「ドロロンえん魔くん」が本格ホラーで復活!! OAV「鬼公子炎魔」(2/2 ページ)
「ドロロンえん魔くん」の放映からはすでに30年以上が経過しているが、当時の放映を見ていた方々の中には現在でも好きな作品のひとつに上げる人は少なくない。
たとえば、冒頭でも触れたとおり、長島さんの奥さんも前作のファンだったそうだ。「普段、奥さんは僕の仕事に興味を示さないほうなんです。でも、今回だけはものすごく興味を抱いていたようなので、なぜかと聞いてみたんです。そしたら、『小学生のころ、えん魔くんと結婚しようと思っていた』と言うんですよ(笑)。もうビックリです」。
カパエル役の佐藤さんも思い入れが強いらしい。「僕が見たのは再放送だったのですが、当時の雪ちゃんのポロリシーンにはかなりグッときましたね。今回の役を演じるにあたって、大人になった今はさすがにないかとも思いましたが、雪鬼姫にやはりドキドキしてしまいました」。本作でも雪鬼姫のセクシーシーンは必見ということか。
また、監督をつとめる神戸守氏もそんなファンのひとり。「実は『ドロロンえん魔くん』は子供のころに見ていて、好きなアニメだったんです。だから、まさか自分が監督をするなんてことは考えてもいませんでした」。そして、好きな作品だからこそ「最初にお話をいただいたときには、正直、受けようかどうしようかかなり迷いました」と言う。
神戸氏と言えば、萌えとグロテスクの融合作とも言われるアニメ「エルフェンリート」の監督としても知られる。そのグロテスクな表現と不気味な演出で自らの才能を世に知らしめたわけだが、そんな持ち味と「ドロロンえん魔くん」のコミカルな描写のイメージが合わなかったというのもあったのかも知れない。ところが、本作はコミカルではなくリアルホラーで描かれることとなった。それはもちろん、監督の得意とするところ。神戸氏は本作の監督をつとめることとなり、その特異な表現方法で本作を描いていく。「前作との大きな違いは、やはり雰囲気にあると思います。コミカルな描写がなくなり、かなりリアルに描かれていますね。そのあたりはやはり、自分の持ち味なのかなとは思いますが……、ちょっと地味になってます」。
また、ここで神戸監督は興味深い話もしてくれた。それは、今回の取材で一番印象的だったコメントでもある。作品を手がける前段階で、神戸監督は永井氏に「(アニメとして表現する際に)やってはいけないことはありますか?」と聞いたそうだ。すると永井氏は「自分の作品で、やってはいけないことなんて何もない」と答えてくれたらしい。これにより、神戸監督は「自由にやろう」と決心することができたと言う。
この言葉は、監督の良さを引き出す力を持っていることは言うまでもないが、永井氏の作品に対するこだわりも感じられるような気がしてならない。作家や作風さえ変わりながらさまざまな媒体でリバイバルされている永井豪作品には、「作り手の発想が反映された自由で面白いもの」というこだわりが見えるような気がする。
さて、多くの人が「ドロロンえん魔くん」を今でも好んでいるという話をしたばかりだが、とはいえ、知らないという人たちもいる。炎魔を演じる徳本さんや雪鬼姫役の千葉さんなどは、自分たちが生まれるより以前の作品だったということもあって、出演が決まってえん魔くんを初めて知ったらしい。そして、ふたりとも本作を演じるにあたって、勉強のためにと原作を見たそうだ。その感想を聞いてみると、ふたりは口をそろえて「今作との雰囲気が大きく違う」と話していた。
そのあまりの違いに、徳本さんは前作のアニメを見ながら、自分がもらった台本を見比べてしまったそうだ。「本作への出演が決まって、僕はさっそく前作のレンタルビデオを借りてきたのですが、あまりの違いにビックリしてしまいました。本作の台本と見比べちゃったりしましたね」と明かす。ただ、その違いは、演技の方向性も示してくれたようだ。「見た目も雰囲気もまったく違う作品になっていたことで、“自分なりの炎魔”を演じればいいんだなと感じることができました。もちろん緊張はしましたけど、自分なりに頑張った炎魔を演じてみました」。
逆に千葉さんは、知人の情報から入ったそうだ。「前作を観ていたという知り合いに『ドロロンえん魔くん』について聞いてみると、みなさん『雪ちゃんのちょっとエッチな描写が忘れられない』と言うんです。それはとても印象的でしたね。ただ、実際に本作を演じてみると、雪鬼姫のシーンはエッチというよりは妖艶な雰囲気になっていました。前作とはまた違った魅力があると思いますので、ぜひ見ていただきたいですね」。
そんな本作「鬼公子炎魔」のDVD第1巻の発売は、8月25日とまだ先だが、作業は順調に進行中。ホラー作品を扱うということで、4月には入谷鬼子母神にて出演者・スタッフそろっての「ご祈祷」も受けたそうだ。永井先生にその感想をうかがった。「入谷鬼子母神には昔からお世話になっていて、危ない(?)作品をやる前にはお祓い(厄よけのご祈祷)をしていただいているんです。スッキリとして悪いものが落ちたような感じがしますね。これで『鬼公子炎魔』もスッキリして、ヒット間違いなしだといいですね」。
人気アニメのリバイバル作品ということで、純粋に作品を楽しんで見るも良し、あのキャラクターたちがどのように成長しているのかを見るもよし、さまざまな楽しみ方があるだろう。今年の夏も暑くなるだろうが、8月発売の本作を見て、涼しさを味わってみてはいかがだろうか。
キャスト:炎魔/徳本恭敏 雪鬼姫/千葉紗子 カパエル/佐藤せつじ シャポ爺/長島雄一
(第2巻/10月27日予定、第3巻/12月22日予定、第4巻/2007年2月23日予定)
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