懐かしのファミスタモードで思い出にひたり、熱スタ2006でナムコ野球ゲームの進化を知る:「プロ野球 熱スタ2006」レビュー(1/2 ページ)
「ファミスタ」誕生から20年。節目の年に登場したナムコ(バンダイナムコゲームス)野球ゲームの最新作は、これまでの蓄積が生かされた、野球ファン感涙の楽しさ。多彩なモードと昔懐かしいファミスタモードを遊び尽くせ。
ファミスタモードをプレイして
あれから、もう20年も経ったのか。
「プロ野球 熱スタ2006」(以下、熱スタ2006)は、データこそ、最新のものに更新されているが、グラフィックやシステムは初代「プロ野球ファミリースタジアム」(以下、ファミスタ)とまったく同じという、ファミスタモードが搭載されている。このモードをプレイすると、懐かしく、また時が流れることの早さに驚かされる。あの頃、筆者は高校生だった。今じゃ40代まであと少し。その間の年月が一挙に吹き飛んでつながってしまう。ほんと、いろんなことがあった。
筆者の家は、川崎球場から自転車で15分ぐらいのところにあって、初めは大洋(現横浜)、後にロッテ(現千葉ロッテ)が本拠地にしていた。そんな場所のせいか、新聞屋が外野のタダ券をくれることも多く、良く観戦に行った。当時球界を代表する速球派だった村田兆治と山口高志が投げ合った時のボールの速さや、世界の盗塁王・福本豊の俊足は、今でも鮮烈に覚えている。
何度も見ていると、自然と選手の名前を覚えるようになる。そんな筆者にとって、選手ひとりひとりの能力が違っていたファミスタは、非常に感動的なゲームだった。何を隠そう、ファミスタ以前の野球ゲームでは、選手個々の能力はすべて同じだったのである。というより、選手という概念がないのが当たり前だったのだ。だが、ファミスタにはチームがある。それもプロ野球の球団だ。これがどれほど衝撃的でうれしいことだったか!
ファンの夢心を刺激するスペシャルチーム
もう少し、昔の思い出話をさせていただくが、ファミスタで選択できたチームは10球団だった。当時は日本野球機構の承認も取っていなかったため、名前はすべて仮称。とはいえ、ガイアンツと聞けば、モデルの球団がどこかぐらいはすぐ分かる。だから、まったく気にならなかった。
なお、慣れというのは恐ろしいもので、ある程度シリーズが重なると変名に慣れてしまい、実名をかえってヘンに感じるようになってしまう。特に「おみあい」とか「はたらつ」とかは、絶妙のネーミングセンスだったので、選手の実名が表示されると、“これ、誰?”的な違和感を覚えるようになってしまった。
初代ファミスタでは、選べる10球団の中に“ナムコスターズ”なる球団が存在していた。これはその名の通り、ナムコのゲームキャラクターを選手にした球団だ。プロ野球の中にヘンな球団が混じっていることになるが、作り手の遊び心が伝わってきて、素直に楽しかった。ナムコスターズはその後の作品にも登場し、新作ゲームのキャラクターたちを取り込んで、ファミスタのひとつの顔になっていく。
初代発売の翌年には、第2弾となる「プロ野球ファミリースタジアム'87」が発売。ここでは“メジャーリーガーズ”と呼ばれる、MLBのオールスターで編成された球団が参戦してきた(こちらも名前は仮称)。これはもう呆れるくらい強かった。
話は横道にそれるが、大学の時、友人にやはりファミスタ好きがいた。彼は野球をまるで知らない彼女を誘い、良くファミスタをやっていたが、実力がまるで違うので彼女はメジャーリーガーズ専門だ。ところが、長いことやっていれば、彼女もだんだん上手くなってくる。そのうち、友人も遠慮しなくなって、裏技的なことをやるようになった。で、時々というか、ちょくちょくケンカが起こる。おかげで筆者はメジャーリーガーズの名前を聞く度に、彼女の“それするなっていったでしょう!”という金切り声を思い出してしまう。
20年の進化が生んだテレビ中継さながらのリアリティ
ファミスタがほかの野球ゲームを圧倒したのは、選手ひとりひとりに異なる能力を与えて、リアルな野球を楽しめるようにしたことだ。その一方で、ナムコスターズやメジャーリーガーズに代表される、夢の球団の存在も大きかった。いわば、リアリティと夢が相まって野球ファンの心をとらえたのだ。それから20年経ち、ファミスタ、そしてその流れを受け継いだナムコ野球ゲームの最新作である熱スタ2006は、どのような進化を遂げたのか? それをこれから見ていくことにしよう。
まずは演出面でのリアリティだが、これについては文句のつけようがない。まさにテレビ中継そのものだ。プロのアナウンサーや解説者を起用していることもあるが、それよりも選手個々のフォームやクセレベルの仕草がていねいに再現されているのがいい。
ゲームとしての数値的な意味だけに限れば、ここまで細かく似せる必要はないだろう。しかし、作り手があくまでテレビ中継の雰囲気を作り出すことにこだわったからこそ、抜群の臨場感が生まれている。選手の個性化を図るという発想は、ついにここまで到達したのだ。
煩雑すぎない、適度な操作感覚
リアリティにこだわると問題になってくるのが、操作性だ。ファミスタは伝統的に操作がカンタンだったが、あまりシンプルすぎると駆け引きが浅くなってつまらなくなる。かといって難しすぎると、いくらリアルでもついていけなくなる。熱スタ2006では、打撃では4種類、投球では3種類のモードを設けることによって、この問題に対処している。
打撃の4モードで、もっともカンタンなのが“ロックオン”だ。振れば勝手にバットが動いてボールを芯でとらえてくれるというもので、振るタイミングさえ間違えなければ、ほぼ当たる。一転、もっとも難しい“ノーマル”になると、コース、高低、タイミングのすべてをプレーヤーが自分で調節しなければならなくなる。
投球では、球種、コース、球威、コントロールの4点がポイント。球種は投球動作に入る前に選ぶように統一されていて、残る3要素がモードによって異なっている。選んでボタンを押すだけの方法から徐々に難しくなり、新たに搭載された最高難度の“ライブピッチ”になると、投手のフォームを見ながらボールを放すタイミングを図るという、非常にリアルなピッチングをすることになる。ただ、これも技量に合わせて選択すればいいだけなので、大きな問題はないだろう。
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