まさにディレクターズカット版――「ぼくなつポータブル」インタビュー(3/3 ページ)

» 2006年06月02日 11時30分 公開
[聞き手:今藤弘一,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

――話は変わりますが、上田三根子さんのキャラクターを使おうと思ったのはなぜですか?

綾部 ぼくなつの世界は夏休み、しかも昔の日本の夏休みなので、人によって感じる振れ幅が大きいと思うんです。ものすごく地味な、和風のおとなしい世界を体験として持っている場合もあるでしょうし、いまは田舎に住んでいなくて、都会に暮らしている人がプレイすることもあるわけです。この場合はすこしおしゃれな要素が入っている必要もあるでしょうし。ぼくなつという世界は、何も考えないで作ってしまうと、ベタに和風な世界へ過度に入ってしまう危険性があるんですね。そうではなく、都会に住んでいるユーザーも違和感なく、このゲームをおしゃれなものだとしてプレイできるためには、どこかデザイン的な強度を持つというか、べたつかない要素も必要になってきます。その意味もあって、上田さんのキャラクターを起用しました。

画像

 彼女のキャラクターは、絵にモノサシを当てて計ると分かるんですが、すらっとして8頭身や9等親に見えるキャラクターが多いにもかかわらず、実際には6.5頭身か7等親くらいしかないんです。ふつうの、生身の人間と変わらないんですね。でも立ち方が美しかったりとか、着こなしが美しかったりしておしゃれなイメージが作られています。ですから、上田さんのキャラクターであれば、ベタな日本の夏からおしゃれな世界まで、いずれも生活感たっぷりに描くことができるんです。そういう意味で、このゲームにとっては上田さんとの出会いは幸運でした。

 わたしは女性誌をよく読むんですが、「オリーブ」でよく描いているのを見ていて、好きだった、ということがありますね。上田さんが言っていたのですが、一時期はオリーブのほとんどの紙面で上田さんが描いていたこともあったようで、ものすごく目にしているキャラクターでした。そんなわけで印象が深かったということもありますし、シンプルなキャラクターで3Dにしやすく、ゲームに載せやすいという理由もありました。

――キャラクターデザインをお願いしたとき、上田さんはどのように思われたのでしょうか。

綾部 ゲームを作るというのは得をしているなと常々思うのですが、まったく異業種の人に仕事を依頼したときに、いきなり断られることはまずありません。「ゲームってどうやって作るの?」ということも含めて、クリエイターの方が興味を持ってくれるんです。上田さんも半信半疑の部分はあったのかもしれませんが、「おもしろそうだからやりましょう」という感じでした。

 そういう意味ではこのゲームは運がいいと思います。ソニー・コンピュータエンタテインメントに企画を持ち込んだときにも、わたしに会ってくれたプロデューサーにとって、夏休みをモチーフとした企画の持ち込みは3本目だったそうです。それで“3度目の正直”ということで採用したんだ、と後から教えてもらいました。

――オリジナル版を作るときには、ターゲット層などを考えて作られたのですか?

画像

綾部 オリジナル版については、プレイする年齢の対象などは特に考えてはいませんでした。ただ、プレイするのはきっと、いま田舎に住んでいる人ではないだろう。都市型のユーザーというか、都会に住んでいる人がプレイするのだろうなとは思っていました。プレイステーションのユーザーですし、新しいものが好きで、おしゃれなものが好きな人というか。ただ、企画した当時は30歳前後でしたが、自分が経験しているものが下敷きになっているゲームですし、結果的には同じような年齢の人には受けるのだろうと思っていました。実際発売されたあとの反響を見ると、小学生を含めて、かなり幅広い人に受け入れられたようです。

 オリジナル版が発売されてから、量販店である光景を目撃したんですが……。お母さんと子どもがゲームコーナーにいまして、お母さんがずーっとオリジナル版を見ているんですよ。子どもは別なゲームを買ってほしいので「あっちに行こうよ」と言っているんですが、お母さんは動かない。最後には子どもに「これは買わないからもうあきらめなさい」と言われていました(笑)。立場が逆ですよね。なんてこと言うんだと思いましたが(笑)。

画像

 それに、わたしもそうかもしれませんが、年を取ってしまうと「ゲームをプレイしている」なんて言えないじゃないですか。でも「あれは意外におもしろいんだよ」と、てらいなく言えるのが、ぼくなつなのかもしれませんね。いま使っている事務所を借りるときにお願いした不動産屋さんのおじいさんもオリジナル版を知っていて、「ぼくのなつやすみを作った人なんですよ」と大家さんに紹介されまして。さすがに大家さんは知らなかったんですが、こんなにお年を召した人も知っているのかと驚きました。

――ぼくなつポータブルですが、どのような方にプレイしてもらいたいですか?

綾部 これまでプレイしていなかった人には是非プレイしてもらいたいですね。オリジナル版を経験している人は、買うか買わないか迷うと思うんです。ぼくなつポータブルは、意外に変わっているんだけど、ぼくなつのニオイは失われていないという、異色の移植ができたと思っているので、機会があれば是非プレイしてもらいたいですね。暇つぶしでもいいですし、何かに疲れた人がこのゲームをプレイして元気になったりとか、そういうようなことが起きるとうれしいですね。

 この前子どもと池袋のプラネタリウムに行ったときに気づいたのですが、田舎と都会ではプログラムが違うんですね。田舎の場合は「こうしたら星を見つけられる」という解説があるんですが、東京だと中継地点となる星が見えない(笑)。星座の話は語られるけれども、星を見つけようという内容じゃないんですね。ぼくなつは都会に住んでいる人がプレイする場合が多いと思います。“実物が見えないからこそ星を見せてあげよう”というゲームなのかもしれません。

画像

ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!

画像

ジャンル:なつやすみアドベンチャー

発売日:2006年6月29日予定

価格:4800円

メディア:UMDディスク

メモリースティック使用量:352KB以上

企画 : ミレニアムキッチン

監督・脚本・ゲームデザイン:綾部和

キャラクターデザイン:上田三根子

発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン


(C)Sony Computer Entertainment Inc.


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/24/news088.jpg ヤフオクで出品されていた「20万円の引退品」→開封すると…… “まさかの中身”に賛否 「ゾッとしたわ…」「しゃーない」
  2. /nl/articles/2412/25/news115.jpg 辻希美&杉浦太陽、家族6人でクリスマスに豪華料理 長女・希空が作った“プロ級のケーキ”も…… 「凄くいい時間だった」
  3. /nl/articles/2412/24/news092.jpg 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  4. /nl/articles/2412/24/news037.jpg 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  5. /nl/articles/2412/25/news152.jpg 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  6. /nl/articles/2412/23/news078.jpg そば屋の看板のはずが…… 雪で“別の店”みたいになってしまった光景が北海道の豪雪のすさまじさを物語る
  7. /nl/articles/2412/25/news009.jpg 若かりしころの父と母→36年後…… 苦楽をともにしてきた“現在の姿”に「泣いた」「本当に素敵」と1700万再生突破【海外】
  8. /nl/articles/2412/23/news025.jpg 幼少期から“ディズニー”大好きな2人→25年後…… まさかまさかの“現在”が話題 「映画のワンシーンのよう」
  9. /nl/articles/2412/25/news021.jpg 大型ワンコが猫に育てられた結果…… 驚きの行動連発に「自分を猫だと思っていないっw?」「かわいすぎる!」
  10. /nl/articles/2412/24/news156.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」される夫婦の苦悩……“年の差33歳差”カップルに反響【個性的なカップル特集2024】
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」