12年待った――糸井重里さんへの手紙「MOTHER3」レビュー(2/4 ページ)

» 2006年05月10日 16時37分 公開
[篠崎薫,ITmedia]

決まると気持ちいい「サウンドバトル」

 本作では見おろし型フィールド上でキャラを操作し、目的地に向かって移動する一般的なシステムを採用しているが、高速に移動する方法は少し独特。Bボタンをしばらく押して離すと、障害物に正面から当たるまでダッシュし続けるのだ。最初はとまどうものの、慣れると面白いように移動できるだろう。

 村には数多くの人が住んでいるのだが、話しかけても平凡なセリフを言う人物がいないのも面白い。ほとんどのタイトルは、大概村の入り口には「ここは○○村です」などと言う専門キャラが配置されているものだが、本作ではそのような無意味なキャラは存在しない。全員がそれぞれの生活を持ち、それぞれに暮らしている。だからこそ、ゲームゲームしたセリフがなく、実生活に近い会話が楽しめるのだと思う。元々、物語の舞台になっているのがRPGでは珍しく、近現代のアメリカというのも、身近に感じる一因かもしれない。

 テリの森では、謎のブタマスク男が放ったモンスター以外にも、どこからか出てきたらしい野生動物との戦いもある。ここにも本作ならではの特徴があり、一般的なRPGでよく見かけるモンスターがまったく登場しない。変わりに、当たり前のように森にいる動物が凶暴化したものや、キメラ化した敵ばかりが出てくるのだ。前者はともかく、後者に関してはもちろん意味があり、ストーリーの根底に関わってくる部分だったりもする。

斜めに移動しながら壁にぶつかれば、ダッシュが途切れてしまうことはない。知っていると、意外に役に立つ
そこかしこに近現代アメリカを感じるので、親近感がわく
普通のRPGでは見られないような敵が多数登場する。見慣れた敵と言えば、こうもりぐらいか?

 なお、戦闘シーンはコマンド入力方式のターン制を採用しており、すばやさの値に応じて行動していく。中でも、本作のシステム面でもっとも重要なのが、ここで出てくるサウンドバトルだ。これは、戦闘中に流れるBGMのリズムに合わせてAボタンを押せば、最大で16回まで連続してダメージを与えられるというもの。敵によってBGMは変わり、同時にリズムも変化するので、それぞれの敵に合わせてボタンを押す必要があるのだ。とはいえ、序盤こそ簡単に攻撃回数を重ねられるものの、中盤からは同じ曲であってもリズムが微妙に変化していたりと、リズムの取りづらい敵が数多く登場するため、なかなか成功しない。

 そこで有効なのが、敵を眠らせてしまう特技や後述するPSIだ。これを使えば敵の心音(リズム)が直接聞こえるので、そのリズムに合わせてAボタンを押せば必ず連続ヒットさせられる。ただ残念ながら、ボスは眠らせることができないので、聞こえてくるリズムにじっと耳を傾ける必要があるのだ。BGMのドラムに合わせてボタンを叩けばOKという単純なものではなく、その分何度も戦う楽しみもある。強い相手に攻撃が複数回決まったときの爽快感は、言葉に出せないほどうれしいものだ(もちろん拍手も起きる)。なお、ご存じない方に付け加えておくと、PSIとは一般的なRPGで言うところの魔法のようなもの。等身大の人物が冒険すると前述したが、PSIを使うところだけが唯一大きく異なると言える。PSIは超能力(psionics)のことで、ゲーム中では進行度合いにより、パーティーの何人かが使用できるようになる。

リズムに合わせてボタンを押せば、音符マークとともにダメージが表示されていく。狙って出せると、とたんに戦闘がおもしろくなるのだ
ダスターならば、敵を簡単に眠らせることができる。ここで心音を聞けば、タイミングはばっちり
リュカとクマトラは、PSIを使えるようになるキャラ。2人とも、戦闘シーンでは頑張ってくれる

ダメージを受けると、ドラムが回りHPが減っていく。しかし、その途中で回復させたり戦闘が終了すれば、全部のダメージを負わずに済む

 戦闘中にはパーティーのステータスが表示されるのだが、敵からダメージを受けるとスロットマシンのドラムのように、回転しながらHPが減っていく。実はこれが秀逸なシステムで、HPを一気に失うほどの大ダメージを受けたとしても、ドラムが回転して0になる前に敵を倒したり、HPを回復できれば、そのキャラが戦闘不能になってしまうことはないのだ。とはいえ、その場合はサウンドバトルをしている暇などないので、Aボタンを連打して戦闘を早く終わらせるか、あわてて回復させることになる。それでも、攻撃を受けると一発でやられてしまうという凶悪な攻撃や魔法が横行するRPGの中で、この発想は間違いなく諸手をあげて歓迎すべきものだろう。


最初の切なさが、胸に去来する瞬間。GBAやNDSを前にして、思わず「えっ!」と言ってしまう人も多いはずだ。幸せはもろくも崩れ去り、フリントと同じく怒りがこみ上げてくる

 さて、テリの森で村の子供を救出したフリントだが、すぐにヒナワとリュカ・クラウスが行方不明だと知らされる。村人総出で森を探す中、川に流されてきたという兄弟たちとの再開を果たす。一瞬、安堵の空気が流れるも、同時にヒナワがドラゴによって殺されたことを告げられる……。胸にはドラゴの牙が刺さっていたが、我が身を呈して子供たちを逃がしたという話を聞かされ、目の前が真っ暗になるフリント。家族にとってかけがえのない存在だった母が、この瞬間に思い出としてのみの存在になってしまったのだ。彼女の死を知ったフリントは怒り狂って暴れ、平和だったタツマイリ村では初めてとなる、留置所の住人になってしまう。


現代で言うところのオカマバーと思われるのだが、実は彼(彼女?)たちは非常に重要な役割を担っている。この時点では、そうは見えないのだが……

 子供たちの協力を得て留置所を脱出するものの、今度は双子の兄クラウスが行方不明になる。どうやら、1人で母親のかたきを討ちに森の奥へと入っていったらしい。クラウスを追いかけるフリント。その途中で、「マジプシー」と呼ばれる奇妙な一行を目にする。すわ、新宿二丁目にあるオカマバーか!? と、こんな事態にもかかわらず、つい笑ってしまった。悲しさばかりが支配する物語では、途中で雰囲気が重くなりすぎてしまう。バランス取りの巧みさも、シナリオの良さに関わってくるもの。このくらいインパクトがあるほうが、プレーヤーも何らかの反応をするものだ。もちろん、彼(彼女?)らは笑わせるために出てきたのではなく、物語終盤にかけて非常に重要な役目を担っているのだ。

 山奥まで分け入ったフリントたちは、途中でクラウスの靴と思われるものを見つける。それに導かれるように進んでいくと、ブタマスクに改造されたメカドラゴと遭遇する。信じられないほど醜くなってしまったドラゴだが、ヒナワを倒した相手……。残念だが、戦うしかないのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/14/news189.jpg 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. /nl/articles/2411/15/news016.jpg 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  7. /nl/articles/2411/15/news009.jpg 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  8. /nl/articles/2411/15/news058.jpg 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  9. /nl/articles/2411/14/news023.jpg “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  10. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた