このダンジョンに迷い込んだアナタは、きっと時間を忘れる:「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」レビュー(1/2 ページ)
「ドラゴンクエスト」と「不思議のダンジョン」という、2つの人気シリーズが出会い、ゲームの魅力を改めて教えてくれる良作が誕生した。大人から子供まで、男性も女性も問わず、あらゆる人が楽しめること間違いなし。
前知識はいっさい不要で即プレイOK
映画などでは、人気作と人気作を掛け合わせる、例えば「●●●VS□□□」といった作品は、どちらかというと両方のファンをあて込んだ、安易な企画であることが多い。ひょっとしたら「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」についても、同じような感想を抱いた人がいるかもしれない。だが、本作品は、そんな低次元の発想をけ散らす、抜群の完成度を持っている。とにかく面白い。ひとたび始めれば、数時間などあっという間に過ぎてしまうだろう。時間を忘れさせてくれる1本だ。
大まかに言えば、世界観が「ドラゴンクエスト」(以下、DQ)で、全般的な基本システムが「不思議のダンジョン」、一部に「ドラクエモンスターズ」のシステムが盛り込まれている、という内容だ。いずれも定番の人気シリーズだけに、これだけ聞けば、どんな内容かはプレイしなくても何となく予想がつく人もいるかもしれない。
しかし、作り手たちは、人気タイトルのネームバリューにまったく甘えていないと思う。なぜなら、元のシリーズをまったく触ったことのない人が遊んだとしても、その面白さはいささかも劣ることはないからだ。その一方で、シリーズ経験者であれば、“これこそ、DQの世界だよね〜”と満足させてくれるだけのファンサービスにもあふれている。未経験者でも経験者でも、プレーヤーを選ばない。口で言うのはカンタンだが、実現するのは決してカンタンではない。それをカンペキにやってのけている。こんな作品は滅多にあるもんじゃない。
DQらしい、フシギでハートフルな世界
“とにかくプレイして! クダクダしい文章を読んでいるより、そのほうがいい!”……と言いたいところなのだが、それではレビューの意味がないので、その面白さを紹介していきたいと思う。なお、本レビューは、元になっている人気シリーズを知らない、または遊んだことがないという人を念頭にしている。元のシリーズを遊んでいて、それが好きだという人は迷うことはない。ただちに買ってプレイだ。絶対にそのほうがいい。
本作の主人公となるのは「ドラゴンクエストVIII」(以下、DQVIII)に登場した元・山賊のヤンガスだ。彼の少年時代の話なのだが、プレイするにあたってDQの知識はまったくいらない。好奇心旺盛でヤンチャな男の子だと思えば、それで十分だ。
ヤンガスが魔法の壺の中にある不思議な世界に迷い込んでしまったところからストーリーは始まる。彼は、壺の中の世界に住む「ポッタル族」というファンシーな人々や、ヤンガスと同じく異世界(すなわちDQ世界)から迷い込んでしまったキャラクターたちの助けを借りて、元の世界に帰る方法を探していく。そのためには、巨大な樹木の下に広がる、不思議のダンジョンを攻略しなければならない。これがメインストーリーだ。
異世界から来たキャラクターには、不思議のダンジョンシリーズの顔ともいうべきトルネコや、DQVIIIに登場したモリーなど、ファンにはおなじみのキャラクターが含まれている。とはいえ、彼らについても前知識はいらない。それがなくても、彼らの魅力は間違いなく伝わるだろう。セリフが実にいい。特にモリー。熱血オジサンぶりがたまらなく楽しい。
モリーと同じくDQVIIIに登場し、本作ではヒロインとなっているゲルダも負けてはいない。最近の流行である、いわゆるツンでデレなキャラになっているのだが、ウケ狙いに終わらず、勝ち気で意地っ張りな女の子としてしっかり描けている。ブームが過ぎ去った後になっても、その魅力が変わることはないだろう。
壺の中の世界というファンタジックな設定と、一癖も二癖もある個性的なキャラクターたち。それが相まって作り出された、ファンシーで温かいファンタジーワールド。この感触はまぎれもなく、初期DQの世界だ。ひらがな主体のテキストもファミコン時代を思い出させくれて懐かしい。
不思議のダンジョンの特徴とは?
続いてシステムの説明に移ろう。前述の通り、基本的には不思議のダンジョンシリーズのシステムを継承しているのだが、なぜ不思議のダンジョンと呼ばれるのかと言えば、それには大きく2つの訳がある。1つは「入るたびにマップが変わること」。出てくるモンスターや手に入るアイテムも変わる。また、このダンジョンは下への一方通行で、上の階に戻ることができない。外に出るには、最下層まで到達してダンジョンをクリアするか、特別な脱出アイテムを使う必要がある。

2つ目は「ダンジョンの外に出ると主人公のレベルが必ず1に戻ること」。ダンジョン内でどんなにレベルを上げようが関係ない。ただし、手に入れたアイテムはそのまま残る。だから、いいアイテムを入手していれば、次の冒険はその分楽になる。これを繰り返すことで、次第にキャラクターは強くなっていく。なお、ダンジョン内で倒されてしまった場合は、アイテムは持って帰れない。これは非常に痛い。だから、ある程度いいアイテムのうち半分を手に入れたら、脱出アイテムを使っていったん帰るという、引き際をわきまえた戦術も必要になってくる。
こうした不思議のダンジョンルールに加えて、本作を面白くしているのが、モンスターを仲間にする、というドラクエモンスター的なシステムだ。そのためには、例の熱血オジサン、モリーから特殊な壺をもらう必要がある。
ダンジョン内にいるモンスターにダメージを与えて、ある程度まで弱らせると、モリーの壺に吸い込むことが可能になる。こうして捕まえたモンスターは仲間となって一緒に戦ってくれるようになるのだ。モンスターは経験値がたまるとレベルアップし、能力が上がって、特殊な能力を身につけていく。

しかも、モンスターのレベルはダンジョンの外に出ても戻らない。ただし、どんなに鍛えても、ダンジョン内で倒されれば、それまでの蓄積はすべてフイになる。ここでも無理押しは避けたほうが賢明なわけだ。
2体以上のモンスターを仲間にした場合は、「はいごう」させて新たなモンスターを創造することができる。こうして作られるモンスターはなかなか強力なので、仲間が増えてきたら、積極的に配合させていきたところだ。モンスターには性別があるので、オスとメス(人間型のモンスターもいるが、便宜上そうなっている)を集める必要がある。仲間を集める時には、ターゲットとなるモンスターの性別を事前に調べておくと効率的だが、モンスターの性別を変えるマジックアイテムもあるので、それほど気にすることはないだろう。なお、モンスターは「ガンガンいこうぜ」、「いのちをだいじに」といったDQシリーズではおなじみの「めいれい」によって、その行動を指示することができる。
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