をアピールした。
また声優さん方に、本作のキャラクターを演じるにあたって、苦労したことなどはあったのかと聞いてみた。松崎さんは「オープニング曲を歌っているときの声の響きがヒデキの声のイメージにあっていると言われ、キャラクターの方向性が見えてきました。なので、今のところ苦労はないですね」と順調な様子。「久しぶりの声優挑戦なので、今後バシバシ演技指導してもらって、よりよいヒデキを演じていければと思っています」とやる気も十分のようだ。
松本さんはオーディションの際に受けた歌のテストで、歌声がマコのイメージにピッタリだったと絶賛されたそうだ。そんな彼女には演技の上での苦労はないだろうなと思っていると、どうやらそうでもないらしい。「じつは私、普段喋っている声と歌うときの声が違うんです。だから、演技をしているときはもっと地声に近い状態で喋ってと注意を受けたり、いろいろ苦労が絶えません。マコはアイドル志望という設定なので、可愛らしさを出してみるなどいろいろ工夫しています」とのこと。
さらに森久保さんにいたっては、設定の変更などの関係で「イチローの性格が最初の打ち合わせのときに聞いていたものと180度変わっていた」のだそうだ。「それに気付いたときはさすがに驚きましたね。テンションの高い男をイメージして役を作っていたんですが、実際にアフレコに向かってみたら寡黙な男でビックリ!! しかも、3人の中でのツッコミ役という立場だけは変わっていなかったので、テンションを上げずにツッコまなくてはならないという高度なセリフを要求されたり(笑)。そんなこともあって、最初の収録のときはキャラクター作りが大変でしたね」と明かす。
少なからず苦労もあるようだが、さすがに歌で選抜された3人だけあって、ミュージカル部分で苦労したという発言は出てこなかった。松崎さんも「歌仕立て、ミュージカル仕立てのアニメシリーズというのは、今までに見たこともないし聞いたこともない。そんな作品ですから、それなりの苦労はあると思います。でも、出演者スタッフ一丸となって乗り越えて行きたいですね。素敵な作品ができるよう、がんばって歌っていきたいです」と、難問も苦にしない熱い意気込みを語ってくれた。
ナベシン監督と浦沢氏は、本作で“テレビアニメ業界に新風を巻き起こす”という熱意をもって制作に臨んでいるそうだ。そしてその思いは、スタッフ、出演者とも同じであることがインタビューからもうかがえた。数年前に流行した映画で「ムトゥ 踊るマハラジャ」というミュージカル映画があったが、あれはどこかコミカルかつナンセンスな雰囲気を持っていて、子供から大人まで楽しめる作品だった。そして、そんな「ムトゥ 踊るマハラジャ」や映画「ブルースブラザーズ」などが、本作を制作する際の参考のひとつになっているそうだ。それだけに、やはり年齢を超えて誰でも楽しめる(そして子供ならでは、大人ならではの楽しみ方ができるような)作品を製作してくれるのではないかと期待せずにはいられない。もちろん初めてのジャンルを手掛けるということで、松崎さんの言葉を借りれば“今までにない作品だからこその苦労もある”とは思うが、それはスタッフや出演者の熱意で乗り越えていってくれるだろう。“史上初のミュージカルアニメ”シリーズの今後に、ぜひ注目していきたいと思う。
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