ていねいに作りすぎたゆえに、一見すると地味にも見える。でも絶対面白いから遊んでみてよ:「バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子」レビュー(1/2 ページ)
カードゲームとRPGを見事に融合させた傑作RPG「バテン・カイトス」の続編が発売された。高年齢層、特にマニアックな作品を好むコアなゲームキューブユーザーにはうれしいタイトルだが、そこにとどめるには惜しい、高いポテンシャルを持った良質な作品に仕上がっている1本だ。
2003年末にナムコから発売された「バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海」は、「ゼノサーガ」シリーズなどを手がけた新進気鋭のゲームソフト制作会社「モノリスソフト」が制作を担当した本格RPGだ。ニンテンドーゲームキューブ用ソフトとしては広告展開にも比較的力が入れられ、実際にプレイしたユーザーからも「名作」の声が聞かれるなど、経過は上々だったのだが、残念ながら期待されたほどセールスには結びつかなかった。
こうした幸の薄いソフトというのは、いつの時代、どんなハードでも存在するもので、それらはやがて「隠れた名作」などと言われつつ、時代の影の中にひっそりと消えていったりする……ものなのだが、どっこい生きてました「バテン・カイトス」。約2年の時を経て、ファン待望の続編である「バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子」が、任天堂から発売となったのである。本作は世界観と基本システム、一部のキャラクターなどを引き継いだ正統な続編で、前作の20年前を舞台とした物語となっている。
独特の雰囲気を醸し出す世界観
では、本作の魅力を少しでも知ってもらうべく、レビューを進めていこうと思う。まずは、このゲームの独特な世界観から。舞台となるのは、1000年前の神々の戦いによって破壊された世界だ。そのため、人々は本来の大地と海を捨て、天に浮かぶいくつかの大陸で生きている。そのせいか、いつのころからか人々は、「心の翼」と呼ばれる、心の力で生み出す不思議な翼を持つようになった。
そして、この世界を代表する特別な要素に「マグナス」がある。これは、「マグナ・エッセンス」と呼ばれる「物の本質」をカードに封じ込めたもので、剣や鎧といった道具や、水や火などの物質やエネルギー、果ては時間や感情といった形のないものまで、あらゆるものがカードになっている。カードに封じたものは再び取り出すことも可能で、ゲーム中では、このマグナスを使うことで、戦闘や謎解きなどを行うことになる。
さらにもうひとつ、本作にひんぱんに登場するのが「マキナ」と呼ばれる技術だ。これはいわゆる科学のことで、中でも特に機械技術を指す。バテン・カイトスの世界は、一見するとかなりファンタジックなのだが、実はこのマキナのほうが、人々にはなじみが深い。マキナが普及している大都市などでは、乗り物や生活用品などに利用されているマキナを数多く見ることができるのだ。また、一部の軍隊などでは、機械兵士「マキナウィル」や、人が乗って動かすロボット兵器なども使われている。
背後霊プレイでゴー
マグナスとマキナ、独特な世界観を持った本作だが、プレーヤーキャラクターの在り方も、一風変わっている。物語の主人公として、「サギ」という名の少年がいるのだが、彼はプレーヤーキャラクターではない。“主人公なのにプレーヤーキャラクターじゃない?”と不思議に思う人もいるだろうが、プレーヤーはサギに憑依(?)している「精霊」となるのである。
精霊の存在はサギにしか感知できず、その声もサギにしか聞こえない。プレーヤーは、この姿なき精霊となってサギを導くことにより、物語を進めていくわけだ。サギを操作するのは完全にプレーヤーであり、サギが精霊の提案と異なる行動を取ることはないので、実質的にはサギ=プレーヤーキャラクターなのだが、このちょっとした仕掛けによって、RPGにありがちな“個性を持ったプレーヤーキャラクターと実際のプレーヤーとの間のギャップ”の問題が、少なからず解消されていると思う。ちなみに、この精霊は性別と名前を自由に決めることができる。
物語はサギが帝国アルファルドの特殊部隊「暗黒部隊」の一員になるところから始まる。彼は、故郷の村に不幸をもたらした皇帝オーガンに復讐しようと考えており、皇帝に近づくために悪名高い暗黒部隊に入隊したのである。すると、まだ制服も支給されていない新米隊員サギに初仕事が命ぜられる。それは何と、皇帝オーガン暗殺作戦への参加だった。きな臭さを感じながらも、この願ってもいないチャンスに心を振るわせるサギ。だが、そこには思わぬ罠が待ちかまえていて……というのが、ゲーム序盤のストーリーだ。
この後は、ツンデレ風味なヒロインのミリィアルデとの出会いや、サギの仲間である感情を持った機械兵士ギロの秘密、「遺児」と呼ばれる謎の怪物群と、帝国ナンバー2であったバアルハイトの暗躍、そして、サギの夢に現れる謎の世界との交錯などなど、多くの謎と戦いが、少しずつサギの前に姿を現していくこととなる。
コンボから必殺技に。爽快なカードバトル
ゲーム自体はサギをマップ内で動かし、キャラクターと会話をしたり、アイテムを拾ったり、謎解きをしたり、戦闘をしたりしながら進めていく、非常にスタンダードな形が取られている。だが、この戦闘に本作最大のオリジナリティが隠されている。バテン・カイトスの戦闘は、すべてカードゲームの形になっているのである。
一時期、トレーディングカードゲームの流行から、コンピュータゲームでも、カードゲームの要素を取り入れたシステムが多く登場したが、このバテン・カイトスのシステムは、その中でも群を抜いて完成されたシステムと言える。とっつきやすいシンプルさの中に確かな戦術性を持たせ、かつテンポも損なわない。これこそが、シリーズの面白さを支えていると言っても過言ではないほどだ。基本的な部分は前作から受け継がれているが、本作では、1作目で煩雑だった部分などが改良され、より洗練されたものになっている。
戦闘では、その準備段階としてまず、手持ちの「バトルマグナス(戦闘用のカード)」を使い「デッキ」と呼ばれるマグナスの束を構築するところから始まる。バトルマグナスには、攻撃用の「技マグナス」、さらに強力な攻撃である「必殺技マグナス」、キャラクターの能力を高めたりHPを回復したりする「アイテムマグナス」、攻撃や防御を強化する「装備マグナス」、攻撃に特定の属性を付与する「エレメントマグナス」、仲間全員に特殊な効果をおよぼす「戦略マグナス」の6種類があり、これらを手持ちの中から自由に選び、戦闘で実際に使いたいものだけをひとまとめにするのだ。
これらバトルマグナスは、最初から持っているものに加え、マップ上で拾ったり、戦闘に勝利することで手に入ったり、店で買ったり、特定のキャラクターと交換したりすることで、種類や枚数を増やすことができる。
戦闘を開始すると、画面下段に手札が展開される。その中から使いたいマグナスを選択することで、封じ込められていた効果が発揮され、そのマグナスが手札から取り除かれていく(1枚取り除かれると、すぐに次のマグナスが手札に加わる)。
この時、基本となるのが技マグナスだ。これには小・中・大の3段階があり、選んだパワーの大きさに応じた攻撃を行う。しかも「小→中」、「中→大」、「小→大」、「小→中→大」のパターンで連続してマグナスを使うことで、同一のキャラクターにコンボ攻撃を行わせることも可能だ。さらに、小・中・大のいずれからも必殺技につなげることや、装備マグナスやエレメントマグナスから技マグナスにつなげることもできるため、「装備(エレメント)→小→中→大→必殺技」というド派手なコンボを叩き込むことも可能なのである。
ただ、1枚目のマグナスを使った時点でカウントダウンが始まるため、それがゼロになるまでにコンボを完成させる必要がある。ある程度の反射神経と、予告されている次の手札を見極め、それを絡めたコンボの構築を常に考える必要があるだろう。手札はデッキの中からランダムで回ってくるので、常に最大の効果を発揮できるわけではない。それどころか、デッキの全体枚数と各マグナスの割合をきちんと考えておかないと、使えないマグナスで手札がいっぱいになって攻撃できない、という状況に陥ることもある。戦いは、デッキ構築の段階からすでに始まっているのである。
参考までに基本的なデッキを紹介しよう。まず全体の半分程度を技マグナスにする。それも小・中・大をバランス良くだ。そして、残りの半分に必殺技、武器系装備、防具系装備、回復系アイテムをバランス良く入れ、それ以外のマグナスを適量加える。これで大抵の敵とは渡り合えるようになるはずだ。
ただし、これはあくまで基本である。その時点でよく遭遇する敵の傾向に合わせ、こまめに内容を調整することが何より大切だ。敵の攻撃属性や防御属性が分かったら、それに合わせた装備マグナスを入れたり、特定の状態異常を引き起こす攻撃をしてくる敵がいるのなら、それに応じた回復系マグナスを入れる。また、対ボス戦用に回復系を多めに入れるなど、状況に応じてデッキを組み替えられるようにしておきたいところだ。
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