稲葉氏、神谷氏が「大神」開発を振り返る――次回作も公開された「大神」完成プレス発表会(1/2 ページ)

PS2用ソフト「大神」の完成プレス発表会が開催。発表会には大神のプロデューサーである稲葉敦志氏と、ディレクターの神谷英樹氏が登場し、苦難の連続であった開発を振り返ってくれた。また、クローバースタジオのオリジナルタイトル第2弾も発表された。

» 2006年04月15日 02時03分 公開
[遠藤学,ITmedia]
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 本日、2006年4月20日に発売予定のプレイステーション 2用ソフト「大神」の完成プレス発表会が開催された。「デビル メイ クライ」、「バイオハザード」、「鉄騎」などを世に送り出してきたカプコン第4開発部から、“もっと新しくて面白いモノを創り出す”という考えに共鳴したスタッフが集まって生まれたカプコンの開発子会社「クローバースタジオ」。そのオリジナルタイトル第1弾である大神は、2004年7月に設立された同社が、約2年(制作発表からだと約3年)の歳月を費やし、満を持して世に送り出すネイチャーアドベンチャーゲーム。

 和紙に筆で描いたような独特のグラフィックスと、主人公「アマテラス」が使う森羅万象を操る神の力「筆しらべ」といった斬新なゲームシステム、そして日本人であれば誰でも聞いたことがある昔話をモチーフとした登場キャラクターなど、古き良き日本の「和」を感じさせてくれるタイトルである(ゲームの詳しい内容については本記事最後にある各リンク先を参照していただきたい)。

photo (左から)稲葉敦志氏、神谷英樹氏

 このたび行われた完成プレス発表会には、大神のプロデューサーである稲葉敦志氏と、ディレクターの神谷英樹氏が登場。まずは稲葉氏より、大神の開発に至った経緯が語られる。「『ビューティフル ジョー』が終わった後、立ち話レベルで何かネタがあるか神谷に聞いたんです。そしたら“自然を描いてみたい”という、まったくキャラクターとは異なる答えが返ってきました(笑)。神谷と自然は全然結びつかないんですけど、そのギャップ間にやられましたね」(稲葉氏)

 一方、自然とは結びつかないと言われた神谷氏は、「こう見えても田舎育ちなので、故郷を離れて過ごす中で望郷の念が強くなっていたんですよ。それと、ビューティフル ジョーが終わって次に何を作ろうか考えている時、僕の隣で『バイオハザード』をリメイクするチームがいて、彼らが作ったものを遊ばせてもらったんです。それがホラーの世界にいる臨場感がものすごくあふれていたというか、映像のクオリティのすごさを改めて思い知らされました。そこで、ダークな世界ではなく、もうちょっと明るい世界で臨場感のある作品を作ったらどうなるんだろう、と考えたのもきっかけのひとつですね」とコメントするなど、思いつきではなく、以前から作品にしてみたいテーマであったことを強調していた。

photo 毛筆調で描かれた初期段階のアマテラス イメージイラスト

 さて、大神の特徴と言えば、和紙に筆で描いたような独特のグラフィックが挙がることと思う。しかし、開発当初からこのグラフィックではなかったと神谷氏は語る。「自然を素直な形で表現したかったので、最初は写実的に、生々しいリアルな自然を描いていたんです」(神谷氏)。では、どのようにして現在の毛筆調のタッチになったのか? 「(イメージイラストとして)筆タッチの日本画っぽいものをデザイナーが出してきました。その絵を見て“これがゲームになるなら面白そうだ”と考えたんです」(神谷氏)。この時はリアル路線でいくことに限界を感じていたこともあり、この転換は作品の方向性をしっかり固めるものになったという。

 しかし、グラフィックは決まっても、肝心のゲーム性をどこに持たせるかで、再び悩むことになったと苦労話は続く。「開発中はどうにも作業が進まない時期もあって、プロデューサーによる週一チェックというものがあったんです。1週間で作ったものを見てもらいながら説明するというものなんですけど、プロデューサーチェックがあるから作らなきゃいけないといった感じで、出来上がってくるものは寒いものばかりでした。コインを集めるゲーム、光の輪をくぐるゲーム、鳥居の中を連続で駆けぬけていくだけとか、時にはシミュレーションゲームみたいになったこともありました」と神谷氏。稲葉氏もこの状況には「クローバースタジオを設立したはいいけど、(第1弾タイトルが)完成することはないんじゃないか」との思いを抱いたと、当時を振り返る。

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 停滞しはじめた大神の開発。だが、それを打ち破ったきっかけは「稲葉にめちゃくちゃ怒られた」だったと神谷氏は語る。「大神のチームが集められて、ガツンと怒られた。そこで本気になったわけじゃないですけど、このままじゃいけないということで、主要メンバーを集めてミーティングをしたんです」(神谷氏)

 このミーティングで、大神のもうひとつの軸となる筆しらべが生まれることになるが、その時のことを神谷氏は次のように振り返ってくれた。「アマテラスが神がかった力を使って自然を生み出すことは決まっていたんですけど、それ自体がおざなりになったまま開発が進んでいました。ミーティングはそこを見直そうという意味で行ったんですが、スタッフのひとりから“神さまなんだから、何でもできるべきなんじゃないのか”という意見が飛び出したんです。この意見が元となり、ただ自然を生み出すだけでなく、自然も操ることができるということ、そしてせっかくならプレーヤーが風を描けば風が生まれるようにしたらどうだろう、という筆しらべの基本が生まれました」(神谷氏)。

photo E3 2005にプレイアブル版が初出展された大神は数々の賞を受賞。「いけるかなという自信が確信に変わった」(稲葉氏)という

 独特なグラフィックと筆しらべ、大神の根幹となる2つの要素が決定し、後は作るだけ! とはもちろんいかず、その後も紆余曲折があったという。発表会では特に印象的なエピソードとして、稲葉氏が「難易度」の問題を挙げてくれた。「パーツごとにゲームを作っていたので、ビューティフル ジョーのように難しくなりすぎている個所がありました。ただ、神谷の書いたシナリオが本当にすばらしかったので、絶対みんなにクリアしてほしかったんです。そこで神谷に、ノーマルのほかにイージーを作らないかと相談にいきました。結果だけ言うと大神に難易度選択はありません。なぜかというと、相談にいった時に神谷から、“命令だったら入れないこともないけど、俺はやらないよ。誰がやるの? そんな暇ないよ。もしどうしても入れるんだったら、ノーマルは激ムズにしてやる!”とか言われたからです(笑)。ままならない難易度調整に神谷もカリカリしていたんでしょうけど、この時は本当にもめましたね」(稲葉氏)

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